(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 住吉雄大)
巣ごもり需要で熱いお好み焼き市場と具材消費の動向
こんにちは。インテージの住吉です。
コロナ禍での外出自粛が続く中、“おうち時間”を楽しむための巣ごもり需要が活況です。私も、家族で一緒にお好み焼き作りを楽しんでいます。お好み焼きには、キャベツやねぎなど野菜をたっぷりと入れることができ、野菜嫌いの息子もパクパク食べています。
コロナ禍における食卓のトレンドは、食材の消費活動にも影響を与えています。今回は、コロナ禍で拡大する家庭でのお好み焼き市場に焦点を当て、関連する具材消費の動向をみていきます。
コロナ禍で拡大するお好み焼き用のプレミックス・ソース市場
まずは全国約6,000店から収集した、インテージ小売店パネル調査「SRI+」より、お好み焼き用のプレミックス(調整粉)・ソースの販売金額の推移を見てみましょう。
▼お好み焼き用のプレミックス・ソースの販売金額の推移 各年度4-3月(全国計)

2020年度の前年度比をみると、お好み焼き用のプレミックスが112%、ソースが109%と増加しており、コロナ禍の巣ごもり需要によりお好み焼き市場が拡大していることが分かります。
お好み焼き用のプレミックス市場の地域差
次に、伸長の大きかったプレミックスに着目して、インテージSRI+より、エリア別の前年度比を確認します。
2020年度 プレミックス市場(エリア別)
▼お好み焼き用のプレミックス市場の前年度比 2020年4月-2021年3月(エリア別)
※全国計よりも前年度比の大きかったエリアの値を赤色で表示。
エリア別の前年度比をみると、関東・東北・北陸など東日本を中心に大きな伸びがみられる一方で、近畿・中国・四国では伸びが小さくなっています。
近畿・中国・四国で市場の伸びが抑えられた要因
近畿・中国・四国で伸びが抑えられた要因を考えるため、約5万人の購買行動を集めたインテージ消費者パネル調査「SCI」より、コロナ禍により市場が拡大する前の期間である2019年4月-2020年3月での、プレミックスのモニター当たりの購入金額を確認します。
▼お好み焼き用のプレミックス市場の購入金額2019年4月-2020年3月(エリア別)
※全国計よりも購入金額の大きかったエリアの値を赤色で表示。
モニター当たりの購入金額は、コロナ禍により市場が拡大する前の期間である2019年4月-2020年3月において、近畿・中国・四国で大きくなっています。
もともとお好み焼き文化が根強く、コロナ前からお好み焼きの消費が活発だった近畿・中国・四国では、翌年度(2020年4月-2021年3月)のコロナ禍による市場拡大の勢いが限定的であったようです。
お好み焼き文化がそれほど活発でなかった地域にて、市場が大きく拡大したとも言えるでしょう。
お好み焼きが食卓に並ぶ頻度
続いて、お好み焼きが食卓に並ぶ頻度は、エリアごとにどう変化したのでしょうか。2人以上家族の主家事担当者1,260世帯を対象とするインテージ食卓調査「キッチンダイアリー」より、お好み焼きメニューのTI値(1,000食卓あたりの出現回数(回))の変化をみます。
▼お好み焼きのTI値の変化 各年度4-3月(京浜・東海・近畿別)
前年度比をみると、京浜が114%、東海が111%と2桁増となっている一方で、もともとTI値の水準が高かった近畿では97%となり食卓に並ぶ回数はやや減少しています。
前出のインテージSRI(2020年度)において、近畿でもプレミックス消費量は前年度比106%と増加していることを踏まえると、
・食卓に並ぶ回数は落ち込んだものの、家族で一緒に食事をする機会が増え、1回当たりのプレミックス消費量が増加した
・薄力粉ではなく、調理が簡便であるプレミックスを好んで使用する動きがあった
などが要因と推察されます。
お好み焼きの材料にエリアごとの違いは?
最後に、お好み焼きの材料に、エリアごとの違いがあるのかを見てみましょう。
▼お好み焼きの材料使用率ランキング 2020年4月-2021年3月(京浜・東海・近畿別)

※3エリア計比は、「各エリアの材料使用率÷3エリア計での材料使用率x100」で、高い値を緑、低い値を赤の濃淡で表示。
※3エリア計比110%超の材料を黄色で表示。
豚肉の使用率をみると、京浜・東海では、「豚小間切れ」が高く、近畿では、「豚バラ肉(スライス)」が高くなっています。
近畿では、お好み焼きの上に豚バラ肉を乗せて焼くことが多いことから、豚バラ肉が豚小間切れよりも好んで使用されているようです。豚小間切れと豚バラ肉では、食感や味わい方も異なっており、地域による好みの違いも見て取れます。
さらに詳細に地域ごとの特徴をみると、京浜では、「健康油(特保油)」と「やまいも」の使用率が高くなっています。
やまいもは、食物繊維を豊富に含み健康にもよいとされていることから、健康への意識の高さが窺えます。また、やまいもをすり下ろしてとろろにして、お好み焼きに混ぜるのも、関東に多く見られるお好み焼きの味わい方であるため、他のエリアよりも使用率が高まったものと考えられます。
東海エリアでは、「ねぎ・長ねぎ」や「ねぎ(冷凍)」の使用率が高く、お好み焼きにたっぷりとねぎを使用する傾向があるようです。また、「干しえび・桜エビ(乾)」の使用率も高く、桜エビの産地である静岡県があることによる影響と推察されます。
近畿エリアでは、「麺(生・ゆで)」「ちくわ」「長芋」などさまざまな材料の使用率が他エリアより高くなっています。前出のTI値の通り、お好み焼きを食べる頻度が他エリアより高いため、さまざまな材料を使用することで飽きずに楽しめるよう、工夫していると見て取れます。
巣ごもり需要による活況なお好み焼き市場にて、地域によりさまざまな材料が使用されていることを見てきました。今後どのようなメニューが人気となり、食材の消費動向にどのような地域差が出てくるのか、注目していきたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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