(CCCマーケティング総合研究所 深井 翔)
はじめまして。CCCマーケティング総研の深井です。CCCマーケティング総研は、社会や生活様式の変化、生活者の行動や意識の変化、世代や地域の特性把握、産業動向レポートの発信など、大学や研究機関とも、“生活者に一番近い存在のシンクタンク”としてさまざまな取り組みを行っています。
シリーズ『サクッと!わかる食のトレンドコラム』では、7000万人を超えるT会員の多種多様なTポイント提携先での購買データ、外食グルメサイトの口コミ・Twitter・TVメタデータなど、様々なデータを分析し、抑えておくべき食のトレンドをサクッとお伝えします。皆様の事業のヒントになれば幸いです。
冬といえば、鍋料理です。鍋はその土地の食材を使った郷土料理、余った食材を美味しく食べられる毎日の見方、調味料次第で色々な味を楽しめるといった多様な価値があります。
そんな鍋料理の最新トレンドをデータで追っていくとともに、Twitter・口コミ・TV番組を通じて、トレンドの「兆し」がどのようにスーパーマーケット等の流通に「伝播」していくのかについて、考察します。
そういったメディアで積極的にトレンドの「兆し」を見つけて、事業目線はもちろん、気になる鍋料理を是非ご自分で試してみても面白いかもしれません。
「鍋料理」って伸びているの??
そもそも鍋料理のカテゴリーの現状について見て行きます。
メディア別に見て行くと、12月時点ではコロナは収束傾向にあったとはいえ、鍋は複数人数で「囲む」「つつく」ものなので、外食チェーン店口コミやスーパー・ドラッグストア購買では伸び悩んでいる一方、外食オーナー店口コミ・Twitterでは伸長している結果です。
生活者の関心度は高いといえるため、ニーズに合った提案ができるかがポイントと言えそうです。
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「鍋料理」のトレンドランキングはコチラ!!
では早速、鍋料理のトレンドランキングを見てみましょう。
伸びていた外食オーナー店口コミ、Twitter、流通視点でのスーパー購買を軸にトレンドを眺めてみると、皆様も知っている鍋・おでんも散見する中、オハウ、沖縄おでん、せり鍋、プデチゲといった郷土料理がランクインしてます(赤枠)。
メディア・業態でかなりランキングが異なっている点も面白いですね。
仙台名物 「せり鍋」を時系列で追う
スーパー購買で4位だった「せり鍋」の時系列グラフを見てみます。
個人的にも、スーパーで見つけると、ちょっと高いけれど買ってしまう「せり」。根っこの独特な味わいがお酒に合います。
鍋料理は時系列でみると、季節性が出るメニューのため、外食オーナー店口コミ・Twitterのような出現の周期になります。せり鍋も同様ですが、スーパー購買では、21年度から出現しており、今期から伸長しているということがわかります。
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21年12月の鍋料理総合ランキングでさくっとトレンド把握
総合ランキングTOP3位を見ると、酸菜白肉鍋・オハウと、私には聞きなれない鍋料理がランクインしています。ちょっと紹介しますね。
酸菜白肉鍋(スワァンツァイ パイロウグゥオ)は、台湾を代表する発酵鍋です。「酸菜(サンサイ)」という酸っぱい白菜の漬け物を使い、うす切りの豚バラ肉と一緒に鍋で煮た鍋料理です。
また、オハウは、アイヌの伝統料理で、鹿、熊などの獣肉や魚、行者ニンニク、ユキザサなどの野草や野菜など、土地でとれる食材を鉄鍋で煮込んだ汁物です。
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見慣れないトレンド鍋料理の時系列をチェック!
酸菜白肉鍋(スワァンツァイ パイロウグゥオ)、オハウを、時系列グラフで見てみると、両メニューともスーパー購買での出現は見られません。伸長傾向にはありますが、まだまだニッチな郷土鍋料理といえます。
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ランキングに散見する「韓国系の鍋」
もう一度総合ランキングを見てみると、韓国鍋を想起するメニューが総合ランキングに複数ランクインしてます。
前述のメディア別・業態別のトレンドランキングでも、スンドゥブチゲやプデチゲといったメニューのランクインも確認できます。
なお、プデチゲは、朝鮮のチゲの一種。肉、野菜、豆腐などといった一般的なチゲの材料と共に、ソーセージまたはスパムに代表されるランチョンミート、インスタントラーメンといった保存食になる食材を辛味のスープで煮込んだ大衆的鍋料理(引用:ウィキペディア)です。
総合ランキングでは、キムチチゲ、キムチ鍋、チゲ味噌といった知名度の高い鍋料理がランクインしてます。
トレンドの視点から「キムチチゲ」をチェック!
スーパー購買では、寄せ鍋に近く金額PI値が高いキムチ鍋、伸びているキムチチゲ、という現状です。
そこで、「キムチチゲ」を時系列でみることで、トレンドの伝播具合をチェックします。
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外食オーナー店の口コミやTwitterではトレンドの兆しが見え、TV番組やWEBを通じてトレンドが広がっていき、スーパーマーケットなどの流通に伝播していくと弊社では認識してます。
前述のせり鍋はやっと流通に伝播している、酸菜白肉鍋(スワァンツァイ パイロウグゥオ)・オハウはまだトレンドの兆しの段階と推測できます。キムチチゲは、流通に伝播していると考えます。
サクッとわかる鍋のトレンド
おでん、しゃぶしゃぶ、鍋物、すき焼きと様々な鍋料理がある中で、やはり寒い時期に伸びてくるのが鍋料理です。トレンドが流通まで伝播すると、キムチチゲのように季節周期を想起させる出現傾向がでてきます。
地場の農産物を活かした郷土鍋料理を筆頭に、食材を簡単に食べられる「鍋」は、家族向けはもちろん、仕事で忙しい単身者の味方でもあります。
そんな鍋料理のトレンドを知ることで、食材流通のヒントになったら幸いです。
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