農地等に係る贈与税納税猶予制度の見直し
平成28年度税制改正により、贈与税納税猶予を受けた農地について、平成28年4月以後、納税猶予の適用期間にかかわらず農地中間管理機構に貸し付ける場合は納税猶予が打ち切られないことになりました。改正前は、最低でも10年、貸付時に65歳未満なら20年を経過しないうちに貸し付けると納税猶予が打切りになるため、農業経営を法人化しても贈与税納税猶予適用農地を農業法人に貸し付けることが事実上できませんでした。今回の税制改正によって、農地中間管理機構を通せば、贈与税納税猶予適用農地を農地所有者が自ら設立した農業法人に貸し付けることもできるようになります。さらには、農地中間管理機構による農地の再配分によって担い手ごとに面的集積しやすくなると期待されます。
マイナンバー制度の導入と農業法人への影響
一方、平成28年からマイナンバー制度が導入されました。農業法人では、従業員だけでなく農地の貸し手からもマイナンバーを提示してもらうことが必要となる場合があります。農地賃借料など不動産の使用料等について同一の個人への年支払合計が15万円を超える場合、税務署に農地の貸し手の支払調書を提出する義務がありますが、マイナンバー制度の導入で平成28年分から税務署提出分の支払調書には農地所有者のマイナンバーの提供を受けて記載しなければならなくなったからです。ところが、マイナンバー制度では、マイナンバーを取り扱っている人がマイナンバーを他人に不当に提供したりすると処罰の対象になりますので、提示されたマイナンバーの管理には細心の注意を払う必要があります。そこで、マイナンバー制度対策として農地中間管理機構を活用することをお勧めします。農地中間管理機構を通して借りた農地は、賃借料の支払先が農地中間管理機構なので農業法人などの借り手は農地所有者からマイナンバー(個人番号)の提供を受ける必要がありません。また、農地中間管理機構は法人なので農地中間管理機構から借りた農地の賃借料について農地中間管理機構のマイナンバー(法人番号)の提供を受ける必要もありません。
農地保有に係る課税の軽減措置
平成28年度税制改正では、2年間に限り、農地中間管理機構に貸し付けた農地の保有に係る課税の軽減措置が講じられました。農地所有者が、10a未満の自作地を除いた所有農地を農地中間管理機構に10年以上の期間で新たに貸し付けた場合、その農地に係る固定資産税及び都市計画税について、最初の3年間の課税が2分の1に軽減されます。なお、賃借権等の設定期間が15年以上の場合には、軽減期間が5年間になります。この制度を利用して、農業法人が直接借入れている農地を農地中間管理機構経由で農業法人が借入れるように変更すれば、農地所有者が固定資産税等を軽減されるメリットを受けられるだけでなく、農業法人もマイナンバー制度対応や農地賃借料の支払いなどの事務負担を減らすことができます。
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