(気象予報士 寺本卓也)
皆さんこんにちは。えっ、もう2月なの?早すぎやしないかと、時の流れの速さに驚く「農てんき予報士の寺本卓也」です。
今回も農業と天気にまつわる話や最新の長期予報、少し雑談などもまじえて楽しくお伝えしていきます。ぜひ最後までお付き合い下さい。
2014年2月のドカ雪
2月の記憶で真っ先に思い出すのは、2014年のドカ雪です。私は当時東京の商社で夜勤をしていました。2014年2月8日の午後9時、いつも通りの時間に起きた私は、窓から見える景色が銀世界に変わっている事に衝撃を受けました。
北国の方からは、怒られてしまうかもしれませんが、東京の積雪27センチというのはとてつもない大雪です。当時25センチ以上の積雪は1969年以来45年ぶりというとても珍しい事でした。
台風に匹敵!?積雪で大パニック
積雪の影響により、もちろん物流は大パニックでした。雪によるドライバーのスリップ事故、渋滞が相次ぎ、お客様に野菜を納品できない事態が多発しました。電車も次々に運休し、当然のごとく一日中電話は鳴り響き、全社員で対応にあたりました。
関東での大雪は、台風に匹敵する程の大災害。今では考えられませんが、日勤の社員の何人かは会社に泊まり、翌日もぶっ続けで働くような状況でした。
雪の降るパターンは2つ
では、一体雪が降る時というのはどんな時なのでしょうか?
これは大まかに2つのパターンに分けられます。日本海側で降る雪と、太平洋側で降る雪の2パターンです。
①日本海側の雪の原因は「冬型の気圧配置」、②太平洋側(東京)の雪は「南岸低気圧」という別キャラだと思って下さい。
2月は南岸低気圧が来やすい
なんでこんな話をするかというと、2月が東京など太平洋側にとって雪の危険度が増すからです。冬型の気圧配置がだんだん弱まる2月頃になると、今まで日本付近に来れなかった南岸低気圧が、しめしめこれはチャンスだと狙って来るのです。
予報技術の限界?この天気図に注意
低気圧が太平洋側の南岸を沿うように進む低気圧を「南岸低気圧」と言います。2月にこの天気図となる場合は、太平洋側で雪の可能性を疑う必要があります。
この低気圧が厄介なのは、雨か雪で降るかが、最新の予報技術でもハッキリ分からない事です。もし皆さんが今月このような天気図をテレビで見かけるような事があれば、まず太平洋側で雪の可能性があると、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
火山噴火と冷夏
話は変わりますが、日本時間の1月15日午後1時頃、トンガの「フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ火山」が噴火しました。
火山噴火で思い出すのは、1993年「平成の米騒動」という方も多いのではないでしょうか。
1991年フィリピンのピナツボ火山が噴火した影響で、1993年の日本は大冷夏となりました。農林水産被害額は1兆350億円。令和元年東日本台風(台風19号)の被害額が約3400億円なので、約3倍の被害額です。「冷夏」は農家にとって大気象災害です。
それでは、火山と冷夏?一体どんな関係なのでしょうか。
日傘効果
火山噴火に伴う、地上の気温低下を「日傘効果」などと言います。イメージ図をご覧ください。
①火山の噴火で成層圏まで放出された亜硫酸ガス
②化学変化してできた小さな粒(エアロゾル)の雲が広がる
③太陽の光を遮るため、地上は暖まらず冷夏に
1993年の大冷夏は火山噴火に伴う「日傘効果」が原因でした。では同様にトンガの噴火で今年の日本は大冷夏となるのでしょうか?
冷夏にはならない見込み
研究者などの見解では、いまのところ、「世界的に冷夏となる可能性は低い」という見込みです。
なぜかと言うと、今回の噴火はピナツボの時と比べ、亜硫酸ガスの量が50分の1と少なく、気候の変化に大きな影響はないだろうと予想しています。それは、日傘効果の素となる物が少なく、太陽の光を遮るような雲はできないだろうという事です。とは言え今後の情報には注意が必要となりそうですね。
今年の春は「霜害」に注意か
それでは最新の長期予報はどんな傾向か見ていきましょう。
なんと、3月の平均気温は北日本で高い予想となっています。やったー、今年は春が早く来るじゃん!寒いの苦手だから暖かくなるのはうれぴー。と思う方は、おそらくこの記事を読んでいないでしょう。
3月が暖かいと、果樹などの開花が早まり「霜害」の危険性が高くなるからです。来月は最新の予報傾向を踏まえて「霜害」にたちむかう天気の見方をお話しようと思います。
郡山ブランド野菜
私は1月27日、福島県郡山市の鈴木農場を訪れました。こちらでは、「郡山ブランド野菜」という独自のブランド野菜を販売しています。
「郡山ブランド野菜」とは、味わい、栄養価、郡山の気候や土に合うなどの点から、300種類ほど栽培する中から吟味して1年に1度、たった一つだけ選び出された大変貴重な野菜です。現在14品種が郡山ブランド野菜として登録されています。
今回は、ブロッコリーとケールの良さを組み合わせた郡山ブランド野菜の一つ「冬花衣(ふゆはなごろも)」の収穫体験をさせて頂きました。
郡山は、福島の中でも会津の山に雪雲がブロックされる事で、あまり雪の降らない地域として有名です。雪があまり降らない郡山では、冬でも野菜が作れる事を証明しています。
農家インフルエンサー
インタビューを受けてくれたのは、4代目となる鈴木智哉さん27歳。
「どんなにおいしい野菜を作っても、それを多くの方に知ってもらわなければ意味がない。」と、旬の野菜の情報をインスタグラムで積極的に発信しています。「ここの野菜はおいしい」と、SNS上でさらに拡散され、現在は県内外の有名レストランもわざわざ買い付けに来るほど、ファンが増えているそうです。
面白いのは、実際現地に来たシェフの方々には、郡山ブランド野菜を好きなだけ使ってもらい、直売所のキッチンで試作してもらう事もあるのだとか。そんな自由で柔軟な発想で、新しい農業の形を模索している智哉さんはまさに「農家インフルエンサー」です。
「楽しく、稼げる農業」
鈴木農場では就農希望者や学生などの研修も行っています。全国でも、300種類と多種多様な野菜を栽培している農家は珍しいと、その栽培方法や経営ノウハウを学びに毎年多くの方が来られるのだそうです。
「農業は嫌な職業ではないんですよ。楽しく、そして稼げるとても魅力的な職業です。その事をこれからも発信していきたいですね。」智哉さんは笑顔でそうお話してくれました。
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