はじめまして。これから5回にわたり農産物のマーケティングに関するコラム「国産農産物のマーケティングによる消費拡大」を連載させていただくことになりました、株式会社アップクオリティ代表取締役の泉川と申します。
(株)アップクオリティは2003年に設立、今年で19期目を迎える会社で、国産農産物のマーケティング専門の会社です。マーケティングを通じて農産物の消費拡大を行っております。
全国の農業者や協同組合の皆さまから、経済活動に欠かせないマーケティング活動を請負ってきました。生産者や農業団体、市場や仲卸、量販店や飲食店などの取引先や関係者は、全国で1500社を超えます。
商品特性やブランドを生かしたマーケティング
産地の品目、品種ごとにマーケティング戦略を立てブランド化し、商品特性やブランドを最大限に活かし販売の分野で活動しています。出荷者など産地からの依頼を受け、まずは販売戦略を立て、大消費地といわれる首都圏や近畿圏で販売活動を行います。実需者や消費者との接点を活用しながらマーケティングの中長期プランを企画し運用します。
事業の一つに、設立当初から取組んでおりますスーパーマーケットでの消費宣伝販売があり、実績はこれまで20万件を超えます。マネキンさんと呼ばれるスタッフを教育し店頭で農産物の試食販売などを実施します。そして店舗担当者や消費者との売場でのコミュニュケーションによって収集した情報をもとに需要予測をし、翌シーズン以降のマーケティングプランも企画し運用します。
また、農産物のブランド化やプロモーションも行っています。産地や品種の特徴に合わせてロゴやキャラクター、それらを用いた販促資材などをデザインし量販店や飲食店でプロモーションを展開します。これらの活動を通じて秋田、山形、山梨、静岡、長崎、沖縄など各地の農産物のブランディングを行っています。
バスでつながる都市と産地の新しい関係
そして近年は、高速バスの空きトランクを活用した貨客混載に新規事業として取り組み、農産物のマーケティングに欠かせない、新しい地域間物流を構築しています。
高速バス会社と協力し開発した路線は全国に広がり、2021年8月時点でバス会社25社と契約、全国55地域67路線まで拡大しています。さらに、専用の保冷ボックス「あいのりボックス」を利用し、常温・冷蔵・冷凍の同時一括配送ができるようになりました。
この取り組みは、CO2排出量を削減する新しい物流として、国土交通省からも認定されました。サステナブルな新しい物流として、全国に拡大していきます。
なお、こちらの貨客混載事業は「バスあいのり」として、三菱地所や農林中央金庫、エコッツエリア協会、JA全中の4者で構成される、大丸有フードイノベーション事業の一環として事業化し、当社が運営してきました。
全国的な路線の構築と合わせて、運用はwebシステムにて行い、多くの生産者や出荷者の皆さんが利用できるよう、事業の強化を進めてきました。
引き続き、全国規模の貨客混載の物流網の基盤を作っていきます。このお話については、連載の後半にしたいと思います。
マーケットイン思考による生産振興
販売に向けてマーケティングを進めていくにあたり、ポイントは、マーケットイン思考による生産振興だと思っています。
日本には、産地の風土や気候から成る、多くの魅力的な農産物があり、市場流通や宅配事業などの発展により、都市に住む私たち消費者は毎日美味しい農産物を食べられる環境にあります。しかし、今後は消費者の少子高齢化だけでなく、生産者の高齢化により、生産高と消費量の両方が減少していきます。
変化していく国内のマーケットにおいて、農産物の販売を継続していくには、産地や生産者の将来像に合わせた経済活動、マーケティング戦略の創意工夫が必要だと考えています。最近では中国や台湾のTPP参加意思表明もあり今後協議がなされることと思いますが、輸出して外貨を稼ぐことも一つの販売手段であると思われます。
そして、国内外でのこれからの経済活動は、チャンスを手にした時に、短期的なものではなく、中長期の継続的な戦略によって運用できるかが重要になってくると思っています。
農産物の特性にあわせて、多く、高く、継続的に売る!
当社は、全国の生産者・農協・全農・民間の農業法人などの出荷団体や、地方自治体から、農産物の品目や品種によってマーケティングの依頼を受け、それぞれの特性に合わせて、多く売る、高く売る、そしてなにより継続的に売る戦略を提案し、マーケティング活動を担ってきました。
農産物をブランド化し、ブランドを活用した販売戦略を立てて、販売や消費拡大につながる取組みを行っています。
活動の中で特に大切にしているポイントは、実需者や消費者の需要を常にキャッチし、産地へフィードバックすることです。そしてマーケットイン思考による生産振興につなげていくことです。
国産の農産物は、産地特有の風土や気候から成るため、ほとんどがプロダクトアウト商品であると言ってよいと思います。それ自体は問題がなく、その中で消費トレンドをキャッチして売りやすい品種を取り入れ切り替えや売り方の工夫など、実現できるマーケットイン思考の生産と販売が生産者や出荷者の強みになっていくと考えています。
生産流通拡大の事例をご紹介
今後の私のコラムを通じて、これまで18年間に渡って取り組んできた事例を元に皆さまの今後の経済活動に少しでもプラスになるようなお話ができれば幸いです。
次回は長崎県のいちごの生産流通拡大に関する事例の紹介をさせていただきます。8年間に渡って「長崎県産ゆめのかのブランド化及び消費拡大事業」としてマーケティングを担当させていただいております。
全農長崎県本部や地域農協、長崎県いちご部会の皆さまと協力して取組み、近畿圏や首都圏を主戦場としたマーケティングを行ってきました。長崎県下の系統いちごの出荷高は80億円程度から、2018年度には100億円を突破しました。販売戦略において欠かせないターゲティングや販売の創意工夫について、次回、具体的にお話していきます。
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