コラム・事例集

公開日時
2016/04/26 00:00:00

【 六次産業化 】期待が高まる6次産業化への取り組み

この記事の執筆者
野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社 コンサルティング部長 佐藤正之

 

2011年3月に「六次産業化・地産地消法」が施行されてから約5年が経ち、6次産業化への取り組み事例もかなりの数になってきている。例えば、「六次産業化・地産地消法」に基づく総合化事業計画の認定数は、2016年1月14日時点で2,130件にまで積み上がってきている。しかし、6次産業化に取り組めば、必ず業績が上がり、所得が向上するわけではない。農林水産省が2015年7月に発表した認定事業者に対するフォローアップ調査によると、調査した認定事業者(1,170件)のうち約半数の50.3%(588件)が認定申請時と比較した際の売上高経常利益率が低下したと回答している。6次産業化に取り組み、成功している事業者と、経営が安定しない事業者では何が違うのだろうか。

様々な6次産業化の形態

6次産業化とは、農林漁業者が自ら生産した農産物(1次)を、自ら加工(2次)し、自ら販売(3次)することによって、加工や販売における付加価値も農林漁業者の所得につなげるということである。一方、例えば、道の駅等で農産物を青果のまま最終消費者に販売するといった1次(生産)×3次(販売)の形態も6次産業化と捉えることができる。また、農産物をペースト状に加工して、その加工品を原料として食品加工メーカーに販売するといった1次(生産)×2次(加工)の形態も6次産業化と捉えられる。このように、6次産業化を「農林漁業者の所得向上を図る方法」として考えてみると、1次×2次×3次だけでなく、1次×2次や1次×3次といった形態まで、幅広く捉えて考えることができる。言い換えると、6次産業化とは、生産者が食のサプライチェーン(供給網)に直接・間接的に関与し、同チェーン内の付加価値を享受することで生産者の所得向上を達成できる「生産者発のバリューチェーン(価値連鎖)モデル」と定義できる。

6次産業化を成功に導く3要件

前述のように、6次産業化には多様な形態があるが、全ての形態に共通する6次産業化を成功に導く要件として、「構想力」、「マーケット・イン」、「身の丈経営」の3点が挙げられる。
まず「構想力」であるが、6次産業化を行う上では、企業・組織として「どうなりたいか」を明確にする、具体的には、自社の事業ビジョン(事業の目標)を定量面・定性面の両面ともに設定することが必要ということである。また、自社の事業ビジョンを設定した上で、社内外・地域に対して、自社のブランド価値、6 次産業化の展開の方向性を明確に伝え、社内においては共通の目標を目指して一丸となれるように、社外・地域に対しては自社の活動への理解・協力を得られるようにする必要がある。
次に「マーケット・イン」であるが、6次産業化に当たっては「だれに売るのか」という出口を出発点として考えるべきということである。具体的には、自社が提供する価値を最も評価してくれる「ターゲットとなる顧客」を具体的に設定したうえで、そのターゲットとなる顧客のニーズをつかみ、かつ、そのニーズに単純に「対応する」だけでなく、「その先のニーズを満たす」商品を提案していく必要がある。但し、マーケット・インによって顧客ニーズを把握しても、必ずしも顧客ニーズに合ったものが生産できるとは限らない。実際には、農林漁業者自身の良さを活かしたプロダクト・アウトとマーケット・インをすり合わせて商品開発を行うことが必要である。
最後に「身の丈経営」であるが、6次産業化といっても、必ずしも加工(2次産業)や販売(3次産業)まで全て自社で完結する必要はないということである。むしろ、冷静に自社の内部分析を行い、「やれること」と「やれないこと」を明確にし、やれることに経営資源を集中すべきである。また、6次産業化とは事業領域を広げることなので、持続できる規模や範囲を見極めるとともに、リスクを許容するための収益源を持っておく必要がある。

次回よりビジネスモデルごとの「成功ポイント」を紹介

6次産業化に取り組む際には、「良いものを作れば売れるはず」といった生産者の視点で考えるのではなく、「誰に」対して「何を」提供するのかといった事業コンセプトを考え、その上で、「どのように」生産し、「どのように」加工し、「どのように」販売するのかといったビジネスモデルを構築する必要がある。
そこで、次回より、6次産業化の主なビジネスモデルの中から、①農産物加工、②企業との直接取引、③店舗販売、④農家レストラン、⑤通信販売を取り上げ、ビジネスモデルごとの「成功ポイント」について、具体的な事例を交えて紹介していく。

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