休む間もなくやってくる来年度の作付け計画
収穫が終わってひと段落、とならないのが農業経営の難しいところです。今年の作業をまとめ、収支を計算し、圃場の賃借などの清算が終わって、やっと1シーズンが終わります。でも、これでも終わらないのが困ったところです。休む間もなく、来年度の作付け計画が待っています。
作付けは、例年同じ場所で同じ品種というやり方もありますが、前回お伝えしたようなデータ駆動型農業をうまく使っていくと、「この圃場とこの品種の組み合わせでよいのか」とか、「生産力が落ちている圃場を品種変更でどうにかしたい」など、いろいろな対応策が見えてきます。これらを実現させるために、作付け計画が大変重要になってきます。
小学校の席替えなら、30席ぐらいをシャッフルするだけなので何の苦労もありません。しかし、農家の数が減り、ひとり当たりの栽培面積が増えている現在の農業では、たくさんの圃場を抱えているため、頭の中だけで作付け計画を作成することができません。
一昔前なら、白地図を広げて、まず管理する圃場に印をつけ、何が良いかを考えながら色鉛筆を駆使して作付け計画を作成していました。新しい品種の導入や転作などの情報を加える場合は、色鉛筆の色の数を増やして書き入れていました。昨年の資料を紙の地図から読み取り、今年の地図に載せ替えるこれらの作業は、大変な労力です。
そこで、スマート農業の第1歩として、こうした場面で活用できるアプリケーションが必要になります。
営農管理システム Z-GIS を使った作付け計画
全農が普及を進めている地図とExcelデータを紐づけた営農管理システム Z-GISは、今年の作付けを地図に表示して、新しい品種を入れ替えていく作業がとても楽です。また、Excelの関数を使って新旧の圃場の品種ごとの栽培面積を、自動で計算することもできます。
今年栽培したい品種の目標面積を先に決めて、圃場の場所を確認し調整しながら作付け計画を作成することができます。
過去のデータから、収量の少ない圃場をピックアップして、品種だけでなく転作など作物を変えることも検討できます。
生産者自らの経験則や考え方を加えた作付け計画
Z-GISは、すべてが自動ではなく、生産者の経験則や考え方などを合わせながら、作付け計画を作ることが可能なので、すべてが機械任せにならず、自分の考えを加えた農業生産がおこなえます。
「データ駆動型農業」の時代とはいっても、最近まで農家独自の考え方(親からの伝承なども含む)や地域の慣例に沿っておこなってきたことを急に変えるのは得策ではありません。少しアナログな一面を残しつつ自分の考えを加えることが必要なのです。またこれらは、急激な変化に対応できにくい年代の方々にも受け入れていただけると考えます。
私の知り合いの若手農家に、パズルが好きで作付け計画が好きという方がいます。圃場を見ながら、埋めていく作業は、細かい作業が好きな人間にはたまらないと言います。
それでも、手作業でおこなう白地図を使った例年の作付け計画は大変な作業です。しかし、彼と営農管理システム Z-GISが出会ったことで少し変わりました。昨年の作付けをZ-GISで地図に表示し、来年の作付け計画を作るのはパズルのようで楽しいと言っています。
筆ポリゴンで地域の営農状態を把握し、地域を守る
この若手農家は、Z-GISを手に入れたことで、地域農業についても考え始めました。農水省の作成した筆ポリゴンの地域情報を手に入れ、Z-GISに反映し、地域の営農状態を把握することを始めたのです。離農による休耕田を作らないよう、地域の経営者の年齢を加えた圃場ポリゴン情報を作り、自分の経営面積を考慮し、次世代の経営を考えています。
彼は言います。「地域の営農者の中で自分が一番の若手です。そのため、地域を長い間守っていけます。自分の生まれ育った農業地帯を守るため何かできないかと思い、いろいろと試しています。」
ちなみに、筆ポリゴンとは、農林水産省が実施する耕地面積調査等の母集団情報として、全国の土地を隙間なく200メートル四方(北海道は400メートル四方)の区画に区分し、そのうち耕地が存在する約290万区画について人工衛星画像等をもとに筆ごとの形状に沿って作成した農地の区画情報です。
この情報は誰でも利用でき農林水産省のホームページ(https://www.maff.go.jp/j/tokei/porigon/index.html)からオープンデータとしてSHPファイルで提供されており、いろいろな営農管理システムにも取り入れ始められています。
ただし、筆ポリゴンはSHPファイルのため、一般の方が閲覧し使用するためには、専用のソフトが必要になります。全農では、筆ポリゴンをZ-GISで読み込めるExcel形式に変換しました。配布も無料でおこなっていますので、誰でも活用ができるようになっています。
地図と連携した営農管理システムの活用
筆ポリゴンを使った面白い取り組みをふたつご紹介します。
筆ポリゴンには、圃場の個々情報は含まれておらず、圃場の場所と形だけの情報です。ただし、田畑の情報は含まれています。JAや農業経営者が、自分の地域の筆ポリゴン情報を手に入れ、田んぼだけ、畑だけの情報にし、ここから自分たちの管理したい圃場だけをピックアップし管理表のベースとして役立てることがおこなわれています。
また、航空写真の地図上から、簡単に判断できる茶畑などの情報を集約し、JAで活用しようという取り組みも始まっています。
農家の数が減り、ひとり当たりの栽培面積が増えている昨今、今までのように白地図から作付け計画をおこなうことは難しくなってきました。スマート農業の第1歩、地図と連携した営農管理システムを活用し、コンピュータの画面を見ながら、さらに前年のデータを参考にしながら、作付け計画を立てられるよう準備をしてはいかがでしょう。
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