コラム・事例集

公開日時
2016/04/26 00:00:00

【 ブランド 】「農産物のブランド化」とは何か?①

この記事の執筆者
船井総合研究所 楠元 武久

 

少しでも付加価値をつける事で農産物を高く売りたい,そんな要望から「農産物のブランド化」に取り組みたい、というご相談を受ける事が多くあります。そこで今回から「ブランドとは何か?」について2回に分けてお話をしたいと思います。
もともとブランドという言葉は「焼印をつけること」を意味する「brander」 というノルウェーの古い言葉から派生したものであるといわれています。つまり他者の家畜と区別するために行われた焼印が「ブランド」だったのです。しかし現代では「ブランド」という響きは「エルメス」や「ヴィトン」などの高級ファッションを連想させます。同じ洋服でもブランドマークが入る事で、その価格が数倍に跳ね上げる。従い「ブランド化」する事は、他よりも高く売れる、そして儲かるというイメージを感じさせるのです。
しかしながら、厳密に言えばファッションの世界では、ブランドマークとは“品質保証”の意味を持ちます。つまりブランドマークが付いている事が凄いのではなく、一定の基準を満たした品だからこそブランドマークを付ける事が許された、という考え方が正しいのです。例えばヴィトンの商品で言えばパリの本店で買っても、大阪のなんばの店で買っても同じヴィトンのマークが付いた品である限りは同一の品質である事を、企業が約束している事になります。だからブランドマークを見て消費者は安心して買う事ができる。つまり、ブランド化を実現するには、その前提として一定の条件を満たす品を安定して大量に生産できる体制がある事が求められるのです。
それでは、農産物はどうでしょう?天候などの条件に影響されるため残念ながら工業製品と違い農産物は全く同じ規格の品を安定して生産する事が難しく、年によって生産量も品質も異なるのが現状です。つまりはファッションブランドのような厳密な品質の約束を商品でする事が難しいのです。
これはブランド化に必要な条件を満たしていないとも考えられます。では、農産物にとってのブランド化とはどう考えれば良いのか、言い換えれば消費者にとって“何を約束する”事がブランド化に繋がるのでしょうか?
これについてはいろいろな考えがあるかもしれませんが、私が行き着いた答えは極めて単純でした。商品の品質をブランドの根拠にするのではなく“それを作る農家や地域の想いを核としてブランド化を行う”というものです。

ちょっとわかり難いかもしれませんので、具体的な例を挙げて説明しましょう。
数年前の話ですが、農産物のブランド化について研究していた、私の元にひとつの仕事の依頼がありました。依頼先は和歌山県のJA紀の里という法人です。果樹農協として知られる彼らの要望は、管内で作られる「黒豆をブランド化したい」というものです。これまでは業者に買い上げられ、他産地に運ばれて出荷されてきた品を「なんとか地元の名前で世に送りたい」というのです。
依頼をしたのは、JA紀の里の中にある「ともぶち地区」という支所です、組合員の高齢化が急速に進む同地域においては、労働負荷の少ない作物が必要という事で、このJAでは以前より黒豆の生産を推奨してきました。幸いこの“ともぶち地区”は、標高120mの山地にあり、寒暖の差のある、恵まれた環境のおかげで、品質的には高いレベルを実現していました。しかしながらそうなると黒豆のブローカーが直接買い付けに来るようになり、なかなかJAに品が集まらないという状況が始まりました。困った事に業者は組合員と個別に交渉を行うので、JAとしては実態が把握できないのです。しかも業者を通じて市場に流れる黒豆は、丹波品の増量材として、丹波篠山の黒豆に混ぜ合わせて販売されるため、なかなか和歌山の存在が知られないのです。「これでは、JAがどんなに苦労して普及に努めても年を負うごとにモノが集らなってしまう。そもそも和歌山の黒豆として世に出ない。これでは産地としてもこれでは永遠に日の目を見る事がない」そんな窮状を打破すべく、
JA紀の里は役員の号令によって「黒豆のブランド化推進プロジェクト」を立ち上げました。
私たち船井総合研究所のメンバーとJA紀の里のともぶち支所の若手の営農指導員によるチャレンジが始まったのです(続く)。

紀の里農業協同組合           
649-6494 和歌山県紀の川市上野12番地の5

代表者:山田泰行(代表理事組合長)

出資金:93億円

正職員:約400名

1992年10月1日に、旧岩出町を除く那賀郡内にあった打田町農業協同組合、粉河町農業協同組合、那賀町農業協同組合、桃山町農業協同組合、貴志川町農業協同組合の5農協が合併して発足。
2000年11月3日にはめっけもん広場(大型農産物直売所)を開設し、既存の5直売所と道の駅 根来さくらの里と合わせて生・消交流の拠点となっています。
地域は果樹が多く、八朔においては日本一の産地など柑橘に強い。

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