スマート農業とは?
スマート農業と聞いて、何をイメージされますか?ドローン、ロボット農機、無人監視など労力軽減を目指したいろいろな機器を思い出されるのではないでしょうか。
確かに、ドローンを導入すれば自らの手で圃場に乗り入れせずに農薬散布が可能になり、ロボット農機を使用すれば人的コストを削減した作業が、無人監視により圃場の見回り数の削減が可能になります。ただそこには、コスト的な問題が付いて回ります。
経営者は、導入による費用対効果を考慮して、自分の農業経営にあったスマート農業が何かを考える必要があります。
身近な技術を使ったスマート農業
スマート農業というと先の最先端技術が思い出されますが、日々の記録をメモ書きから電子媒体に変えるのも、立派なスマート農業です。若者に人気のスマートフォンアプリを活用した圃場管理アイテムは、圃場の状況を個々で把握することに適しており、オプション料金を払えば、出荷管理、伝票管理までおこなうことが可能です。
アンテナの高い農業者は、ポッドキャスト、YouTube、Facebookを活用し、自らの農業のアピールをおこなっています。その先に販路拡大という目論見はあるのですが、農業という、知っているようで知らない職業を一般に知らしめる効果もあります。
さらに、同業者の注目を浴び、同じ悩みを共有するコミュニティーが構成されます。いままで、近所の農家友達という狭いコミュニティーから、日本全国の様々な農業者とつながることができるのです。このようなインターネット上のコミュニケーションツールを活用した農業経営もまたスマート農業といえるでしょう。
圃場をデータとして記録する
農業経営の悩みは様々です。ある農業経営体は管理する圃場300枚を毎年大きな白地図を広げ、色鉛筆を駆使しながら作付け計画を作成します。また同様に、管理する組合員の高齢化に伴う圃場の承継にも悩んでいます。
さらに、若い農業者が親許就農したときも、全圃場の把握に苦労します。親はいまままでのルーチンで作業し、口頭で指示を受けても新規就農者の子供はすぐに覚えられません。
昔から「俺の背中を見て仕事を覚えろ」とはよく言うことですが、集約され経営面積の広がった現在の圃場数では、見て覚えられるものではありません。子供は圃場が解らず、「親しか知らない圃場がある」状態になってしまいます。
そもそも圃場を系統立てて、管理をしなければ、収支が判明するわけもなく、圃場のポテンシャルをはかることもできません。
まず必要なのは記録をすることです。
カレンダーに書いたメモではなく、圃場を把握し、圃場の面積、栽培品目、栽培品種、作業日を記録した情報を残すことで、親しか知らない圃場は消えるはずです。口頭による指示だけでなく、圃場ごとの作業記録を確認し、例年同時期に何をおこなっていたかが把握できるようになれば、営農計画書や基本台帳への転記も容易となります。
少しハードルが高いかなという人は、まずは田植え日と稲刈り日だけなど、出来るところからおこなうことも重要です。
少し先進的な農家は、ノートに表を作り、圃場ごとの栽培記録・投入農薬などを記入します。さらに、パソコンを駆使すれば、Excelで書き込むことも可能です
ただし、ここで悩んでしまうのが、表に書き込まれた圃場がどこか解らないという問題です。経験豊富な生産者は、テンジンシタ(天神下)やハシムコウ(橋向)など、固有の名前で圃場を特定できますが、新規参入者や営農団体に就農したばかりの従業員には、チンプンカンプンの呪文にしか聞こえません。
圃場の場所を明確にするには、圃場の場所を明記し、地図に紐づけた管理表が必要なのです。
少し前は白地図に色鉛筆で、毎年印をつけていましたが、今ではパソコン上の地図にマークを入れ、マークの場所と管理表を紐づけデータ管理ができるようになりました。
使用料も格安で、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスでも閲覧することができます。圃場の栽培情報と地図上の自分の場所が確認できれば、圃場への案内や現地確認が不要となり、自分の力で「親しか知らない圃場」をなくすことができるのです。
くわえて、高品位の地図情報とともに印刷も可能なので、適度なアナログテイストも残され、スマートフォンやタブレットを使えない世代にも優しい、印刷した地図を提供することもできます。
このようにスマート農業に関わる技術には、トラクターなどのハードだけでなく、ソフトウエアなど、身近に使える技術も含まれます。自分の経営に何が必要かは、JAやスマート農業の先達者に相談することが望ましいですが、自分で試し、自分が新たな先達になることもこれからのスマート農業に必要なことだと言えます。
先達(せんだつ・せんだち)
① 学問・技芸・修行などで、先にその道に達し、他を導くこと。また、その人。先輩。せんだち。
② 特に修験道で、他の修行者を導くこと。また、その人。峰入りなどの時に、同行の修験者の先導となる熟達した山伏。せんだち。
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