農業法人への出資を通じて経営をサポートするアグリビジネス投資育成株式会社が、前シリーズ「成長を導く資本政策」に続き、地域に根差しながら成長を続ける農業法人の経営者へのインタビューを紹介します。
(有)ティーエム/(株)白馬そだちへのインタビュー記事は2回に分けてお伝えします。
第3回:観光の村“白馬”を農業で守り、育てる
第4回:有休取得率100%!SDGsにつながる『持続可能な会社作り』
第3回 観光の村“白馬”を農業で守り、育てる

■会社の概要(2019/6時点)
会社名:有限会社 ティーエム
代表者:会長 津滝俊幸、代表取締役社長 津滝明子
所在地:長野県北安曇郡
事業内容:農産物の生産(米、ブルーベリー、蕎麦、野菜)
出資年月:2016/6
資本金:20,000千円
会社名:株式会社 白馬そだち
代表者:会長 津滝俊幸、代表取締役社長 津滝明子
所在地:長野県北安曇郡
事業内容:農産物の加工品の販売、農家レストラ運営、グランピング事業他
出資年月:2018/6
資本金:21,000千円
■ 会社の紹介
(有)ティーエムは長野県北安曇郡白馬村で米と野菜、ブルーベリーなどを生産する農業法人です。
(株)白馬そだちはティーエムが育てた農作物、およびその農作物の加工品の販売、そして農家レストラン「農かふぇ」を営んでいます。さらに、白馬そだちは農業と観光をつなぐ場として、2018年夏に自社農場の隣接地でグランピング(注)事業をスタートしました。
当社グランピングのセールスポイントは、できる限り自然を残した森の中でキャンプができること、当社の畑で採れた野菜や米、白馬の地で生産された肉などを食べられること、そして農業体験ができることです。
(注)グランピング(Glamping):グラマラス(魅力的な)とキャンピングを掛け合わせた造語。テント設営や食事の準備などの煩わしさから旅行者を解放した「良い所取りの自然体験」(出展「一般社団法人日本ブランピング協会」HP)
1.観光の白馬村を下支えする「農業」
― 津滝会長が農業を始められたきっかけは何でしょうか?
山や田園風景から成る美しい景色が魅力の一つである白馬村は観光産業で成り立っており、私自身も、もともと民宿を経営していました。しかし、観光が盛んになってくると兼業農家が観光業に力を入れるようになり、農業の担い手の減少とともに耕作放棄地が増えていきました。
このままでは白馬の観光に影響が出て、村全体が衰退してしまうのではないか。農業は単に生産をするというだけではなく、田園風景を守ることで村全体を下支えする産業として必要ではないかと考えました。
そして、『誰がやる?』と自分に問いかけたときに出した答えが、『誰かがやるのを待つのではなくて自分がやろう』でした。
農業をやろうと決めてから、行政や地元のJAの方に、ご協力いただきながら(有)ティーエムを設立しました。
当初は農作物を生産・出荷するだけでしたが、民宿を営んでいたせいか、人と人とのつながりが好きでしたし、もっと面白いこともやりたいという思いが強くなり、自社での直接販売や『白馬そだち』のブランドをつくり、加工品販売を始めることとなりました。
2.(有)ティーエムがアグリ社の出資を受けたきっかけ
― アグリ社の出資を受けた経緯を教えてください。
農業界は高齢化により、地域の担い手への農地集約が進んでいます。実際、我々のところにも、農地が集まってくるようになりました。そのため、更なる規模拡大に備え、早い時期から財務基盤の拡充のための情報を集めていました。
日ごろからお付き合いのあった、長野県信連さんに私の計画を話したところ、アグリ社(アグリビジネス投資育成(株))による出資のお話をご紹介いただき、申し込むことにしました。
3.6次化産業に特化した(株)白馬そだちの設立
― 御社のブランドでもある「白馬そだち」と同じ名前で会社を設立した経緯を教えてください。
しろうま農場・(有)ティーエムで農産物の販売事業や農家レストランの運営に取り組んでいくうちに、商品企画と販売に重点をおいて、将来的には農業と観光を連携、充実させるサービス部門も立ち上げていきたいという構想が生まれました。
その構想を実現するために、農業生産部門と切り離し6次産業化に特化させた運営主体として、加工品のブランド名として浸透してきた『白馬そだち』の名を冠した会社を新たに設立しました。
先に述べたように白馬は観光の村ですが、景気変動やレジャーの多様化などの影響が次第に大きくなってきました。ペンションが使われなくなり、また若者が都会へ出るようになったことから観光業の担い手が減少していきました。
その一方で、白馬のパウダースノーや山々に魅力を感じる外国人が建物を買い取り、リノベーションして新たに宿泊業を始める、といった話も出てきました。
そうした地域の変化を見て、これは何か仕組みを変えていかなければと考えるようになったのです。
インタビューを終えて
今回は津滝俊幸会長とその奥様である明子社長のお二人にお話を伺いました。インタビューを通して、いいお米や野菜などを作ることはもちろん、作った農産物やその農産物を使った加工品をお客様に届けることに力を入れていること、そして「白馬村の観光を下支えする農業」への強い想いが感じられました。
次回は、農業と観光を連携するビジネスモデルの中心となっている、当社のグランピングと、今後の経営方針についてお尋ねします。
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