コラム・事例集

公開日時
2018/08/10 00:00:00

土づくりと土壌診断④  畑の土づくりーその2ー

この記事の執筆者
全農 営農・技術センター 肥料研究室

1.野菜の畑土壌の圧密対策

大型機械による作業は、作業効率を高め生産性を上げますが、走行による踏圧のため圃場の下層土が硬くなって耕盤が形成され、根の発達阻害による生育不良につながる恐れがあります。とくにダイコンやニンジンなどの根菜類で圧密の影響は出やすく、根のくびれや分岐など収量や品質の低下をもたらします。
一般に、土壌硬度計(山中式硬度計)の測定値で20~22mmになると根の伸長が抑制され、25~27mmで伸びなくなるとされています。また耕盤ができると透水性、通気性が不良となり、湿害や干害が生じやすくなります。とくに野菜は湿害に弱いので注意が必要です。
圧密層ができたときの対策は、深耕などにより耕盤を破砕して下層土を膨軟にし、通気性や透水性を良くして根が伸長しやすいように土壌を改善することです。実際の作業は、サブソイラーやプラウによる深耕、心土耕などですが、深耕と同時に堆厩肥や土壌改良資材を投入してすき込むと改善効果が高くなるので、土壌条件に応じてこれら資材を同時に施用します。
下層土の耕盤形成を防ぐためには、大型機械での走行の回数とタイミングに注意することです。効率よく走ることで走行頻度を減らし、また水分を多く含んだ状態(降雨や灌漑のあと1~2日経って落ち着いた水分状態=力が加わると硬くなりやすい状態)での走行をなるべく回避し、土壌の物理性が悪化しないことが大切です。農作業の能率アップのためには大型トラクターなどの利用は避けられないので、土壌条件に応じて1~2年に1回程度の割合で、深耕や心土耕による下層土の改善対策を講じましょう。          

2.連作障害の発生と原因

連作障害の原因は病虫害に関するものが約80%といわれていますが、中でも土壌伝染性のものが多く、微量要素欠乏などの生理障害、塩類濃度障害、土壌物理性の悪化よる原因は少ないとされています。しかし、連作障害を抑制する善玉の微生物が正常に働くには、土壌養分の含量やバランスおよび物理的な条件などを良好にする必要があります。
例えば、無機窒素や加里(交換性)含量が過度に多いと作物は発病しやすくなることが知られており、また無機質肥料のみを連用した土壌では微生物的な緩衝力(例えば病原菌がいても拮抗する菌が繁殖を抑制するなど)が弱くなり発病しやすい環境になります。このように作物の発病と土壌の養分含量との間には密接な関係があるとされています。
土壌環境が一律で変化のない状態、また栄養過多の状態が継続されると微生物の種類が限定的になり、悪玉菌がはびこりやすくなります。堆肥などの有機物の投入などによるバランスの取れた環境は微生物の多様性を維持します。

3.転換畑の土づくりと施肥法

最近現場では、水田から畑への転換あるいは田畑輪換がより多く実施されるようになっています。水田作より高収入が得られる畑作に換える農家が増えているためです。そこで、ここではその注意点や効果について示します。
田畑輪換のメリットのひとつが野菜栽培の宿命ともいえる連作障害の回避です。作物が変わると、微生物だけでなく肥料成分などの土壌環境が大きく変化し単一化した土壌が活性化するためです。一方で、水田から畑に転換された場合、土壌の性状は通常の畑とは異なるため管理も別メニューが必要となります。具体的には、①有効土層の確保、②有機物の補給、③土壌改良材の施用、④施肥の適正化などです。とくに、野菜や豆、飼料作物などは、湛水して栽培する水稲とは違い土中の空気が多く必要なため排水対策が重要です。
水田土壌では代かきにより形成されたすき床層ができており、湛水した場合に水を下層に漏らさないようにするはたらきがありますが、畑では降雨後などに水が抜けず滞水の原因になります。水が抜けやすい土壌の種類であれば問題ありませんが、部分的にでも停滞水が発生すれば生育に大きなダメージを与えます。排水不良の恐れがある場合は耕うんによりすき床層を破砕することが必要です。
排水の不良な圃場の基準の事例をいくつかの診断項目別に表1に示しています。例えば、降雨後の停滞水が排水される時間が24時間以上なのか未満なのか、降雨後2~3日目の土壌水分値(pF値:水分含量を示す値)が1.0や1.5より高いか低いか、下層土の硬度(山中式硬度計)が19mmや25mmを超えているか否かによってレベル分けし判定するというものです。とくにひどい場合は暗渠を設置したり、さらには弾丸暗渠も併せて施工するよう対策を指示しています。
 

