- 農業ビジネスに潜む損害賠償リスクについて、大場弁護士が事例を交えて解説します。
栽培方法を巡る損賠賠償リスク
AI、IoT、ロボット、ドローン等、世界の産業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。このような流れは、農業であっても例外ではありません。
いわゆるスマート農業による生産性向上に向けた取り組みは、生産者の高齢化、担い手の減少等の対策としてもこれからより重要になってくるものと思われます。
また、このようなスマート農業の動きは、大手メーカーやAIベンチャーなどの主導によるもののみならず、個々の生産者の創意工夫により新技術の開発がなされることも期待されるところです。
さらに、スマート農業と言わずとも、現場の生産者の方々の創意工夫により、新しい栽培方法が生み出されることも少なくありません。
今回は、大手メーカーやAIベンチャーなどによる複雑な装置やシステムなどではなく、現場の生産者の方々の創意工夫により生み出された栽培方法を巡る損害賠償リスクについて、説明します。
栽培方法などの「方法の発明」
特許には、機械や装置といった「物の発明」の他に、栽培方法などの「方法の発明」というカテゴリーがあります。
実際、露地栽培、施設栽培にかかわらず、栽培方法に関して多くの特許出願がなされており、実際に特許権が認められている栽培方法も少なくありません。
栽培方法に関して、特許権者がご個人のお名前になっているもの(生産者個人の方と思われるもの)として、例えば、次のようなものがあります(発明の詳細説明は省略しています)。
「自然薯の栽培方法及び栽培容器」(特許4654223)
「自然薯の栽培方法および栽培装置」(特許4231542)
「山芋栽培装置及び山芋の栽培方法」(特許第6554716号)

どうでしょうか。いずれの栽培方法も普通の人が容易に思いつくものではない進歩的な栽培方法でありますが、他の人が知らずのうちに類似の栽培方法を用いてしまう可能性もないことはないのではないでしょうか。
あなたご自身が新しい栽培方法を発見したと思っていたところ、実は、既にほかの人が特許を取得している栽培方法だったということもあり得ます。まして、その栽培方法を広告やインターネットなどで謳っていた場合、その広告などをみた特許権者の方から、突然、損害賠償請求がなされるという可能性もあるのです。
誰がどのような特許を有しているのかについては、インターネットの「特許情報プラットフォーム J-Plat Pat」というサイトで検索することができますので、何か新しい(と思う)栽培方法を思いついたときは、他の人が特許を取得していないかを確認したほうがよいでしょう。
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