コラム・事例集

公開日時
2018/05/30 00:00:00

【海外農業】農家の生産性を最大限にするには?オランダ農業の実際の現場から学ぶ①

この記事の執筆者
Gebr.Van Duijin研修生 松本 啓

          

はじめまして。現在、オランダの施設園芸で農業研修をしている松本と申します。
『高い生産性』として、日本でもよく話題に上がる『オランダ農業』。大規模なハウスに最新の技術が集約され、EU圏内という立地の良さも相乗して、世界2位の農作物輸出額を誇る農業大国です。
日本でもその成功のノウハウは注目されています。しかし、実際に取り入れるには、コスト面、技術面、環境面や制度的なものなど、いくつかの障壁があり、なかなか実現できないのも事実です。私は全ての記事を通して、「日本の農家は、オランダの農業をもとに、残すべき部分改善すべき部分など含めて、どうなっていけば、より強い農家になれるのか?」という問いに対してみなさんと一緒に考えていけたらと思っています。

研修に来て1ヶ月以上経ちますが、『高い生産性』は、よく話題に上がるオランダ式の大規模なグリーンハウスだけでなく、現場の様々な点で見受けられます。
私が研修しているGebr.Van Duijin を例に「実際のオランダの農業現場は日本の農業現場と何が違うのか?」という問いに基づき、進めていきたいと思います。


これまでの道のりと逆転の発想

Gebr.Van Duijin は、オランダの南に位置するSouth-West Netherlandsにあるナスを生産している会社です。3兄弟で経営していますが、もともと彼らの父親が農家でした。日本でもよくある事業承継です。しかし、Gebr.Van Duijin は日本の事業承継とは、少し傾向が異なります。大きな違いとしては、父親が経営していた場所から移転し、別の場所で違う栽培方法で、違う野菜の農業を始めている点です。「先祖代々から継承した土地を守って行く」という考え方とは、かなり異なっているように思います。この会社は、安さや利便性などを考慮した戦略のもと、エリアを選びました。また、グリーンハウスを建てた当初は、ナスがメインではなく、トマトとナスを半年ずつ栽培していました。ナスがオランダに入ってきて、まもなくのことです。その後、他と差別化を図るため、トマトの栽培を止め、ナス一本に絞るようにしました。オランダのナスの消費量は一人当たり一年間で約300g(5本)程度。つまり、オランダでは、ナスは、殆ど食べられていません。そこにチャンスを見出しました。まさに、『逆転の発想』。現在は、総面積25 ha以上を擁する巨大な会社に成長しています。
「グリーンハウスを建設する資金はどうやって調達したのか?」
多くの方が、気になる疑問ですが、殆どが『銀行』からの資金調達です。日本と同様、オランダも『銀行』の資金調達基準は非常に難しいです。しっかりとした事業計画をもとに幾つもの項目をクリアしないといけないのに加え、4ヶ月に1回経営がしっかりと計画通りに行っているか銀行からチェックを受ける必要があります。このように厳しい基準をクリアして、ようやく出資が受けられます。
余談ですが、上記理由から、オランダでは新規就農者は、ほとんど資金を調達できず、いきなり始めることが厳しい傾向にあります。
また、オランダでハウスを建てるには、1 ㎡当たりおよそ100ユーロ掛るそうです。25 ha =250,000 ㎡。相当な費用になることが想像できます。しかし、Gebr.Van Duijinは現在、負債のほとんどが返済でき、長い期間を見て、積極的に投資しながら経営しています。


3兄弟で3拠点

特徴的なのは、この3兄弟は、同じ場所にいるわけではなく、3人それぞれがOosterland、Westdorpe、Steenbergenという別の場所で経営していることです。
Oosterlandは2h、1.8h、2.8hの3つのハウスから成り、周辺企業と一緒に木材を燃焼することにより熱と二酸化炭素を供給し、栽培に利用するというという方法に取り組んでいます。

Westdorpeでは、10.2 hのハウスが一つあります。イギリスとの貿易のために必要なBRC(British Retail Consortium )の認証を取っており、厳しい管理の下で作業が行われています。また、ユニークな取り組みとして、地元の工場で排出された二酸化炭素と熱を再利用し、グリーンハウスに利用しています。周りには同じやり方で熱と二酸化炭素を利用するために多くの農場が並んでいます。

Steenbergenでは、4.0hと4.4hで総面積8.4 hのグリーンハウスがあります。この場所では、ガスを仕入れて、それを燃やして出た熱と二酸化炭素をハウスに利用し、電気を売るという方法をとっています。また、この場所には他の2箇所も兼任で担当している人事や経理なども働いています。

どの場所も生産方法などに際立った違いはありませんが、それぞれに特色があり、どの場所も「どう二酸化炭素と熱を供給するか」という課題に対して取り組んでいます。
燃料費に約3割かかると言われているので、ここは非常に重要な話題です。ちなみに、現在はガスから自分たちで熱や二酸化炭素を作っているSteenbergenでは、まだ先の話ですが、ガスを使用しないように地下から熱や二酸化炭素をもってくるように切り替えることを検討しています。政府からの規制もあり、オランダではガスを使用しない方向に進んで行くと思われます。ここは今後、大きな課題になるのではないでしょうか。


正確に労働の成果を把握

グリーンハウス経営で、他に大切なこととして「人」があります。これは、経営費の約3割が人件費にあたるためです。1つの場所で40名程度、忙しい時は70?80名が働いています。Steenbergenでは、オランダ人が15名程度で、それぞれ何かしらの役職をもち、オランダの給与の基準にしたがって、細かく給与管理されています。それ以外はポーランド人など外国人の労働者です。オランダの最低賃金は、日本円に換算すると時給千円以上します。これらの労働者はオランダのエージェント会社を通して雇い、人事が管理しています。仕事に関しては、全てデータで管理していて、1日に何キロ収穫したか、面積あたりどれくらい収穫できたか、全てコンピュータによる把握が可能です。研修中にこんなことがありました。1人のポーランド人の労働者が、自分がどれだけ成果をあげているかを逐一パソコンで確認していました。自分の作業結果がすぐ、コンピュータ上に表示されるため、労働者同時、どちらがいい成果をあげるか勝負している人たちもいました。



分業化の進んだ社内・社外

組織内をもう少し見ますと、グリーンハウスの担当、包装の担当、また会計や人事などそれぞれ自分の仕事が決まっていて、『分業化』が進んでいます。また、Gebr.Van Duijin は、生産までしかやっておらず、販売の部分は『Purple Pride』というGebr.Van Duijinの3箇所とオランダの2つのナスの生産業者からなるナスのブランドを形成し、販売しています。

また、社内だけでなく、肥料のコンサル、種苗会社、天敵害虫業者、運搬業者など実に30社以上のそれぞれ専門性を持った企業と関わっています。感覚的には、自分でなんでも頑張ってする、というより、自分が得意なことを他の人にシェアして、自分ができないところはやってもらう。という感じですね。農業界全体もうまく分業化しているように感じます。

それぞれが自分の役割をきちんと果たし、次につなげる。自分の明確な領域や責任が明確になっています。ここが大きな違いであり、一人一人が発揮できる能力を最大限にできる秘訣ではなかろうか?

次回以降、今回紹介した『Purple Pride』を含め、グリーンハウスでの栽培方法や環境制御、販売、流通経路など、さらに現場の情報を詳しく紹介していきます。


松本 啓(まつもと さとし)
JAECのプログラムにより、オランダのナスの施設栽培を行うGebrVan Duijnにて研修中。官民協同留学促進キャンペーンのトビタテ留学JAPAN!7期生。



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