そのほかにも、適したpHや肥料成分濃度にも水田と畑の差があります。表2に転換直後の土壌と一般畑土壌の性質の主な違いをまとめています。土壌養分供給からみると、転換してすぐは水田の期間中に高まった地力窒素の発現量が多く、またリン酸やミネラル類も可給態の割合が高くなっています。土壌に保持されている水分も安定していることから、一般に転作後数年は生育が比較的良好となりますが、土壌によっては還元型のマンガンや鉄が多量に存在して過剰吸収となり障害を引き起こすこともあるため、あらかじめ土壌調査しておくことをおすすめします。

水田から畑への転換あるいは田畑輪換は、圃場の改善効果についてまとめました。
(1)土壌養分濃度の低下:畑作での過剰施肥や連作にともない集積した不要な養分を水田作にすることで除去できる
(2)病害虫の減少:水田作の湛水条件下による土壌の還元と酸化により、畑作で発生した土壌病害菌を含む土壌微生物環境の悪化を改善できる
(3)土壌肥沃度の向上:水田作の湛水期間中おける有機物の集積により地力の向上や養分の可溶化と補給ができる
(4)雑草抑制:畑作と水田作では雑草の生育環境が異なるので雑草の抑制ができる
以上のような効果を知ったうえで田畑輪換をうまく活用しましょう。

4.転換畑における土壌改善のポイント

転換畑における重要管理項目とそのポイントは以下のとおりです。
ポイント①:有効土壌の確保
過湿を防止し十分な根域を確保するためには、暗渠などの大工事だけでなく、粗大有機物の施用と深耕を心がけることで改善することができます。

ポイント②:有機物の補給
稲作では有機物残さが多く残りますが、畑作では有機物が蓄積せず消費されることから地力の維持のために堆肥などの施用が常に必要です。その場合、水田時の還元状態の土壌が残っている可能性があるので、必ず完熟堆肥を使うようにしましょう。

ポイント③:土壌改良資材の施用
転換後の時間の経過にともない、pHが低下し陽イオン類が減少していきます。土壌診断を実施し、不足成分を補ったり、pHを矯正するための土づくりをしましょう。転換後も例えば根菜などを栽培したり水稲に一度戻したりする(混作)ことで土づくりの効果を高め、土壌環境を安定化させましょう。

ポイント④:施肥の適正化
 湛水により塩類濃度はいったん低下しますが、畑作に変換したあと連作するとまた濃度障害や養分のアンバランス、さらに土壌微生物相の単純化や病原性微生物の増加を引き起こしてしまいます。転換後は問題ないからと安心せず、常に施肥量や施肥バランスに注意して肥培管理をしましょう。

全農 営農・技術センター 肥料研究室
農業技術センターの設立と同時に肥料研究部が発足し、肥料研究室と名称が
変わって現在に至っています。その間一貫して、全農が取り扱う肥料や土壌改
良資材、育苗培土などを有効に活用する新しい施肥技術の試験研究やそれらの
品質を適宜チェックすることで、確かな品質のものを安心して使っていただき、
農業生産のお役に立つことを目指してきました。さらに土壌分析器をはじめと
する各種ツールを活用して、土壌診断にもとづく土づくりの普及や適正施肥の
実践を進めています。



当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。

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