都市型農業の未来と環境教育の充実をめざして
東京都立農芸高等学校 校長 小堀紀明
先生からのエール
「都市型農業を発展させることは持続可能な社会につながる」
東京都立農芸高等学校の紹介
東京都立農芸高等学校は明治33年に中野町他13ヶ村組合立農業補習学校として設立しました。その後、数回の組織変更を経て昭和25年に東京都立農芸高等学校と校名を変更し今年で開校120年を迎える都内で最も歴史ある農業の専門高校です。
現在は、全日制課程に園芸科学科3学級、食品科学科6学級、緑地環境科3学級の12学級、定時制課程に農芸科4学級の合計16学級を設置しています。
21世紀は「環境の世紀」と言われています。本校では、いち早く環境学習に着目し「エコアクション21」の取得を含め「環境教育実践宣言校」をキャッチフレーズに学校全体で環境教育を推進しています。
さらに、学校農業クラブ活動やインターンシップ等を含め地域連携活動を推進し、地域の産業社会を担う人材育成を目指してキャリア教育に取り組んでいます。
東京の農業高校が考える新しい時代の農業
本校は、東京都杉並区にあり、周囲は住宅街です。しかし、東京都23区にも露地や施設を中心に野菜や果樹を栽培する農家がありますし、大規模ではありませんが少量多品種を栽培し農協への出荷と直販とを併合して行っています。
また、江戸東京野菜に加え、東京ウド、東京ゴールド、東京おひさまベリーといった差別化した野菜や果実も販売されています。このことは、生産地と消費地が一体となっていることが大きな強みとなっていると思います。
東京の農業は付加価値として「安心安全を見える化」、「こだわり」、「地産地消」の東京ならではの三点に未来の都市農業があると考え生徒の「学び続ける態度を育成する」取り組みを行っています。
環境教育実践宣言校としての取組
持続可能な産業社会を担う人材の育成が求められる中で、持続可能な開発目標(SDGs)に示されるように、自然環境にとどまらず、あらゆる場面での「環境」を改善することに取り組むことが求められています。そのような中で持続可能な農業の在り方を考え実践することを本校の教育の中心に据えています。
「安心安全の見える化」では、園芸科学科において2019年3月に東京都GAP、6月にJGAP認証を取得しました。ご存じの通り、GAPは「整理と分類」が基本です。生産から流通、販売までを帳票にまとめ「見える化」します。具体的な数値を使って「安心安全」の説明責任を果たすことができます。
さらに、未来の農業としてスマート農業が注目されています。本校で考えるスマート農業は、栽培管理も数値化し「見える化」することです。圃場の状態をセンサーで数値化しクラウドにデータ集約します。スクエアコードを使用し消費者はいつでもそのデータを確認できるようにします。
第一歩として生徒自身がタブレット端末に実習記録を入力する取り組みをはじめました。肥料の状態や塩類集積、残留農薬などの状況を把握し栽培に役立てるとともに、消費者にも説明することで「安心安全な生産物」であることを知ってもらうことができます。
食の環境と食の安全を学ぶために食品科学科では、HACCP手法を取り入れた食品製造に授業で取り組んでいます。
生徒たち自らが作ったHACCPに関する説明や注意事項を実習室に張り出すことで、食品衛生や食品安全への意識を高めています。
さらに、学校での生徒たちの取組に対して企業の専門家を招いて評価していただくとともに、企業で実際に行われているHACCPについて学びます。
緑地環境科では、都市における緑の大切さや快適な環境づくりを「美しい庭づくり」をとおして学んでいます。
樹木の管理、デザインと設計・施工の理論と実習を学ぶ中で持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて庭造りに取り組んでいます。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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