(気象予報士 寺本卓也)
こんにちは。農てんき予報士の寺本です。11月というと、秋も深まり冷たい冬の空気も感じ始める季節ですね。
私にとっては、冬に向かって、いよいよ忙しくなり始めるのが11月というイメージです。というのも、前職の商社時代では、冬野菜など商品の切り替えや、取引先へ冬メニューの営業など、各部署が年末の繁忙期に向けてピリピリとした緊張感で仕事に取り組むような時期だったからです。
今回は、そんな秋と冬の中間であるこの時期にまつわる農てんきな情報を、各地の取材とともに楽しくお伝えしていきます。是非最後までお付き合いください。
新米の季節、福島のおいしいお米できました
秋と言えば、新米の季節です。私は10月4日、福島県大玉村の生産法人「あだたらドリームアグリ」さんを取材しました。
こちらでは、福島県のオリジナル品種で粒が大きく食べごたえがあり、冷めてもおいしいと定評のある「天のつぶ」のほかに、「コシヒカリ」を主力品種として栽培しています。
さらに今年からは、県内でも限られた生産者しか作れない、県のトップブランド米「福、笑い」も生産しています。私はあだたらドリームアグリさんで作られるおいしいお米を好きになり、毎月購入している程です。
収穫前に台風16号接近かも
実は、今回の取材は9月末にする予定でしたが、1週間ずらしました。というのも、台風16号が本州に近づいてきており、県内も影響を受けるかもしれなかったからです。その後台風16号は、当初の予報より東の海上を北東に進んだため、県内への大きな被害はまぬがれました。
稲穂に強風の影響
田んぼをよく見ると、台風による強風の影響で稲穂が所々で倒れていました。とはいえ、収穫時期を迎えた稲は強くたくましいため、ちょっとの風では茎が折れる事はありません。
ただ、気になったのは所々で黒くなっている穂でした。これは、8月の開花時期にも強風の日が多く、受粉に失敗してしまったからだという事です。
人生初、コンバインで稲刈り体験
私はコンバインやトラクターの免許はありませんが、今回特別に乗車し稲刈り体験をさせて頂きました。とはいえ、法律違反ではありません。私有地という事で運転する事ができたのです。ですから、何卒訴えるのはおやめください。と、冗談はさておき。
椅子は座り心地がよく、クーラーも効いて車内は快適な環境です。ハンドル操作などもとても簡単でゆっくりではありますが初心者の私でもスムーズに稲刈りができました。最新の農業機械は素晴らしい性能です。
おいしさの秘訣は「雪解け水」
今年のお米の生育状況を取材しました。
「梅雨時期の雨量が少なかったり、8月に雨量が多くなったりと、稲の生育に少し遅れが出ました。また風が強かったので黒い穂がちらほら出ました。ただ、今年は例年に比べ雪解け水が多かったので、水には困りませんでしたね。水の管理を上手に行ったことで、平年並みの豊作になりそうです。」
山に近いこちらの田園では、出水期の雨より、冬の雪がどれだけ積もったかで、豊作になるかが決まります。さらに雪解け水にはミネラルがたっぷり含まれていて、おいしいお米に育つという仕組みです。
環境にやさしい農業とは?
続いて福島県で、「環境にやさしい農業」に取り組み、今の時期、秋野菜の収穫真最中の農家さんがいるという噂を聞き、私は10月中旬、桑折町にある感謝農園平井さんを訪れました。一体どんなところなのでしょうか?
SDGs(持続可能)な農家
こちらでは、ほとんど「化学肥料」、「化成肥料」を使用しない野菜作りをしています。感謝農園平井さんでは、日々増えていく耕作放棄地を積極的に引き取り、雑草がボーボーに生えている状態から、腐らせ「堆肥」にして野菜を植えるという循環型の農業をしているとの事でした。
スマート農業で天気を利用
感謝農園平井さんでは、至る所に最先端の機械が設置されていました。気象予報士にはなじみ深い風向風速計のほか、カメラなどが設置されており、天気のデータを随時収集することで栽培に生かしています。「勘や経験」の時代から「数値」にもとづいた生産をする事で経営を安定させているのですね。
害虫を寄せ付けない「防蛾灯」
さらに畑を歩くとなにやら怪しい蛍光灯のようなものを発見しました。これは、「防蛾灯」というもので、黄色い特殊な光を発し、野菜や果樹を傷める原因となる害虫を寄せ付けない効果があります。
秋の天災「霜」の恐怖
「それでもやはり、天災は怖い。特にこれからの時期は霜。」と話すのは、代表取締役平井國雄さん。
こちらでは現在柿が収穫時期を迎えていますが、冷え込みが強まり霜の降りるような事があると「染み枯れ」という現象が発生します。見た目からは分からず、中身が傷んでしまう厄介な被害が起きてしまいます。また、野菜なども腐ってしまいます。農家にとって霜は静かなる恐怖です。
霜の定義

では、ここで霜について簡単にお話します。霜には実は定義があります。
気象庁は霜について発生する季節で区別をしています。秋の季節外れに早い時期に発生する霜を早霜(はやじも)、晩春から初夏にかけて発生する場合を遅霜(おそじも)としています。
ですから、紅葉が見頃を迎えているような今の時期に急激に冷え込み霜が降りると、それは早霜となります。
天気図で分かる霜のサイン
霜はどんな時に起きるのでしょうか?天気図を見ると、移動性の大きな高気圧がやってくるときに霜が発生しやすいです。
天気予報で気象予報士が「放射冷却」と連呼するときがあると思いますが、そのときには霜の危険のサインです。おおよそ最低気温2℃程度の予想がされると霜注意報が発表される目安です。
最新の1か月予報
最後にこの先はどんな天気になるか1か月予報を見ていきましょう。10月28日現在の情報を見ると、この先は寒気の影響を受けにくく各地で暖かい空気に覆われやすい予報となっています。期間の前半は北日本で気温がかなり高くなる傾向です。
また東日本も気温が高めの日が多くなるかもしれません。このため急激に冷え込んで、一気に全国で初霜が降りるような事は今の所なさそうです。
冷え込みが強まってくるのは来月中旬頃からを予想していますが、予報は変わりやすいため最新の気象情報で確認するようお願いします。
シリーズ『農てんき予報〜農業に役立つ天気の情報〜』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。
公開日