1.SAVOR JAPAN創設の経緯
「和食」のユネスコ無形文化遺産登録(2013年)やミラノ国際博覧会(2015年)等をきっかけに、海外における日本の食・食文化に対する関心が近年大きく高まっています。また、訪日外国人旅行者(インバウンド)の数も急増しており、2017年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の2,869万人(2013年1,036万人の約2.7倍)を記録しました。2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えており、訪日外国人旅行者数は引き続き増加していくことが期待されています。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、外国人旅行者が訪日の際に最も楽しみにしていることは「日本食を食べること」となっており、外国人の、日本を訪れて「本場の日本食」を愉しむことへの期待度の高さがうかがえます。
農林水産省では、急増する訪日外国人旅行客を、東京、京都、大阪といった人気観光地、いわゆる「ゴールデンルート」以外の地方部にも取り込み、農山漁村の活性化につなげていくことが重要な課題と位置付け、2015年に検討会を設置し、検討を進めました。
その結果を踏まえ、各地域が持つ伝統食などの多様な「食」とそれを生み出す「農林水産業」、魅力ある景観等の「地域資源」等を活用してインバウンドの誘致を図る優れた取組を「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」として農林水産大臣が認定する制度を2016年度に創設しました※。
「SAVOR JAPAN」認定地域では、美味しい日本食が味わえるだけでなく、地域独特の食文化や、それを支える地域の伝統や文化等に触れられる場所であることが、インバウンドへのアピールポイントとなっています。また、「SAVOR JAPAN」認定地域では、滞在を伴うインバウンド需要を農林漁村に呼び込むための「農泊」を強力に後押ししています。インバウンドを中心に、農山漁村での人的交流及び様々な食文化体験を通じて、地域の農林水産物の消費拡大や輸出促進、我が国農林水産業の活性化・成長産業化を図り、地方創生を実現することを目指しています。
SAVOR JAPANのロゴマークには、日本の農山漁村の豊かな自然をテーマに、それぞれの土地に生まれた食文化や、美しい日本の神髄を体感していただきたいという願いがこめられています。モチーフは「山」「海」「田」「畑」「川」、そして「箸」。このロゴマークを共通シンボルとして、農林水産省及び関係府省庁が、「SAVOR JAPAN」認定地域の魅力を世界に向けて発信しています。
※制度創設当時(2016年度)の名称は「食と農の景勝地(SAVOR JAPAN」。2017年度より名称変更。
SAVOR JAPAN認定ロゴマーク
2.SAVOR JAPAN認定地域のご紹介
2016年の本制度創設後、2016年度に5地域、2017年度に10地域が認定され、現在全部で15地域となっており、今年度(2018年度)も新たな地域が認定される予定です。SAVOR JAPANへの関心や認知度が高まり、ポテンシャルの高い地域に積極的に応募していただくことで、今後さらに認定地域が増えていくことが期待されます。
これまでに認定されている15地域と、各地域のキャッチフレーズをご紹介します。
【2016年度認定地域】
- 十勝地域(北海道):農のフロンティア十勝にて食・景観を満喫!
- 一関市・平泉町(岩手県):日本のもち食文化と黄金の國の原風景
- 鶴岡市(山形県):ユネスコ食文化創造都市で体感する食と風土
- 下呂市馬瀬地域(岐阜県):日本一美味しい村・美しい村づくり
- にし阿波地域(徳島県):「にし阿波・桃源郷」〜千年のかくれんぼ〜分け入るごとに時は遡り
【2017年度認定地域】
- 大館地域(秋田県):秋田の伝統料理「きりたんぽ」の誕生ストーリーと農家のお母さんのおもてなしに触れる!
