コラム・事例集

公開日時
2018/07/13 00:00:00

【6次産業化】農業の選択肢はひとつじゃない

この記事の執筆者
FARM PARK PROJECT 総合プロデューサー 名越涼

「私、ときめく、農業男子」

こんにちは。『FARM PARK PROJECT』の総合プロデューサー名越涼です。
このコラムでは“FARM PARKPROJECTが考える、新しい農業のカタチ”について皆様のヒントとなるような、農家さんや農事業社さんの取り組みをお伝えしています。

今回から、これまでプロジェクト内のコンテンツ「私、ときめく、農業男子」の中で取材し、新しい取り組みにチャレンジしている方をご紹介してまいります。



「未来へ繋がる農業の在り方と六次化産業に求められることとは」

千葉県に住む實川勝之さんは前職がパティシエというユニークな経歴をお持ちの農家さんです。ゼロからモノを作り出す農業にやりがいを感じ、代々農業を営んでいた実家へ就農。しかし、そこで目の当たりにしたのは衝撃的な光景でした。
「大根を引っこ抜いては捨てるという事態。その年は出荷するほど赤字になってしまったんです。せっかく作ったのに廃棄しないといけない。こんな農業は本当に嫌だと思いました」
そこで考えたのが“直売”。消費者に直接届けるスタイルを確立すべく平成23年、株式会社アグリスリーを設立しました。

「農業の選択肢は生産だけじゃない」と話す實川さん。
アグリスリーでは観光と直売を兼ねた梨農園の運営やお米・野菜の生産にとどまらず、加工・営業・広報など幅広く“部門”を設けています。
「例えばものすごく営業が上手い農家がいてもいいし、機械に乗らせたらこの人には敵わない、という農家がいてもいいと思うんです。大切なのは、農業というものに幅を持たせることです」

―幅を持たせる、というのは。
「生産だけに特化していると土作りが嫌だ、日焼けしたくない、と言われたらおしまいじゃないですか。農家の減少と高齢化はこうした選択肢の狭さが関係していると思うんです。だからこそ、法人化し、農業ではなく、農事業を広く扱う会社という形態にする事で選択肢が広がると考えました」

“農業のカタチはひとつじゃなくていい”
農業の持つあらゆる可能性を発信する『FARM PARK PROJECT』も強く共感するところです。


實川さんの勢いはとどまることなく、去年には加工事業を含めた『コミュニティーCAFE&農家のキッチンLABO FARM TO... 』をオープンさせました。
カフェでは實川さんの畑で採れた野菜や果物を使ったメニューはもちろんのこと、地元の農家の方の作物や特産品なども味わうことが出来ます。

「ここでは地域のみんなとモノづくりしたいと思っています。自社だけ、という狭い範囲で考えるのではなく地域という視点で考えたほうが面白いものが生まれると思うんです。料理と一緒で材料は色々あった方が楽しいですしね」
加工事業を“LABO”と名付けたのにも、理由があります。


「“LABO”なので実験施設です。実は、千葉県って加工事業が遅れている県なんです。これまでは加工せずとも生鮮でいくらでも出荷できていました。ただ、今はどこでも数日でものが届く時代。それに加えて少子高齢化で食べる量も減ってきています。そうしたところを踏まえてここで実験しながら、今の生活者に刺さる新しいものを生み出してきたいんです」

そう話す實川さんから意外な言葉が飛び出しました。
「ただ僕としては安易な六次化は反対なんです」
―そう考えるのはなぜでしょうか。
「農家は一次産業のプロだけど二次・三次のプロではないし、上手に加工したり販売したりするのに慣れていないんです。所得向上に繋がるというのが国の言い分ですが、設備投資にも一億円弱はかかります。軽い気持ちでやれるものではないんです」

「そもそも」続けます。
「料理と加工品は違うんです。美味しい料理を作れる人が美味しい加工品を作れるわけではなくて。日持ちする糖度、菌が繁殖しない酸度を考え、最終的に細菌検査にかけて賞味期限を決めています。ひとつひとつの商品の美味しさと消費期限のバランスって経営者の判断なんです」

パティシエ、農家、経営者・・様々な顔を持つ實川さんだからこその実感のこもった厳しい言葉です。

「例えばいちご農家がジャムを作って販売するというのは六次化の基本的なモデルですが、それは“産業”になっているのかと。“産業”と呼ぶには規模が必要で地域に特産品が生まれる、雇用が生まれるなど地域に波及効果があることが大事だと思うんです」―だからこそ“地域と共に”というスタンスなのですね。
「そうなんです。地域の農家さんが気軽に六次化にチャレンジできる環境を作りたかったんです。元パティシエの経験を生かして加工が出来るし、設備もあります。地域の農家さんと一緒になって作り上げようと思っています」
―まず、目指すところは。
「東京との都市型連携です。千葉県という立地は東京という大都市に気軽に行けるという利便性の高いところです。その立地を生かしてレストランと連携して、ゆくゆくはセントラルキッチンを請け負えるくらいになりたいと考えています。トマトの皮をむいた状態で渡す、ピューレ状で渡すなども出来ますしドレッシングやソースも提案出来る。そんなビジネスを展開していきたいと考えています」



今後は障がい者雇用も積極的にしていき、地域に根付いた体制作りをしていきたいという實川さん。最終的に見据えているのはどんな未来なのでしょうか。
「人と地域に灯りをともすアグリパークです。パークはただそこにあるだけでは意味がなくて人が集まるからこそ意味を持つと思うんです。仕事には社会的意義が必要で、これからも地域に貢献しながら、みんなが集い応援したくなる、そんなアグリパークをつくります」

ひとりで完結させることなく周りと連携しながら新しい可能性を追求していく實川さん。
みんなの“得意”を掛け合わせたチームを作って勝負していく、實川さんのような“プロデューサー”こそ、今の農業に求められる人材なのかもしれません。



当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。



名越涼(なごし りょう)
フリーアナウンサー 
FARM PARK PROJECT 総合プロデューサー
現在、時事通信社のデジタル農業専門誌「AGRIO」でも取材記事掲載中。

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