アグリウェブ読者のみなさま、第7回目となる今回は、各国における生鮮品(主に青果物)の輸入規制についてお話させていただきます。
当社が東南アジアへ初めて出店し、本格的に海外戦略を推し進めて今年で4年目となります。改めて海外輸出を振り返ると、そこには多くの難題が存在し、その度に周りの方々のサポートを受け一つずつ乗り越えることができたと実感しております。
ただその中でも、今回お話します輸入規制に関しては国同士で明確なルールが定められており、今後も第一優先事項として遵守しなければ日本産品の販売はおろか輸出をすることもできません。
そこで、国ごとに定められている輸入規制を解説し、それぞれの国に向けて農家さまにお力添えをいただきたいことについてお伝えいたします。
ほとんど規制がないシンガポール
当社がアジアで初めて出店したシンガポールは、輸入に対してほとんど規制がない自由貿易国です。
ただ当初は唯一、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて福島県産の生鮮品に輸入規制がかけられておりましたが、これにつきましても2021年5月28日に完全に撤廃され、シンガポールへは規制を気にすることなく輸出を行うことができるようになりました。
今後、良質な桃を始めとする福島県産品の輸出拡大を行うことで、風評被害に苦しむ生産者の方々の手助けができ、同時にほか14の国や地域で継続されているまったく同様の規制撤廃に向けた一助となれるよう努めて参ります。
一部輸入禁止地域を定める香港
香港もシンガポール同様に貿易に関しては比較的自由度の高い地域となっております。
一点違うことがあるとすれば、関東4県(群馬県、茨城県、栃木県、千葉県)と福島県の青果物が放射能汚染の懸念から輸入制限をかけられています。ただ検疫上の規制はほとんどないため多くの品目を輸出することができ、購買力も高い地域であることから当社海外事業における主要市場となっております。
今後は日本の小売店のように松竹梅の品物を取り揃え、多様なお客さまニーズに機敏に対応できるよう取り組んでまいります。他には真似できない高品質・美味な青果物を栽培されている農家さまはぜひ提案をお待ちしております。
6月に規制が強化されたタイ
タイにおいては農薬をめぐって、2021年6月よりパラコートやクロルピリホスなどの※5物質が「第4種有害物質」に指定され、食品からの検出が一切禁止されました。パラコートを含む除草剤やクロルピリホスを含む殺虫剤は日本国内で広く使用されており、タイで今まで販売できていた品目が取り扱えなくなってしまうリスクが生じました。
また原産地証明書や衛生証明書の提出、認定梱包施設の登録が必要になるなど輸出難易度の最も高い国の一つであると考えられます。無農薬栽培やグローバルGAP認定を取得した生産者の皆さまとタッグを組むことで継続的かつ安定的な供給ができることを目標にしております。
※パラコート、パラコートジクロリド、パラコートメトサルフェート、クロルピリホス、クロルピリホスメチルの5物質
検疫条件の厳しい台湾
タイと並んで輸入規制の厳しい地域として台湾が挙げられます。2021年1月に当社が初めて台湾に出店した際には、輸出した野菜39品目に対し25品目が通関で指摘を受け、廃棄もしくは燻蒸処理を命じられました。
その理由は大きく※3パターンに分けられ、台湾への輸出実績のなかった当社および当社シッパーに対して、いずれも非常に厳格な判断が下されました。農水省や全農様と連携し解決に向けて協議しておりますが、なかなか糸口が見えていないのが現状です。
※当社が指摘を受けた具体的理由
①農薬検査における禁止物質の検出(代表品目:ほうれん草など葉物、ピーマンなど果菜類、レタス類)
②密閉包材使用による栄養表示義務違反(代表品目:菌茸類)
③繁殖力を持つ根付きの野菜は輸入禁止であること(代表品目:豆苗)
イスラム教を国教とするマレーシア
マレーシアは当社が初めてイスラム圏に出店した国であり、人口の約60%を占めるマレー系の方々のほぼ全員がイスラム教徒と言われています。そのためマレーシアの国教はイスラム教とされており、アルコール分を含む商品の販売が禁止されていたり、ハラール認定を受けた施設で処理された食肉のみ販売が許可されていたりとイスラム教の教えを重んじています。
その中で、当社が輸出しているハラール認定を受けた和牛に関しては現地のお客さまにも高い評価を頂き、大変喜ばれております。
一方、青果物に対しては規制があまり存在せず、シンガポールからの陸上輸送も可能であることから輸入自由度の高い国であると言えます。
そのため今後の店舗拡大に向けて生産者の皆さまより多くのご提案がいただけることを楽しみにしております。
輸入禁止品目最多のアメリカ
最後にハワイを含むアメリカについては、前回もお伝えしました通り、主力品目(キャベツやねぎ、トマトなど)の多くが輸入禁止品目に設定されています。
現在は、アメリカの規制をクリアした日本の農産品を探し求めていると同時に、現地在住の日本人生産者様が手掛けた作物の取り扱いも推進しております。
当社の海外事業のコンセプトは「Made in Japan」にこだわった純日本産品ですが、アメリカに関しては「Made by Japan」「Produced by Japan」にも裾野を広げ、現地の農業法人と連携した日本品種の栽培にも着手しております。
アメリカに法人を持つトキタ種苗様の推進する「※Oishii Nippon Project」が当社の想いと合致したことで日本品種の現地栽培・販売が実現する運びとなりました。
当社としましては、現在トキタ種苗様からカタログのご提供を頂いており、その中から現地担当者がお客様目線で日本品目を厳選、現地農業法人が栽培するという産地直送の形で推し進めてまいります。
※Oishii Nippon Project:トキタ種苗株式会社様が、日本のおいしい野菜を世界中に広める総合プロジェクト。
世界各地の気候や土に合わせた品種改良を行うトキタ種苗様から生産者そして消費者までをつなげ、種子から畑そして皆さまの食卓に日本のおいしい野菜を運びます。
当社は今後も生産者さまと手を取り合い、立ちはだかる大きな壁を乗り越え続けてまいります。
ぜひ当連載コラムをお読みくださっている読者の皆さまには、我々と一緒にチャレンジしたいと思って頂ければ幸いです。
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