(YUIME株式会社 取締役 江城 嘉一)
今回は私たちの産地間連携の人材支援サービスが日本各地でどのように活用され、課題解決に役立っているのか、具体的な事例を通じて紹介しましょう。
産地間連携の人材支援サービスが始まったきっかけ
沖縄のサトウキビ農場でのYUIMEの実績を知って、ご連絡をいただいたのが、北海道余市町で、カナダ最大規模のブルーベリー栽培業者との合弁会社「アイケイファーム余市」を運営する稲畑産業さんです。
(残雪を抱く山々に囲まれた余市では、さくらんぼやリンゴ、ブドウなど果樹生産が盛ん)
当時(2017年)、YUIMEの農業人材の支援先は沖縄だけでした。サトウキビの収穫は冬から春先にかけて、台風シーズンの夏は農閑期になります。そんなところへ「御社が関わるサトウキビは冬が中心の仕事。私たちのブルーベリーは夏が本番。条件が合うのでお互いに連携してみませんか?」とご提案いただいたのです。
夏は北海道、冬は沖縄という、季節に応じた産地間連携サービスは、今でこそ当たり前ですが、稲畑産業さんは、そのきっかけを作ってくださった会社なのです。
大規模化の課題〜人材確保
夏が短い北海道は、人材の確保が難しく、なかなか人手が集まりません。稲畑産業さんでは、大規模化にあたって、何よりも人材確保が喫緊の課題となっていたのです。
アイケイファーム余市へ人材支援を行うようになって3年目にはトラクターを操縦できる大型免許を取得したYUIMEスタッフが2人になったことで、農作業が格段にはかどるようになり、とても感謝されています。
同社では、ブルーベリー以外にも、かぼちゃ、ニンニクなどと栽培作物を広げることが可能になりました。私たちのスタッフも、作物が増えるたびに必要な技術・経験を習得し、レベルアップしています。
(稲畑産業では、ブルーベリー以外にもかぼちゃなど栽培品目を拡大)
短期派遣では難しいけれど…
こういったことが可能になるのも、経験豊かな人材を継続的に確保できるからです。1シーズン限りでサヨナラしてしまうアルバイトや短期の派遣サービスでは、長期的な経営計画を立てるのもままならないものです。
今では、非常に良い信頼関係を築いている稲畑産業さんですが、当初、外国人材の活用には二の足を踏んでいらっしゃいました。
しかし、YUIMEが人材支援サービスを提供している他の農場で働く外国人材の勤勉な活躍ぶりを見てから一変。「ぜひ外国人を」とリクエストされるようになりました。技能実習を修了したのち、特定技能1号の在留資格を獲得した経験豊かな外国人が農作業に携わっています。
「求めていたものが沖縄から来るとは思わなかった」
「派遣で農業はできない」。それが、北海道豊頃町で主にダイコンを栽培する「北海道グリーンパートナー」の高田清俊社長のお考えです。
要は「来シーズンも来るかどうかわからない人たちで農場は回せない」ということ。……とはいえ人材は確実に不足しています。やむをえず派遣会社を使ってらっしゃいました。
(北海道らしい、どこまでも続く広大なダイコン畑)
そんなときに出会ったのがYUIMEです。私は最初のプレゼンテーションで、沖縄での実績や、リーダーの育成、支援体制の維持などについて、熱弁をふるいました。30分ほどの間、黙って私の話を聞いていた高田社長は「まさか求めていたものが沖縄から来るとは思わなかった」とポツリ。そこからお付き合いが始まりました。
高田社長は常々、「YUIMEには派遣会社の枠にはおさまりきらない特別なものを感じる」と認めてくださいます。たとえば外国人材の活用について、「技能実習生を農園が直接雇用するのはハードルが高く、仕事に慣れるまで時間がかかってしまう」と消極的な考えをお持ちでした。
しかし、YUIMEの特定技能1号の外国人については、すでに日本で農業を3年経験し、基本的な日本語能力も備わっていますから、「もはや海外の人ではなく、日本の人として働いてもらえる」と高田社長は話しています。
(派遣先の社員とYUIMEのスタッフが共同して働くようす)
産地間連携で人材も育てよう!
「産地間連携をすることで、ダイコン栽培のプロが育てられるんじゃないか!」。高田社長は、北海道から遠く離れた産地同士がタッグを組むことで、1年を通じて消費者に作物を提供するプロジェクトを発案、実際に鹿児島のダイコン農家さんをご紹介くださいました。
このおかげで、冬以外の7か月を鹿児島で、夏場には北海道でと、YUIMEの外国人スタッフもダイコン栽培について年間を通じて習熟することができます。北海道グリーンパートナーさんにとってもダイコン栽培に慣れた人材を繁忙期に雇用できるわけです。
地元の派遣会社との違いは?
帯広市の「和田農園」は、北海道に入植して100年を超える名門農家で、ナガイモ、バレイショ、ゴボウなどを栽培しています。
和田政司社長によると、以前は地元の派遣会社に依頼して、人材を確保していたそうです。ところが、YUIMEのサービスを利用し始めてビックリしました。従来の派遣会社の場合、農園にやってくるのは、派遣スタッフだけでしたが、YUIMEでは、社員もやって来て一緒に農作業をするのが一番の違いだと言います。
そのぶん、仕事の内容がスムーズに伝わりますし、栽培計画や人材育成計画も、YUIMEと一緒に考えていくことができるわけです。
(北海道グリーンパートナーの選果場)
派遣人材も高齢化する
和田農園さんがYUIMEの人材支援サービスに切り替えた理由は、もうひとつあります。地域の派遣人材に頼っていると高齢化が進んでそのうち立ち行かなくなるからです。
「YUIMEのスタッフは若くて体力があり、仕事を覚えるのが早いので頼もしい。ウチの農園に古くからいる社員も、YUIMEから来てくださるスタッフは、一緒に働いていて仕事がしやすい、と喜んでいます」と和田社長はおっしゃっています。
ここでは、北海道の3つの農業法人と、私たちYUIMEの付き合いを中心に紹介しました。YUIMEの農業人材支援サービスは、沖縄と北海道の産地間連携を起点に、今は近畿・四国・関東・九州と国内全域へ広がっています。
いずれの事例でも共通するのは、仕事を通じて互いに成長していけるパートナーとしての関係を農家さんとの間に築く努力をしていること。長期にわたって人材支援サービスを継続できる原点はそこにあります。
次回は、視点を働き手の側に移し、農の現場に生きがいを見出した“農業女子”の活躍に焦点を当てる予定です。お楽しみに!(聞き書き:佐々木聖)
シリーズ『「人材支援」が結ぶ 経営と就農の新しい道』のコラムはこちら
YUIME(ゆいめ)は、農業の人材派遣・農作業受託を中心に第一次産業をサポートする企業で、産地間連携を基軸に作られた農業人材支援体制、サービスを提供しています。私たちは、全国の農家・事業者の必要な時に、必要なだけの労働力を支援します。また、登録支援機関として外国籍人材を受入れる企業が行うべき義務的支援を受入企業に代わり行うことも可能です。労働力不足でお困りの方は、コチラよりお気軽にお問い合わせください。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
公開日