(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 住吉雄大)
コロナ禍2年目でも人気が高まる韓国料理の消費動向
こんにちは。インテージの住吉です。
“1年に1回は海外旅行に行きたい!”と思っている私ですが、このコロナ禍では旅行に行くのも難しい状況が続いています。その代わりに最近はまっているのが、大阪府鶴橋のキムチです。鶴橋の商店街にはキムチの専門店が軒を並べており、専門店ならではの旨味や品ぞろえがあって、山芋キムチがマイブームとなっています。
韓国料理は、にんにくなどの香辛料でにおいがつきやすいことから、外出時には控えることもありましたが、在宅勤務が中心の生活となりにおいを気にする必要もなくなったので、お昼から山芋キムチを頬張っています。
“海外に行けない、でも本格的な韓国料理は食べて気分転換をしたい”という方も多いのではないでしょうか。また、外出自粛により内食の機会が増え、飽きないよう食事に変化をつけるためにも、韓国料理の人気が高まっているのではないでしょうか。実態を把握するため、今回は韓国料理の消費動向を調べてみました。
食卓での韓国料理の消費動向
2人以上家族の主家事担当者1,260世帯を対象とするインテージ食卓調査「キッチンダイアリー」より、韓国料理の食卓出現率変化を確認します。
▼韓国料理のメニュー別TI値 2020年3-6月/2021年3-6月(京浜+東海+近畿)
※TI値:1,000食卓あたりの出現回数(回)
※2021年3-6月の夕食のTI値が1以上のメニューを抜粋
※前年比 110%以上を黄色で表示
コロナ禍1年目と2年目の動向を確認するため、2020年3-6月と2021年3-6月のTI値を比較しています。昼食の内食率は、2020年の方が大きく、1回目の緊急事態宣言の発令に加えて、小中高の休校の影響もあると考えられます。一方、夕食の内食率は、2020年と2021年でほぼ同水準となっています
韓国料理のTI値に着目すると、キムチ以外のTI値は規模こそ限られるものの、調理や食事の時間を確保しやすい夕食を中心に2021年に増加する傾向が見て取れます。なかでも、「チゲ鍋・キムチ鍋」「チャプチェ」は、昼食・夕食ともに、前年比120〜130%程度と大きく増加しており、韓国料理の人気が高まっているようです。
韓国料理の素の販売動向
前出のキッチンダイアリーでは、調理に限らず、持ち帰りや宅配を含む食卓の動向を見ました。次に、調理に焦点を当てて、全国約6,000店から収集した、インテージ小売店パネル調査「SRI+」より、韓国料理の素として、「キムチ鍋」「スンドゥブチゲ」「トッポギ」の素について、販売金額の推移を確認してみました。
▼韓国料理の素の販売金額 2019年〜2021年(各年3-6月・全国)
※弊社で聴取している専用料理の素のうち、韓国料理のものを抜粋
韓国料理の定番となるキムチ鍋は、2020年に前年比129%と大きく増加した反動により2021年に減少したものの、2019年の水準を上回っています。また、スンドゥブチゲやトッポギは、2020年・2021年と2年連続で増加しています。
韓国料理と比較するため、専用料理の素のうち、2021年3-6月の販売金額上位3位である、「麻婆豆腐」「回鍋肉」「酢豚」の素について、販売金額の推移を見てみましょう。
▼専用料理の素の上位3位の販売金額 2019年〜2021年(各年3-6月・全国)
※弊社で聴取している専用料理の素のうち、2021年3-6月の販売金額上位3位を抜粋
麻婆豆腐、回鍋肉、酢豚のすべてが2021年に反動で減少し、2020年の水準を下回っていることから、韓国料理の人気の高さが垣間見えます。
韓国料理の素の性年代別の消費動向
それでは最後に、約5万人の購買行動を集めたインテージ消費者パネル「SCI」より、韓国料理の性年代別の購入金額を確認します。前出の「SRI+」と同様に、「キムチ鍋」「スンドゥブチゲ」「トッポギ」の素を、韓国料理の素としています。
▼韓国料理の素の性年代別購入金額・購入率 2019年〜2021年(各年3-6月・全国)
※弊社で聴取している専用料理の素のうち、韓国料理のものを抜粋
購入金額は、購入者1人当り金額、購入率は、聴取モニターのうち購入者の比率をみるものです。性年代トータルでは、購入金額がほぼ横ばいで推移する一方で、購入率が緩やかに増加してきています。
性年代別では、購入率の高い女性30-49才と女性50-69才が増加を続けているほか、2021年には男性15-29才と女性15-29才の購入率が前年比で120〜130%ほどと大きく増加していることが分かります。
韓国料理の人気が高まっている要因として、前述の通り、外出自粛により、においをそれほど気にしなくてもよくなったことや、内食が続く中で食事に変化をつけようとしていることが挙げられます。加えて、韓国料理の素の購入が若年層に広がりを見せていることから、韓流ブームも人気の背景にあると推察されます。
近年は、動画配信サービスでの韓国ドラマのヒット作品、映画でも国際的な賞の受賞作品が出たほか、テレビ番組などで取り上げられK-POPの人気も高まるなど、韓流ブームが再び注目を集めています。
これらの韓国文化には、中高年の女性だけではなく、若者の中にもファンも少なくなく、幅広い世代で韓国料理にも関心が高まった結果として、消費も活性化していると考えられます。
韓流ブームが高まったのは、外出自粛により、家でも楽しめるドラマ・映画・音楽などのコンテンツが人気となったことも影響していると言われています。韓流ブームにより韓国料理の人気が続くのか、もしくは、また別の文化の人気の高まりによって、食のトレンドも変化していくのか、今後の動向に注目してきたいと思います。
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