- スーパー等の販売データや生活者へのアンケート結果等、様々なデータの収集〜集計〜分析を行っている株式会社インテージ。今回は、住吉雄大さんが、食のトレンドを解説します。
はじめまして。インテージの住吉です。
2019年も残りわずかとなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。2020年はオリンピックにSUPER NINTENDO WORLD(スーパー任天堂ワールド)の開業、上野動物園のパンダ舎の移設に伴い「パンダのふるさとゾーン」として新たにオープンするなど、大きなイベントが盛りだくさんの1年になりそうです。
そこで今回は、「2020年大きく伸びていきそうな農作物はなにか?」というテーマについて、我々インテージの強みである生活者情報や店頭情報を使いながら、お届けしたいと思っております。是非、最後までご一読ください。
ここ2-3年で市場規模が伸び続けている農作物はなにか??
まずはスーパーで販売されているさまざまな農作物の市場規模のトレンドについて、インテージのデータの1つである日本全国のスーパー600店より集めたPOSデータ「インテージSRI(生鮮・惣菜)」で確認してみました。
▼インテージSRI(生鮮・惣菜)中分類別 市場規模(兆円)
【全国のスーパー(八百屋や生協の購買除く)2014年〜2019年 各年12月~11月)】
2017年頃までの野菜価格の高騰がひと段落したこともあり、直近1年間の“野菜”の市場規模(金額ベース)は前年マイナスで推移しています。
人口の減少を受けて、食品の市場規模は減少傾向にあるのですが、その中でも、昨今の簡便ニーズの高まりを受けているためか、“サラダ用カット野菜”などの“野菜加工品”は、底堅く推移しています。
また、“果物”に関しては、“野菜”同様に市場規模は縮小の傾向にあります。
どんな農作物が伸びているのか??
“野菜”、“果物”の市場規模は縮小し、“野菜加工品””は底堅く推移、となっていますが、では個別の作物単位では、どんな状況になっているのでしょうか。農作物の中でも、特に規模が大きい作物にしぼって、過去5年間の年成長率を比べてみます。
▼インテージSRI(生鮮・惣菜)市場規模TOP30の作物別の5年間の平均成長率
【全国のスーパー(八百屋や生協の購買除く)2014年〜2019年 各年12月~11月)】
結果を見ると、最も市場規模が大きいのは“トマト“となっており、約2,300億円となっていますが、過去5年間の成長率は0%とほぼ横ばいで推移しています。
さきほどの”サラダ用カット野菜”は、市場規模自体は“みかん“以上と比較的大きいうえに、年平均成長率は4%と、順調に拡大していることが分かります。
その”“サラダ用カット野菜”を超える伸びを示している作物の中に、弊社の過去の投稿でもたびたびご紹介させていただいた“キウイ”と、“まいたけ”があります。
“キウイ”については、栄養面でも時短・簡便という視点でも生活者にとって様々なメリットのある作物ということで、大人のみ世帯で特に伸びていることが確認できています。
一方“まいたけ”については、やや意外な結果となりました。過去5年間の平均成長率が11%となっており、市場規模TOP30の中で最も高い数値になっています。要因について確認したところ、テレビ番組※で「食事制限をしなくてもダイエット効果がある」と取り上げたことで、“まいたけ”ブームが起きたことが分かりました。
※テレビ番組:フジテレビ『ビューティコロシアム』(2014年1月28日放映)
食物繊維も豊富で、「※MDフラクション®」という“まいたけ“独自の成分により夏バテに効く効果が期待できるということで、広まっているようです。
※MDフラクション®:株式会社雪国まいたけ が発明したマイタケから抽出した抗腫瘍物質
特にどの年代で“まいたけ”が伸びているのか?
最後に、“まいたけ”は特にどの年代で、よく食べられているのか、どの年代で大きく伸びているのか、年代別の違いを探ってみます。
▼キッチンダイアリー 年代別の“まいたけ” 夕食TI値※
(京浜、20代〜70代 2人以上家族の主家事担当者、夕食、2014年〜2019年 各年11月~10月)
※TI値:1000食卓あたりの出現回数
まず最もTI値が高いのは70代で、若くなるごとに“まいたけ”のTI値は下がっていく傾向が見えます。
次に変化に注目すると、2014年にTI値が最も高かった30代は、TI 値がこの5年間でほぼ半減しています。また、20代も同じく4年前に比べて大きく下がっています。
一方で、70代はこの5年間でTI値が大きく伸びています。今回は“まいたけ”を使用している理由までは、確認していないものの、若い層の喫食が減り、年配層の喫食が増えていることに鑑みると、ダイエット効果を求めるための “まいたけ”の消費はダウントレンドであり、この5年間の“まいたけ”の成長は、食物繊維や「MDフラクション®」といった健康効果を求めることに支えられているのでは、と考えられます。
今回は年末ということで、来年以降伸びていきそうな農作物のヒントを探りましたが、いかがでしたでしょうか。
農作物の市場規模の変化とその要因仮説、年代別のトレンドを確認することで、どんな理由で伸びているのか、それによってどのように各作物を生活者に提案すべきかについてのご参考になれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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