(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 住吉雄大)
高齢者を中心に人気が高まる「こめ油」
こんにちは。インテージの住吉です。
2021年10月より全国で緊急事態宣言が解除され、日常を取り戻しつつあるようにも感じますが、私は在宅勤務中心の生活を続けており出社も週に1-2回程度。そんな生活では運動不足にも陥りがちで、ベルトが前よりもきつくなったと感じます。
また、体力が落ちてしまったのか、駅の階段で息切れをするようになってしまいました。健康診断でも、中性脂肪の数値が気になる今日この頃です。それでも、ついつい揚げ物をがっつりと食べたいという気持ちを抑えることはできず、なんとか健康に気を付けたいと興味を持ったのが「こめ油」。
こめ油は、玄米を精米してできる米ぬかを原料とする食用油です。健康への効果に加えて、高温に強く劣化しにくいという特徴も支持されて、こめ油の市場規模は拡大を続けているようです。今回は、こめ油の人気の実態について調べてみました。
成長が続くこめ油市場
まずはインテージ小売店パネル「SRI+」より、食用油の市場規模推移を確認してみます。SRI+とは、全国約6,000店の小売店から収集した販売情報データを元に、市場規模を推計するものです。ここでは、食用油として、キャノーラ油・オリーブオイル・ごま油・こめ油に着目し、各年1-10月の推移を比較します。
▼食用油の市場規模の推移
キャノーラ油・オリーブオイル・ごま油の市場規模は、2020年にはコロナ禍の巣ごもり需要の高まりにより伸長したものの、2021年には反動により横ばいまたは減少に転じています。
そうした中、こめ油の市場規模は、規模こそ限られるものの、2021年1-10月で前年同期比138%の55億円と拡大を続け、2017年同期との比較では270%にまで達しているのです。
高齢者を中心に上昇する購入率
次に、インテージ消費者パネル「SCI」より、どのような人がこめ油を購入しているのかを見てみましょう。インテージSCIとは、全国15歳〜69歳の男女50,000人のモニターから、継続的に収集している日々の買い物データです。2017年から2021年にかけての、各年1-10月計の購入状況の推移を見ています。
▼年代別のこめ油の購入状況
購入金額は、購入者1人当り金額、購入率は、モニターのうち購入者の比率です。
どの年代でも、購入金額が増減を繰り返しながらほぼ横ばいで推移しているのに対し、購入率は上昇を続けており、2017年の2.7%から2021年の5.6%へと2倍を超えるまで増加。このことから、購入者数が増えたことが市場拡大の要因となっていると言えるでしょう。
年代別の比較では、年代が上がるほど購入率が高くなる傾向にあり、60代の高齢者の購入率は2021年1-10月では8.0%に達しています。
こめ油は、抗酸化作用があるとされるビタミンEや、悪玉コレステロールの吸収を抑える効果があるとされる植物ステロールなどの栄養素を豊富に含みます。加えて、玄米由来の成分であり、抗酸化作用があるとされる「γ(ガンマ)-オリザノール」も含んでいます。
そのため、アンチエイジングや糖尿病や高血圧といった病気の予防を目的として、とりわけ高齢者に人気となっているようです。
揚げ物で人気のこめ油
それでは、こめ油は、どんな料理に使用されているのでしょうか。
食用油の使用シーンは夕食が中心であることから、2人以上家族の主家事担当者1,260世帯を対象とするインテージ食卓日記調査「キッチンダイアリー」より、2021年1-10月の夕食でのこめ油のメニュー使用率ランキングを確認します。食用油計と比較して使用率が高いかを見るために、リフト値として、「(こめ油の使用率)÷(食用油計の使用率)」を計算しています。
▼こめ油のメニュー使用率ランキング(夕食) 2021年1-10月
こめ油・食用油計ともに、使用率1位は「肉と野菜の炒め物」、2位は「ソテー、炒め物(小さなおかず)」。リフト値より、使用率もほぼ同水準であることが見て取れます。
リフト値が1.5以上のメニューに着目すると、3位の「から揚げ・竜田揚げ(肉)」、4位の「豚カツ・ひれカツ」、6位の「天ぷら」、10位の「フライドポテト・ハッシュドポテト」と揚げ物が並んでいます。
ほかの食用油と同様に幅広く使用される中でも、こめ油には高温に強く劣化しにくいという特徴があることから、とりわけ揚げ物で使用されているようです。
コロナ禍2年目でも成長を続ける「こめ油」。こめ油の持つ健康価値や、揚げ物での使いやすさなどから、高齢者を中心に人気が高まっていることが分かりました。市場の拡大が今後も続き、キャノーラ油やオリーブオイル、ごま油のように定番の食用油となるまで成長していくのか、今後の動向に注目してきたいと思います。
シリーズ『データに基づく食生活のトレンド分析』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日