基礎知識

第2章 集落営農の法人化

1. 集落の機能と法人化による役割分担

 集落営農には2つの機能があります。一つ目は農地など地域資源の管理や環境保全機能を担ったり農用地利用調整を行ったりする公益機能です。二つ目は農産物の生産や加工、販売を担う生産販売機能です。2つの機能は重層的な関係になっているため、集落営農を2階建ての建物に例えて、公益機能を担う部分を1階、生産販売機能を担う部分を2階と考えるとわかりやすくなります。

図2.集落営農の2階建て構造

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 ところが、集落営農における農業は、基幹作業だけでなく、水管理・肥培管理や畦畔の草刈なども含んでおり、農業の範囲は2階部分だけでなく1階部分に及んでいます。このため、これまでは、1階と2階を一体とした形で農事組合法人を設立するなど、上下一体型の集落営農の法人化の方法しかありませんでしたが、農地法の改正などによって、集落営農の1階部分と2階部分の機能をそれぞれの組織で分担する仕組みが可能になりました。この場合、集落営農における農作業の一部を1階部分の組織が担うことを前提となりますので、1階部分と2階部分の担い手(構成員)が異なることに着目して、それぞれの意欲を引き出し、組織の活動への積極的な参加を促す工夫が欠かせません。また、1階部分と2階部分の利害は必ずしも一致しないため、別々の組織としたうえで、双方が協働関係になるようにする必要があります。

図3.集落営農の機能と農業の範囲

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 1階の公益機能の部分は、農業者だけでなく、非農家の人も含めた地域住民や地域外に居住する地権者の参加を得ていくことが望ましい姿です。農地の面的集積は、その推進の役割を市町村などの公的機関が担うことになっています。ただし、その一方で、面的集積された農地について、面的集積の状態を保持しつつ、農業生産に適した優良な農地を維持管理する役割は、地域ぐるみで担っていく必要があります。

 これに対して、2階の生産販売機能の部分は、担い手に任せて機動的に運営し、経営体として確立していく必要があります。集落営農法人が、2つの機能の両方を担う必要はなく、別々の組織とする方がそれぞれの組織の性格が明確になって運営がしやすくなります。後述するように広域の農業経営を営む法人を設立した場合、集落を単位とした農用地の利用調整や農地・環境の保全の役割までも農業経営を営む法人が中心となって担うのは、その経営者にとって負担が重くなります。このような場合には、別個の組織にして役割分担をしないとうまく機能しません。

 また、この2つの機能を担う組織を別々の組織とした場合、1階部分の組織と2階部分の組織が一対一である必要はなく、1階部分の農地の調整や保全機能は、従来どおり集落ごとに担う一方で、2階の生産販売機能は集落を超えて広域に活動する担い手に任せる方法が考えられます。中山間地域など集落内に担い手がいない地域においてこの方法は特に有効です。農業参入企業も含めて広域に活動する既存の担い手がいない場合には、複数の集落が共同して担い手としての農地所有適格法人を設立する方法が考えられます。地権者が出資者となって法人を設立する場合、地権者の数が多くなりますので、運営における機動性の確保の観点から、広域の農地所有適格法人は、農事組合法人ではなく株式会社とすることも選択肢となります。

図4.集落営農の広域対応による法人化

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 これに対して、1階部分の集落単位の法人として、農地所有適格法人を設立するのではなく、一般社団法人として法人化するというアイディアが「地域資源管理法人」です。1階部分は、農用地利用改善団体の資格を持った任意組織として運営する方法がこれまでは一般的でしたが、地域資源管理法人は農用地利用改善団体を法人化したものです。また、地域資源管理法人は、中山間地域等直接支払や多面的機能支払交付金の受け皿組織ともなります。

表4.集落営農の機能分担と法人化等に対応した組織形態

集落等の範囲での法人化等

上下一体 上下分離
2階部分 農事組合法人等(構成員:地権者+従事者) 集落内認定農業者、株式会社等(構成員:従事者中心)
1階部分 農用地利用改善団体(任意組織)⇒地域資源管理法人

集落等の範囲を超えた法人化等

広域の法人化 担い手の誘致
2階部分 株式会社等(構成員:従事者中心) 集落外認定農業者、建設業者・NPO法人等参入企業
1階部分 農用地利用改善団体(任意組織)⇒地域資源管理法人

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