(エフピコチューパ株式会社 上原 英一)
アグリウェブ読者の皆様、こんにちは。
青果物用トレーや袋と言った出荷資材の製造販売を手掛け、農産業界に携わらせて頂いているエフピコチューパ株式会社と申します。
6回目、今年最初のコラムと言うこともあり、直近の状況もおさらいしつつ、今年以降注目される出荷資材の流行・トレンドを何点かお話させて頂きます。
2022年のトレンドをお伝えします!
まず初めに大まかなトレンドについて説明します。大まかなトレンド説明後、もう少し詳細で具体的な出荷資材の製品トレンドをお伝えしたいと思います。
ファッションやカラーコーディネートなどと同様に、青果物出荷資材にも流行やトレンドがあります。世相背景は日々変化しますから青果物出荷資材も世の中に適応した製品に順応していかねばなりません。
では今年のトレンドをお伝えします。ずばり『原体保護』『大容量』『環境対応』が大まかな3大トレンドです!
① 原体保護
まず『原体保護』ですが、やはりニューノーマル時代の影響が大きくトレンドにも反映しており、原体保護については言わずもがなです。
原体保護を行う出荷資材は、消費者目線から取り入れられ始め浸透しましたが、パッキング・物流・販売時でも原体の傷みを緩和することができる副産物を生み、食品ロスを軽減する二次効果をもたらしました。
その結果、使用ユーザーが増加した形です。また消費者が持ち帰る際にマイバックやレジ袋の底に置くことが出来て、荷暴れを抑制することも評価されています。
② 大容量
『大容量』もアフターコロナによって、買い物回数を軽減された消費者動向による影響です。また、生産者や流通業者にも作業量軽減の恩恵があります。少量目でも大量目でもパッキング時の負担はさほど変わりませんが、販売量を増加することが出来るため、時間軽減・作業量軽減が行えます。
農業業界だけでなく、人手不足は慢性的です。効率化を追求することを必然的に行うユーザーが多いことも後押しとなったトレンドです。
③ 環境対応
3つ目の『環境対応』ですが、年々風潮が強まっていることは皆様も肌で感じられていることと思います。環境面に関連する「SDGs」や「エシカル消費」と言ったワードも耳にする機会が増えました。このトレンドについては、この先の未来も不動のトレンドとなることと思います。
これまでもそうですし現在においても、機能性の高い出荷資材やコスト訴求力のある出荷資材は、ロングランで昔から現在まで使用されています。ですが、機能性やコストと同様にもしくはそれ以上に原体保護・大容量・環境対応の出荷資材の使用機会は増え続けます。それが消費者ニーズであり続ける限り変わることはありません。
環境対応の要請は今年さらに加速される
先に大まかな3大トレンドをお伝えしましたが、更に詳細に触れていきます。今回は、3大トレンドの中でも一番注目度の高い「環境対応」についてです。
プラスチック資源循環促進法
さて読者の皆さん、2021年6月に国会で成立し、今年2022年4月よりプラスチック資源循環促進法(下図参照)が施行されることはご存じでしょうか?

(出典:環境省HP【概要】プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案)
この法律を分かり易くお伝えすると文字通り、リサイクルを推進するための法律です。使用したプラスチックは「資源」であり、リサイクルして使用をすることで、プラスチックの廃棄量とCO2の排出量を削減することが出来ると言う訳です。
この法律の施行により、製造者も販売者もリサイクルに対しての早急な取り組みが必要となります。消費者もまた行動様式の変化が予測されています。
直近の例で言えばレジ袋の有料化からマイバックが急速に浸透したのは記憶に新しいところです。環境対応に意識した出荷資材選びはより重要性が増します。本コラムにおきましても、継続的に資源循環促進法についてはお話してまいります。
ペットボトルリサイクル製品の選択
では一言に環境対応と言ってもどのような出荷資材を使用すればよいのでしょうか。
過去にも申しあげましたが、3R(リデュース、リユース、リサイクル)を意識した製品選択をお勧めしてまいりました。この考え方は正しいのですが、更に選択をしやすくする一つの指標として、ペットボトルリサイクル製品を選択することをお勧めします。
先にお伝えしました資源循環促進法の施行により、各メーカーや販売店は資源である使用済みペットボトルを材料としたリサイクル製品を製造・販売する取り組みを続々と始めています。
資源循環促進法はただリサイクル製品を製造・販売すれば良いと言うわけではなく、製品設計や使用済み製品の回収にまで措置を求めていますので、環境対応の側面からは優れた製品であると言えます。
環境対応向け製品が良いことは皆さんご存じだと思います。しかし懸念材料もありますね。おそらくその一番の要因はコストだと思います。しかし、そのコストにおいても見直しを行う時期なのかもしれません。
使用中のプラスチック製品の方が、リサイクル製品よりコスト高になる?
当社が農家の方30名に伺ったアンケートがあります。その内容の一つに「プラスチックごみの問題に関心はありますか?」です。
この回答結果は、非常に関心があると答えた方が11名、ある程度関心があると答えた方が19名でした。関心があると回答された方が100%の結果になりました。農産業界でもやはり環境面への関心の高まりが伺えます。
出荷資材購入時の大きな要素 “品質” と “価格”
ここからです。同様に次の内容の質問を行いました。「プラスチックの代替製品として、リサイクル材や紙などを使用した製品を購入してもよいと思いますか?」
この質問の最多回答は「従来品と比べて、品質も価格も同等であれば購入」の25名です。
「品質が同等以上であれば、価格が高くても購入」と答えた方は4名でした。
品質と価格は出荷資材購入時の大きな要素であり、特にコストを重要視する方が大多数です。
やはり従来から使用している石油由来のプラスチック(非リサイクル品)の品質と価格の優位性を簡単に排除できるものではないようです。ですが、環境問題は更に優位性の高いところにいるかもしれません。
CO2削減に寄与しない製品は価格が高くなる可能性も
環境面で特に訴求されるのがCO2排出量の削減です。皆さんは「カーボンプライシング」と言う言葉はご存じでしょうか?
国際レベルでCO2排出削減に様々な試みを行っており、日本でも同様です。カーボンプライシングとは、CO2削減を目的に炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けることです。カーボンプライシングが進めば、CO2削減に貢献しない製品は価格が高くなる可能性があります。
CO2排出削減に寄与するリサイクルプラスチック製品はコスト競争力が高くなり、石油由来のプラスチックを使い続ければ、使用者のコスト負担が増すリスクをはらんでいます。
現在、リサイクル材の需要が急増しています。今後、いつでも誰でも好きな時にリサイクル材使用製品の購入が出来なくなる可能性もあります。ペットボトルを使用したリサイクル製品を先立って使用することは、安定的に購入し続けられる点からも有効です。
まずは考えることから始める
今回のトレンドはリサイクル材使用、特にペットボトルリサイク製品についてお伝えしました。
プラスチック資源循環促進法やカーボンプライシング等、環境面の言葉も出てきました。日本はもちろん地球規模で環境側面の動きは今後も活発化していきます。この先の未来には、更に環境面に優れた製品や素材も開発されていくことと思います。
経済活動と環境意識した経営の両立は難しいと思われる方も多いでしょう。何から始めるか程度でもご参考にしてみてください。少しでも農業業界の皆様に対し、参考となる情報をお伝えし続け、お役に立てる存在になれれば幸いです。
次回のコラムも2022年のトレンドをお伝えします。やはり環境面からのトレンド製品となっている「紙製品」です。環境面以外でも見映えやおしゃれを求める方が急増しており、今後皆様が選択される出荷資材の新たな一つになるかもしれません。
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