(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 田中航世)
急拡大する肉代替品の市場動向、人気の理由とは
こんにちは。インテージの田中です。
近年、「大豆ミート」と呼ばれる、大豆を原材料としてお肉のような味や食感を再現する食品を、目にすることが増えてきたように感じます。外食店のメニューで見かけることもありますし、スーパーマーケットの店頭で大豆ミートのチーズを見かけたときは、「豆腐でチーズが作れるのか」と驚きました。
大豆ミートは、肉代替品の一種です。大豆のほか、小麦、エンドウ豆などの植物性原材料で作られた肉代替品の市場が、急拡大しているようです。今回は、肉代替品の市場動向と併せて、購入者の意識から人気の理由について見ていきたいと思います。
肉代替品の市場動向
肉代替品の市場が伸びているかどうか、全国約6,000店舗の小売店データを集めたインテージ小売店パネル「SRI+」で確認します。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターを対象とする市場規模の推移は、以下の通りです。
▼肉代替品の市場規模の推移
2019年から2021年にかけて、毎年2倍以上の成長を続けており、2021年には2019年との比較では5倍以上の25億6,000万円にまで拡大しています。
続いて、肉代替品にはどういった商品があるのかを見てみましょう。2021年の肉代替品のカテゴリー金額構成比は、以下の通りです。
▼肉代替品のカテゴリー金額構成比(2021年)
最も構成比の大きい洋風食品は、「ハンバーグ」「ナゲット」などです。まぜご飯の素は「ガパオライス」、専用料理の素は「麻婆豆腐」、その他は「ひき肉」などで、さまざまな肉代替品の商品が販売されていることが分かります。
肉代替品購入者の特徴とは?
それでは、実際にどんな人が肉代替品を買っているのでしょうか。カテゴリー構成比の大きかった洋風食品について、肉代替品購入者の特徴を確認してみます。
全国15〜79歳の男女約52,500人のモニターから継続的に聴取しているインテージ消費者パネル「SCI」によると、洋風食品の購入者計と、そのうち肉代替品購入者の性年代別人数構成比は、以下の通りです。
▼洋風食品の購入者計と肉代替品購入者の性年代別人数構成比(2021年)
女性40〜60代で購入者計と比べて肉代替品購入者の構成比が大きく、49%とおよそ半数を占めています。
その一方、男性では、すべての年代で肉代替品購入者の構成比が購入者系のものを下回っていることから、性別や年代によって肉代替品の購入傾向に違いがあることが見て取れます。
肉代替品購入者の意識から人気の理由を考える
最後に、インテージSCI Profilerを用いて、洋風食品の肉代替品購入者の意識から、肉代替品の人気の理由について考えます。
インテージSCI Profilerとは、生活や健康などに関する考え方や行動などについて、SCIモニターより年1回聴取しているものです。2021年の肉代替品の購入者では、どういった項目で「当てはまる」と回答した人が多かったのでしょうか。洋風食品の購入者計と比較して、回答率で特に差分が大きかった上位5項目を見てみましょう。
まずは、健康意識に着目して、「健康面での悩み事」「対策・心がけ」に関する調査項目の結果を確認します。
▼「健康面での悩み事」に関する項目の意識調査結果
▼「対策・心がけ」に関する項目の意識調査結果
健康面での悩み事については、甘いもののとり過ぎや体脂肪率などの肥満に関する項目が多く挙がっていました。また、対策・心がけとしては、飲食時カロリー・糖質に気を付けたり、健康のために食物繊維や健康に良い成分・サプリメントを試しているようです。
肉代替品に含まれる植物性のタンパク質は、動物性のものと比べて脂質が少なく、食物繊維が豊富とされています。このことから、健康面で肥満などの悩みを抱えている人が、健康・ダイエットのために肉代替品を購入していると考えられます。
次に、生活に関する価値観を見るため、「生活についての考え方」「普段の生活で大切にしていること」に関する調査項目の結果を確認してみましょう。
▼「生活についての考え方」に関する項目の意識調査結果
▼「普段の生活で大切にしていること」に関する項目の意識調査結果
”人や社会のために役立ちたい”や”環境(エコ)を大事にすること”などの項目で、肉代替品の購入者の方が多く「当てはまる」と回答していることから、社会や環境問題により高く意識を持っていることが窺えます。
肉代替品は、牛・豚・鶏などの食肉と比べて生産の過程で温室効果ガスの排出を抑えられる、環境にやさしい食品と言われていることから、環境のために肉代替品を購入しているようです。
肉代替品の購入者が、女性40〜60代が中心で、健康・ダイエットや環境のために購入していることが分かりました。コロナ禍では外出自粛によって運動不足となり、体重増を抱えている人が少なくないようです。
また、環境については、地球温暖化に伴う気候変動への関心も高まっています。これらの需要を捉えた食品として、肉代替品市場のさらなる成長が想定されます。
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