コラム・事例集

公開日時
2018/05/18 00:00:00

【水田】土づくりと土壌診断①  水田の土づくりーその1ー

この記事の執筆者
全農 営農・技術センター 肥料研究室

1.水田の土づくりのポイント

土づくりの効果は土が本来もつ養分供給力を高めるだけでなく、水稲の根の活力を高めて養分の吸収力を向上させたり、また、急激な環境変化に対する抵抗力を持たせることです。
高品質・良食味米の安定生産のためには、冷害や夏期の異常高温など最近急増する変動気象に対抗する強いイネをつくることが重要で、適量施肥により環境に配慮したイネづくりをするためにも土づくりは有効です。
土づくりは、1回程度怠っても水稲の生育や収量、コメの品質にすぐには影響が表れない反面、何年か経ったあとに影響が出るため、水田を元の良い状態に戻すのに時間がかかるといわれており、継続してケアすることが重要です。また、水田の状態に合った有機物や土づくり肥料を施用するだけでなくしっかり耕耘(こううん)することも必要です。


2.土づくりのための資材

有機物の施用は土づくりの基本です。もっとも手近にある有機物として堆肥がよく施用されます。土壌の3つ性質といわれる化学性(肥料養分やpHなど)、物理性(硬さや水はけ程度など)、生物性(微生物の量など)のいずれにおいても改善させるはたらきがあります。
施用する量は、たとえば、植物残渣からつくられる稲わら堆肥(完熟品)であれば、毎年1トン/10aほどが適量ですが、牛ふんや豚ふんなど家畜糞尿が含まれている厩肥(きゅうひ)の場合は、窒素、リン酸、加里などの肥料成分が含まれているため、その分だけ施肥量を少なくするなど、考慮して施用する必要があります。また、コンバインで収穫する際に発生する稲わらをすき込んだり、緑肥植物を植えてすき込むなど水稲作付け後に実施して水田を改善することもあります。
水稲では、リン酸資材、ケイ酸資材、塩基(石灰・苦土・加里)資材などが重要な土づくり資材とされています。
リン酸資材は「ようりん」や「重焼りん」、「過石」などで、欠乏しやすいリン酸成分の補給のために施用します。収穫後や春の耕起前に全面に散布しますが、特に黒ボク土やそれ近い土壌は多めに施用する必要があります。
ケイ酸資材はケイカルなどケイ酸を含む資材を指し、作物の中でも水稲では特に吸収量が多いため欠かせない資材です。水稲の茎の硬さを保ち、籾殻に多く含まれる成分で、収量増や倒伏軽減に非常に重要です。収穫後に土壌分析を行い、秋か春の粗起こし前に必要な量を施用します。
塩基資材は石灰分、苦土分、加里分を含む資材であり、炭カルなどの石灰資材、苦土入り肥料、加里入り肥料を指します。これらの3塩基のバランスが重要であり、一部の成分が過不足になると欠乏や過剰障害が出やすくなります。施用時期の限定はありませんが、毎年土壌分析を実施してチェックします。


3.水田土壌の改善

水稲への肥料成分の供給能力を高めるためには、土の機能アップが必要となります。そのためには、今の状態を詳細にチェックし改善目標値から外れる項目をひとつずつ改善させてバランスの良い水田に変えていきます(別表参照)。
まず作土は根が張りやすい15cm程度の厚さが必要です。同じトラクターを毎年使うことで刃が届くところまでは耕されますがその下に硬い層(耕盤)ができることがあり、根の伸張や水の抜けを悪くします。時には深く耕してこれを壊し15cmを維持します。
またすき床層や根が発達する範囲では一定以上のち密度(硬さ)では生育不良につながるため、硬い場合は有機物を入れるなど対策が必要です。また湛水時の透水性は良すぎると肥料の抜けを助長し、悪いと土壌の酸素不足などによる悪化につながるため、1日に2~3cm水面が下がる程度が最適です。
pH、陽イオン交換容量(CEC)、また塩基成分や他の成分については、土壌分析の結果と比較して不足する場合は調整するために適度に資材を補充します。
特に遊離酸化鉄含量が少ない土壌では、イネの根腐れが起こりやすくなり、秋落ち水田と呼ばれるような収穫近くに急に生育の衰える現象が起こることがあり、鉄を含む資材の施用が必要となります。



4.稲わらの腐熟促進対策

水田に入れる有機物として、収穫後の稲わらを入れることがよくありますが、稲わらは土の中で分解しにくいため、腐熟が不十分だと稲の生育に悪影響を及ぼすことがあります。稲わら施用のポイントを理解して水田に活かすことが重要です。
稲わらは堆肥化して施用するのが望ましいですが、コンバインで収穫と同時に裁断され水田に残される場合が多く回収が難しいことがあります。土づくりの有機物として利用するためには、腐熟促進材(石灰窒素など)を使い腐熟を進める必要があります。加えて、すき込みは収穫後の秋に、気温が高めの時期に実施するのが効果的です。
腐熟が不十分だと、施用後に分解する微生物がより活発に働き窒素成分を吸収利用することで水稲に必要な窒素成分が不足することになり、生育阻害の原因になりかねません。また同様に微生物の増殖が激しくなると土中の酸素不足が発生し還元状態になる恐れがあります。還元状態が進むとガス(ワキ)の発生やそれによる根の損傷が発生し、根腐れ症状が出たり、薬害が発生しやすくなります。土壌が酸化的な状態で根の活性が高い圃場では乳白米の発生率が低下することが報告されています。
また稲わらがそのままの形で土中に残っていると、耕耘や田植機に絡まるため作業能率や精度が落ちることがあり無駄な労力が必要になります。
稲わらの腐熟促進材として石灰窒素が一般的に使用されますが、微生物の養分となる窒素成分の供給、土壌のpH調整機能、微生物に必要なリン酸分の供給などにより腐熟が促進されます。最近は腐熟促進資材が多く開発されており、分解微生物を混入させたり、分解酵素を含むものなどあるため、水田の状況に応じて使い分けることが重要です。


全農 営農・技術センター 肥料研究室
(URL:https://www.zennoh.or.jp/eigi/hiryo.html)
農業技術センターの設立と同時に肥料研究部が発足し、肥料研究室と名称が
変わって現在に至っています。その間一貫して、全農が取り扱う肥料や土壌改
良資材、育苗培土などを有効に活用する新しい施肥技術の試験研究やそれらの
品質を適宜チェックすることで、確かな品質のものを安心して使っていただき、
農業生産のお役に立つことを目指してきました。さらに土壌分析器をはじめと
する各種ツールを活用して、土壌診断にもとづく土づくりの普及や適正施肥の
実践を進めています。



当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。

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