(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 住吉雄大)
成長する"にんにく"市場を読み解く
こんにちは。インテージの住吉です。
すっかり在宅勤務に慣れ、お昼ご飯も自分で作るようになりました。レシピサイトを参考に作っており、最近はペペロンチーノにはまっています。
その時、味付けに使っているのが“にんにく”です。以前はにんにくのにおいを気にして、外出があるときなどは控えていたのですが、においを気にせずにたっぷりとにんにくを使用できるのも、在宅勤務の醍醐味だと感じています。
今回は、にんにくに着目して、市場動向や食卓の変化を読み解いていきたいと思います。
成長するにんにく市場
インテージ小売店パネル調査「SRI」にて、調味料のにんにく市場規模のトレンドを確認してみましょう。SRIとは、全国の小売店を対象とした、販売情報データです。
▼2010年〜2019年、2020年1-10月 にんにく(調味料)の市場規模 全国計
※2010年〜2019年の年次トレンドは、1-12月を1年としています
にんにくの市場規模は増加を続けており、2020年1-10月の10カ月間で、2010年1-12月の1年間の2倍を超える53億円に達しました。前年同期比でみても、2020年1-10月には134%と大きく伸長しています。
滋養強壮や免疫力向上などの健康効果があるとされるにんにくは、簡便に料理に使えるチューブタイプの商品にけん引され、市場を拡大してきました。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を背景として、“巣ごもり需要”が活況となるなか、にんにく市場が一層伸長しているようです。
それでは、生鮮野菜のにんにくも、2020年に伸長しているのでしょうか。引き続き「SRI」より、生鮮野菜の販売個数の前年比を、2020年4-9月でみてみましょう。
▼2020年4-9月 生鮮野菜の販売個数の前年比 全国計
※生鮮野菜内個数シェア0.5%以上のもののうち、前年比110%以上のものを抜粋
伸びが最も大きい野菜はながいもで、前年比129.8%、次いでにんにくも、前年比124.0%と伸長しています。
新型コロナウイルスの感染リスクへの懸念が高まるなか、ながいも・にんにくともに、免疫力向上の効果が注目されて需要が高まったと考えられます。
昼食メニューで増加したペペロンチーノ次に、にんにくを使用したメニューが増えているのかを、インテージ食卓調査「キッチンダイアリー」で確認します。キッチンダイアリーとは、2人以上家族の主家事担当女性を対象とした、食卓情報データです。
▼2020年4-6月、7-9月 昼食TI値 京浜エリア
(TI値:1,000食卓あたりの出現回数(回))
※主食のうち、TI値5以上のメニューに限定した前年比ランキング
4-6月、7-9月ともに、前年より最も増加したのは、“ハンバーガー”となっています。とりわけ4-6月では、前年比が232%と前年よりも2倍以上にまで増加しました。4-6月の4位は“オムライス”、5位は“たこ焼き”となっていることから、子供向けのメニューが上位に来ていると見て取れます。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、小中高の休校と緊急事態宣言が重なったため、子供と一緒に食べられるメニューが人気となったようです。
7-9月には、4位は“つけ麺(中華麺)”、5位の“ペペロンチーノ”となっています。小中高が再開されたものの、在宅勤務の継続により、家庭で食事をするビジネスパーソンが少なくないため、大人向けメニューが上位に来たと考えられます。
ペペロンチーノは、比較的簡単に調理できることに加えて、にんにくを使用しており免疫力向上などの健康効果が注目されていることから、人気となっていると推察されます。次に、ペペロンチーノが、どの世帯で増加したのかをみてみましょう。
▼2020年7-9月 昼食TI値 京浜エリア
(TI値:1,000食卓あたりの出現回数(回))
2019年7-9月では、30代のTI値が6.6と他の世帯よりも突出して大きくなっていました。2020年7-9月には、30代のTI値が7.8まで増加しただけではなく、20代から60代まですべての世帯で増加しました。とりわけ、40代が2倍以上に、20代も2倍近くまで増加しており、ペペロンチーノを料理する世帯が広がってきていることが分かります。
市場拡大を続けるにんにくが、どのような形で食卓への活用が進んでいくのか、今後の動向が注視されます。最後までご覧いただきありがとうございました。
シリーズ『データに基づく食生活のトレンド分析』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日