(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 飯尾 真由子)
こんにちは。インテージの飯尾です。
新型コロナウイルスの感染が日本で確認されてから、もう3年目を迎えています。
コロナ前までは、お店に行って新鮮な生鮮食品を購入するように意識していました。店頭に行くことで、味もよくて体にも優しい、旬の食材に出会えるのが楽しみだったからです。ところが、コロナ禍になってからは、できる限り外出を控えるよう、日持ちがよく備蓄しやすい加工食品に頼ることが増えてきたように感じています。
加工食品では、肉・魚・野菜といった食材の種類だけではなく、缶詰・パウチ入り・冷凍のように、商品の形態もさまざまです。それでは、どういった加工食品が人気となっているのでしょうか。今回は、加工食品の野菜市場に着目し、缶詰・パウチ入り・冷凍の商品形態別の消費トレンドを見ていきます。ここで、パウチ入りとは、レトルトパウチ・パック・カップに入った常温保存可能な加工食品です。
商品形態別の加工野菜の市場規模
まずは、全国約6,000店舗の小売店データを集めたインテージ小売店パネル「SRI+」より、加工野菜の市場規模の推移を確認します。対象業態は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターです。
▼加工野菜の市場規模の推移
缶詰野菜の市場規模は、コロナ禍1年目の2020年には巣ごもり需要によって伸長したものの、2021年には反動もあり減少に転じ、コロナ前の2019年と同水準の145億円となっています。その一方で増加を続けているのが、パウチ入り野菜と冷凍野菜。2021年と2017年との比較では、パウチ入り野菜が147%、冷凍野菜が134%まで増加しました。
人気となっている野菜の品目は?
それでは、どういった品目の野菜が伸びているのでしょうか。各商品形態内の金額構成比が2021年に5%以上だった品目について、2021年と2017年の市場規模を比較してみましょう。
▼品目別の市場規模の2021年対2017年比
缶詰野菜は、スイートコーン、カットトマト、ホールトマトで金額構成比90%弱を占める寡占市場です。2021年対2017年比で、スイートコーンが94.1%と減少し、ホールトマトも98.0%と緩やかに減少している一方で、カットトマトは104.5%と増加しています。カットトマトは、パスタ、カレー、煮物、鍋などさまざまな料理に使用できることに加えて、缶から出してそのまま使えるという簡便さもあることから、堅調に推移していると考えられます。
パウチ入り野菜で特に伸びているのが、スイートコーン、タケノコ、カットトマトです。スイートコーンとカットトマトは、缶詰にもある品目ですが、パウチ入り野菜で大きく伸びていることが見て取れます。パウチ入り野菜は、缶詰と比較して、軽くて開封が容易と使いやすいことや、かさばらずに備蓄しやすいことなどから、支持されているものと推察されます。
タケノコは、食物繊維が豊富で腸活によいとされていることに加えて、生鮮のものが流通するのは春に限られることや、パウチ入りは下茹で不要で手間なく使えることなどから、好調に推移しているようです。
冷凍野菜で特に伸びているのが、ブロッコリー、ほうれんそう、ヤサイミックスです。おつまみやおやつ用にもなる枝豆やフライドポテトよりも大きく伸びています。とりわけ大きく伸びているブロッコリーは、食物繊維・たんぱく質・ビタミンCなど栄養が豊富な野菜とされていることから、健康によい野菜を食事に取り入れるために冷凍野菜を活用しているものと窺えます。
野菜の品目ごとに異なる主な購入者
最後に、野菜の品目ごとに、主にどういった人が購入しているか見てみましょう。全国15〜69才の男女約50,000人のモニターから継続的に聴取しているインテージ消費者パネル「SCI」によると、性年代別の購入金額構成比は以下の通りです。
▼品目別の購入金額構成比(2021年)
商品形態別に、年齢層に違いが見られました。野菜缶詰計と冷凍野菜計の構成比では、女性30-49才と女性50-69才がほぼ同水準です。一方。パウチ入り野菜計の構成比では、女性30-49才の26.2%に対し、女性50-69才は43.1%とより年齢層の高い女性が中心となっています。パウチ入り野菜の持つ、軽くて開封が容易であるといった特徴が、年齢の高い女性に支持されていると見て取れます。
子供の有無別に着目すると、野菜缶詰・パウチ入り野菜のスイートコーンやカットトマト、冷凍野菜のフライドポテトやポテト(ハッシュドポテトやホールポテトなど)で、女性30-49才子供ありの構成比が大きくなっています。これらの品目が、小さい子供のいる家庭で人気となっているようです。
男性の構成比が他の品目と比べて大きかったのが、冷凍野菜の枝豆とヤサイミックス。枝豆はおつまみになることや、ヤサイミックスは調理の簡便性が高いことから、男性が購入することも少なくないものと推察されます。
加工野菜市場では、商品の形態や、野菜の品目によって好不調が見られました。使いやすさはもちろん、健康面での魅力も、好不調の背景にはありそうです。年齢や性別などによって、人気の商品にも違いがありました。
今後どういった野菜の商品が人気となっていくのか、これからの動向も楽しみです。
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