- 会津若松市(福島県):サムライシティで味わう伝統ごっつぉ(ごっつぉ:会津地方の方言で、大事なお客様への料理(ごちそう)を指す)
- 浜松・浜名湖地域(静岡県):四季彩菜 食×農で楽しむ浜松・浜名湖〜日本のトウマン中で味わう・浜名湖体感メニュー〜
- 十日町市(新潟県):豪雪が織りなす食と美の極み-雪国とおかまち
- 小浜市(福井県):御食国(みつけくに)若狭おばま〜京へと続く食の道「鯖街道」はここから〜
- 小松市(石川県):「百姓の持ちたる国」での饗宴御膳と風土の体感
- 京都府北部地域(京都府):「海の京都・食の源流」〜海・里・山に育まれた食の王国〜
- 紀の川市(和歌山県):農泊型365日フルーツを楽しめるまち
- さぬき地域(香川県):お接待の心でもてなす「さぬきの路」〜今だけ、ここだけ、あなただけのおもてなし〜
- 高千穂郷・椎葉山地域(宮崎県):「世界農業遺産 高千穂郷・椎葉山」山里の持続可能な暮らしの知恵を世界に共有
SAVOR JAPAN認定地域
3.SAVOR JAPAN推進協議会が目指すもの
インバウンドは、初めて日本を訪れる人ばかりでなくリピーターの数も増加しており、「ゴールデンルート」を一通り経験した後、日本文化へのより深い触れ合いを求める外国人旅行者が増えているといわれています。「SAVOR JAPAN」認定地域は、そうしたインバウンドの観光需要に応えられる要素を兼ね備えた地域であるといえます。
SAVOR JAPAN推進協議会では、前述のように、「SAVOR JAPAN」への認定及びインバウンドの増加を契機に持続可能な地域づくりが進み、地域が自立して発展・成長していくことを目指しています。そのサイクルとして、「インバウンド来客数の増加→一次産業の成長・輸出拡大→地域産業全体の活性化(効果の波及)→地域のブランド力の向上」といったような「好循環」が機能していくことが重要であるととらえており、そのような「成功モデル」の創出を目指しています。同時に、この「好循環」の促進剤として「SAVOR JAPAN」ブランドが貢献できるように取り組んでいます。
また、「SAVOR JAPAN」は、従来はあまり密な関係とは言い難かった「農林水産業振興」と「観光振興」を橋渡しする重要かつ先進的な事業であるといえます。「SAVOR JAPAN」認定を境に、行政の中で農林水産部門と観光部門との対話・交流がかなり進んだという話もお聞きします。こうした、部門・業界を越えた協力・連携関係の構築促進も、「SAVOR JAPAN」認定の重要な意義・役割と認識しています。
SAVOR JAPAN推進協議会事務局では、現在、次の2つを事業の柱としています。1つ目は「商品造成に向けた地域の効果的・効率的な磨き上げに関する支援」で、地域づくりに資する知見・情報や研修機会の提供、並びに有識者の派遣等があります。2つ目は、「SAVOR JAPANブランド及び認定地域の認知度向上に関する支援」で、海外への情報発信や広告の実施等があります。具体的な内容等については、以降でご説明します。
4.SAVOR JAPAN認定地域の効果的・効率的な磨き上げに関する支援
日本の多様な食・食文化を海外に訴求するにあたっては、的確なマーケティング戦略に基づく誘客ターゲットの見極めとニーズへの対応が肝要です。例えば、これまでボリュームゾーンであったアジア諸国からの旅行者に、団体旅行から個人旅行へのシフト、リピーター層の増加などの変化が見られます。また、欧米豪等の市場開拓による需要拡大も期待されています。
そうした全体の動向、さらには各認定地域のターゲットやニーズに沿った動向を把握・分析するために、既存の各種統計データを活用するとともに、外国人旅行者の意識等を探るために海外ウェブアンケート調査等を実施し、地域のマーケティング、ブランディングに資する支援に努めています。今後は、各認定地域でのインバウンド消費動向調査など地域に根差したデータの収集・分析を進め、より精度の高いマーケティングの実施につながる仕組み作りを予定しています。
さらに、各認定地域における実行組織のスキルアップにつながる支援として、有識者の派遣、商談会への参加支援等を行ってきました。研鑽の機会が単発に終わることのないよう、今後も地域に併走したフォローアップを行っていくとともに、様々な企業・団体等と連携し、認定地域の魅力向上に資する磨き上げの支援を行っていきます。
5.SAVOR JAPANの広報普及の推進
「SAVOR JAPANブランド」を創出・確立を目指し、継続して海外発信を行うことが不可欠と考えており、以下の事業に取り組んでいます。
これまでに、農林水産省との協力のもと、インフルエンサー等招聘によるファムトリップの実施、海外向け記事の掲載、PR資料の作成、イメージ映像の製作、イベントへの参加、各認定地域間のネットワーク強化のための全国大会の実施等、様々な事業を展開してきました。
今後は、引き続きこうした事業の実施も検討するとともに、SAVOR JAPANウェブサイト「日本の食と農をめぐる旅Magazine」(https://savorjp.com/)を広報普及の要として位置づけ、積極的な情報発信・情報共有を進めていく計画です。多言語(日・英・仏・繁体字)で発信している本ウェブサイトには、15認定地域の映像、写真のほか、現地の体験談等、地域の詳細情報が掲載されています。今後も、地域の情報を発信し続けることにより、認定地域の認知度を高めていくとともに、情報発信プロセスを通じて、新たな地域資源の掘り起こしや、地域の再発見につなげていく予定です。
これらの広報普及への取組が、「SAVOR JAPAN」の認知度向上につながり、ひいては国産の農林水産物の需要拡大や農山漁村振興につながるよう、認定地域と密接に協力・連携した事業を展開していきたいと考えております。
SAVOR JAPAN推進協議会ウェブサイト
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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