(テラスマイル株式会社 代表取締役 生駒祐一)
前回の「自治体におけるスマート農業のデータ活用」では、公開数日で多くの関心を頂き、ありがとうございました。今回は私たちのミッションの一つであるJAグループのデータ活用について、この2年間で変わってきたことご紹介します。
全国のJA営農指導員を志す皆様、今年から始まる「データ活用オンデマンド講座」を是非受講いただき、良い未来を創っていきましょう。詳しくはJA全中との取り組みでご紹介します。
私がJAアクセラレータプログラムに応募した理由
2014年に起業し、農業ICTやスマート農業と呼ばれるプロジェクトを通じて、多くのJAの方々と交流してきました。その中で、「営農指導員として、データを活用した営農指導・担い手育成を行いたいが、作成と学習する時間に限界がある」という相談を、多くのJAの営農に関わる方から頂きました。
そこで、“JA営農指導員が学ぶ「データ活用」の講座開設”をテーマの一つに掲げて応募し、今に至ります。
JA営農指導員が抱えるデータ活用の課題
・ センサーデータのサイズが大きくて、パソコンではエクセルが固まってしまう。
・ データを加工する時間がなかなか取れない。
・ 整形が大変で、特定の人の情報しか分析ができない。
・ ファイルが壊れてしまうと、精神的なダメージが大きい。
・ せっかく加工・整形したグラフも、生産者が価値を感じなければ意味がない。
・ 農業者の会話についていけなくなるのが、営農指導員として一番怖い。
・ JAとして、価値のあるデータを生産者に届けたい。必要とされる存在でありたい。
こういった課題を解決するために開発されたのが、RightARMです。2021年からJAグループ(農林中金イノベーションファンド)は弊社の株主にもなっています。
私たちが提供するデジタル基盤RightARM(ライトアーム=右腕)によって、データを活用した営農指導・担い手育成が行われ、生産者からより必要とされる未来を目指しています。産地戦略をリードするJA営農指導員が生まれていくことを願っています。
JAグループ宮崎のデータ活用戦略
「データ活用を経済連に聞いてみよう!」という想いを持ち、数年前から現場へのデータ活用の検討を続けているのが、JA宮崎経済連です。最新の中期計画でも経済連の“出向く営農支援”の必要性を掲げ、取り組んでいます。
県内に最先端の実証農場を建てるだけでなく、施設園芸・露地野菜について新技術が導入される中、データを活用する流れを積極的に取り込んでいます。
「JAグループ宮崎の経済事業としてデータを活用し、多様性に富んだ仕組みを作っていきたい。」「みどりの食料システム戦略など、環境変化に対応した、宮崎農業のあるべき姿を構築していきたい」
JAグループ宮崎は、農業基盤を維持し、ひいては組合の所得向上につながるデータの活用に取り組んでいきます。
JA日向 門川町高糖度トマト生産組合のデータ活用
門川町高糖度トマト生産組合(組合長 新門剛)は、生産そして販売の双方でデータを活用し、産地強化を行ってきました。
ハウス環境のセンシングでは神港テクノス(株)の「菜援」と(株)誠和のプロファインダークラウドを、生産管理は(株)ダンクソフト 高知スマートオフィスが改良するkintoneを、出荷場には糖度別にトマトを選果する糖度選別ラインを導入し、そういった仕組みと、「販売会議」や「圃場巡回(技術勉強会)」といった運用を組み合わせた素晴らしい産地だと思います。
組合員の反別の売上(周年栽培)は800万円/10aを維持しており、新設したハウスの返済と子育て費用を含めたライフプランも描けるようになっています。
今年、弊社と取り組んでいるのが「出荷予測アルゴリズムの進化」と、「産地指針のデジタル化」です。販売パートナー(流通・小売企業)と、予測量を共有し、特売や試食などのプロモーション戦略をデータで共有できる姿を実現させていきます。年内には取り組みの詳細をプレスリリースする予定です。ぜひ応援してください。
「JAアクセラレータプログラム」を経て実現したJA全中との取り組み
アグベンチャーラボのJAアクセラレータプログラムと、指名型プログラム「Plant&Grow」を経て、テラスマイルは、今年からJA全中が企画運営するプログラムでスマート農業研修会を実施することとなりました。JAグループがベンチャー企業と連携する一つの事例となっています。
2021年度の営農指導員資格認証(全中会長認証)において、「資格取得研修として認定する全国域で実施する研修(分野:営農企画)」として開催し、JAの営農指導員・TAC、営農・経済事業におけるデータ活用に取り組むJA・連合会等の職員などの皆様に、弊社の経験値をオンデマンド配信でお伝えいたします。
詳しくは、JA・中央会までご連絡ください。県市町村の方からのお問合せも受け付けていただけるとのことです。
ご連絡先:JA全中 営農・くらし支援部 営農担い手支援課 TEL03-6665-6200 / FAX:03-3217-5073 / E-mail:eino.s@zenchu-ja.or.jp |
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