基礎知識

第2章 集落営農の法人化

2. 消費税還付のメリットが大きい従事分量配当制の農事組合法人

(1) 集落営農法人のほとんどが農事組合法人として設立

 集落営農を集落ぐるみの形でそのまま農地所有適格法人として法人化するのであれば、農事組合法人を設立して従事分量配当制により運営するのがお勧めです。従事分量配当は、赤字にならない運営が可能であるだけでなく、消費税の課税仕入れとなることから、法人にとっては有利になります。集落営農数14,853のうち法人化したものがすでに3,622(15.9%)ありますが、法人化した集落営農の約87%(3,147)が農事組合法人を選択しています(注)。

(注)農林水産省集落営農実態調査(平成27年2月1日現在)
 従事分量配当制による農事組合法人については、消費税が還付になることがあります。従事分量配当は、役務の提供の対価としての性格を有することから、消費税の課税仕入れに該当します。集落営農組織を法人化した場合、消費税の課税売上げとなる農産物代金(品代)は収入全体の一部であり、麦・大豆・そばなど転作作物の収入の大半は畑作物の所得補償交付金や水田活用の所得補償交付金といった消費税の課税対象外(不課税)取引になります。このため、労務の対価を従事分量配当により支払う場合、課税仕入れが課税売上げを経常的に上回ることになります。

 このような場合、消費税の一般課税(本則課税)の適用を受けることにより、毎事業年度、消費税の還付を受けることができます。法人化した場合、法人税、住民税、事業税がかかりますが、農業経営基盤強化準備金を活用すれば、法人住民税均等割の年7万円(標準税率の場合)に加えて若干の税額で済みます。この法人税等の負担よりも消費税の還付額が多くなれば、法人化によってむしろ税金面では得をすることになります。さらに、戸別所得補償制度の実施により、稲作についても米の所得補償交付金や米価変動補てん交付金が交付されることになったため、ますます不課税取引の割合が増えて、消費税の還付額が増えることになりました。

 しかしながら、従事分量配当を受け取る組合員にとっては、農業所得としてまるまる課税されるため、給与所得控除の適用が受けられる給与に比べて不利になります。一人当たりの労働分配額が多くなってくると、給与制による組合員のメリットが従事分量配当制によるメリットを上回るようになります。農事組合法人の設立当初は従事分量配当制とし、法人の収益性が向上して基幹的従事者の一人当たりの労働分配額が増えたら給与制に移行しましょう。

 給与制に変更した場合、農事組合法人としてのメリットが少なくなりますので、将来的にはさらに株式会社に組織変更することも選択肢となります。

(2) 従事分量配当のメリットとその活用

従事分量配当とは
 従事分量配当とは、組合員に対してその者が農事組合法人の事業に従事した程度に応じて分配する配当です。農業の経営により生じた剰余金の分配であり、農業経営の事業(2号事業)に対応する配当です。

 協同組合等に該当する農事組合法人が支出する従事分量配当の金額は、配当の計算の対象となった事業年度の損金の額に算入します(法60の2)。従事分量配当を支出する前の状態で決算を確定したうえで、剰余金処分によって従事分量配当の支出が決定されます。このため、損益計算書には労務費相当額が計上されないため、剰余金が生ずることになりますが、事業年度終了後の定時総会において事後的に決定した従事分量配当をその事業年度に遡って損金算入することができます。

 農事組合法人は、いわゆる「確定給与」を支給しない場合に限って、協同組合等として取り扱われます。つまり、給与制を選択した場合には普通法人、従事分量配当制(無配当の場合を含む。)を選択した場合には協同組合等となりますが、いずれを選択するかは事業年度ごとに行なうことができます。

 農事組合法人は、設立当初は従事分量配当制とし、法人の収益性が向上して基幹的従事者の一人当たりの労働分配額が増えてきたら、給与制に移行するのが基本的な手順になります。ただし、麦を栽培する集落営農などを法人化した場合、法人設立初年度において農産物の販売がないまま事業年度が終了することとなるときは、その事業年度の剰余金がないことから、従事分量配当をすることができません。このため、従事分量配当制を採用しようとしている場合であっても、設立初年度で売上高がないなどの理由で剰余金が生じない見込みのときは、初年度などに限って給与制とするかまたは定額の作業委託費により組合員に作業委託する方法が考えられます。ただし、作業委託費は、できる限り期末までに支払いを済ませてください。

 給与制から従事分量配当制への変更(またはその反対)について何も手続きをしなかった場合、前年度と同じ法人税申告書の様式(別表1(1)または別表1(2))が送付されてくることになります。このため、今年度についていずれを選択するかを通常総会で決議し、その議事録を添付して、税務署に「異動届出書」によって「法人区分の変更」の変更を届け出てください。
ポイント
⇒集落営農法人は農事組合法人として設立し、基本的には従事分量配当制を採用することが有効。

「従事した程度に応じて分配」とは
 従事分量配当における「従事の程度」とは、単に時間だけで評価するのでなく、作業の質をも考慮すべきであり、作業の種類に応じて従事分量配当の単価を変えることは可能です。農事組合法人定款例においても、従事した日数だけでなく「その労務の内容、責任の程度等に応じて」従事分量配当を行うものとしています。

 また、農事組合法人が複数の作目などによる農業経営の事業を行なう場合において、部門別の損益の範囲内で従事分量配当を行うため、部門別の損益を明らかにしたうえで、それぞれの従事者に対して作目別の従事分量配当の単価を変えることも、農協法上、とくに問題はなく、税務上も損金算入が認められると考えられます。ただし、圃場を管理する個人別に部門を設定し、その部門損益をそのまま、従事分量配当とした場合、従事した程度に応じた分配とは言えず、損金算入が認められない可能性があるので、注意が必要です。同様に、出来高払制の圃場管理料は、従事分量配当としては認められない可能性があるため、損金経理による作業委託費として経理することをお勧めします。
ポイント
⇒従事分量配当の根拠となる作業時間・面積を作業日報に記録する。

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