アグリウェブ読者のみなさま、連載二回目となる今回は、当社海外事業における産地から海外店舗への流通網とプライシング(店頭価格)について、少し掘り下げてお話をさせて頂きます。
輸出のマーケティングにおいて避けては通れない「現地のお客様にとって魅力的なプライシング」を実現するためには、生産者様と我々販売者が密に連携した輸送戦略が重要となります。
現地のお客様にとって魅力的なプライシング
当社は現在、さつまいもやトマト、桃・いちご・メロン、キャベツ、ほうれん草など数多くの日本産の青果物を海外へ輸出し販売することで、世界のお客様に喜んでいただいていると自負しております。
我々の海外店舗DON DON DONKI がお客様からご好評頂いている理由は、前回お伝えしました「①“ジャパンブランド・スペシャリティストア”をコンセプトにした、取扱商品の『選択と集中』及び『偏愛と傾斜』」、「②日本産品のブランド力を的確につたえる店頭販促」であると考えます。
これに加え、避けては通れない部分である「③現地のお客様にとって魅力的なプライシングの発掘」と考えております。
具体例をあげてお話ししますと、例えば、日本では100 円で販売されている「りんご」が、海外の一部店舗では300 円〜400 円で販売されているケースがあります。
小売店様毎に様々なプライシング戦略がありますので、勉強させて頂くとともに、当社はさまざま実験を繰り返してきました。その結果、当社の海外店舗では、150 円〜200 円程度が適切なプライシングと判断しています。
一般的に、海外輸出は煩雑な業務(登録、書類整備など)労力や鮮度維持のためのインフラ整備(エコシステム)などのコストがかかります。そういった労力やコストを加味した売価設定をせざるを得ないと推察されます。結果として、「安全・安心・美味」な日本産品は高価で、ごく一部の富裕層むけのような商品になっている傾向が不都合な真実であると言えます。
そこで当社は、この不都合な真実と向き合い、日本産品をより多くのお客様にお届けするにはどうすればよいか?と考え、次のような取り組みを実践しています。
適正価格を実現するパートナーシップ
まずは、当社の利益を最低限まで抑え、広く認知度を向上させること。そして、多くの数量を仕入れることにより生産者様とタッグを組むことです。これにより適正価格を実現することで、商品回転率が高く、鮮度感が高い状態で販売できることにつながるといった善循環が生まれつつあります。
このようなことを可能としたのは、国内とは異なり海外では市場価格に左右されず、商品としての“価値”が適正売価であるかどうかが、お客様の購入動機であることも挙げられます。また、こういった販売戦略を実現できている秘訣は、プライシングの妙のみでなく、当社独自の二つのパートナーシップを築くことができていることが大きな要因です。
生産地からの直送
一つ目は、生産地からの直送です。単品で圧倒的な物量にのぼる品目については、生産地から直接輸送することで、鮮度を維持したまま最短日数による海外への出荷のご協力を頂いております。
一般的な農産物の輸出においては、生産地から出発し海外店舗に配送されるまでに、国内のバイヤー、税関・輸送など輸出に必要な手続きを担うエクスポーター(exporter)、輸出相手国における輸入に必要な手続きを担うインポーター(importer)、海外のバイヤー、といった具合に複数のプレイヤーが介在します。
プレイヤー同士の契約に基づき、受け渡し時間などが細かに決められ、どうしてもそこにタイムロスが発生するため、鮮度は落ちていきます。もちろん、プレイヤーの数は多ければ多いほど、オンされる手数料が積み増されていき、鮮度に問題がない選りすぐりの農産物が海外店舗の店頭に並ぶ時には「適正価格」から大きく乖離してしまいます。
一方、当社の場合には、生産地から当社指定箇所に出荷をいただければ、海外店舗まで届ける手続きを一気通貫で行うことができ、それが「適正価格」の実現に寄与しています。また、この輸出の「産直」によって、生産者の皆様は、海外のお客様の声(出口)をより身近に感じることができますので、輸出のマーケティングに役立てていただくことが可能となります。
最適な混載品目の組み合わせと積載率
二つ目は、当社がチャレンジと失敗を繰り返しながら編み出した最適な混載品目の組み合わせと積載率です。当社は品目ごとに船便と空便を使っていますが、そこで重要なのがコンテナの積載率と混載する品目のマッチングです。こういったことをお取引先の生産者様と忌憚なく意見交換した上で行っております。
積載率や混載する品目は、鮮度維持に大きく影響します。輸送の時間が長期化する海外輸出において、それらをきちんとコントロール(積載率や混載する品目の管理)しないと、収穫・荷積み・荷降ろしの際などに付着した菌の増殖や、生産物自体から発生するガス(エチレンガスなど)により、すべて売り物にならない状態で、海外店舗に到着することとなってしまいます。積載率や混載する品目におけるわずかな違いが、致命的なダメージを与えることになるのです。
当社では、独自に編み出した船便と空便のそれぞれにおける最適な混載品目の組み合わせと積載率に関するデータおよびノウハウをもとに、生産者様から、輸出する生産物の品目や物量だけでなく、生産・収穫・管理状況に関する情報をいただきながら、積載率と混載品目のマッチングにかかる意見交換を行っています。
輸出前における、そういった丁寧な情報のやりとりが、鮮度を維持し、かつ輸送コストを最小限にして、海外店舗に届けるためには不可欠であり、生産者の皆様にもご協力をいただいているところです。
その他、PPIC(ピック)の会員様をはじめ、win-win を目指し各お取引先様と互いに最大かつ最優先の関係を常日頃から構築できていることが最も大きな秘訣となっております。
皆様の想いがつまった商品がどこでどのように販売され、どのように喜ばれているのか、当社は『出口』としての役目を全うさせて頂きます。
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