(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 田中 航世)
こんにちは。インテージの田中です。
2022年には、3年ぶりに外出自粛要請のないゴールデンウイークを迎えました。緩やかに人の動きも戻ってきたように感じています。
コロナ禍の外出自粛で、私も家で調理することが増え、すっかり調理の習慣も定着してきました。野菜や果物など食材からこだわって選ぶのも、楽しみとなっています。コロナ禍に、野菜や果物などの農産物を買うことが増えた人は、少なくないのではないでしょうか。
今回は、コロナ禍に農産物の販売が伸びたのか、どういった農産物が人気となったのか、農産物の販売動向の変化について見ていきたいと思います。
農産物の市場規模はどのように変化しているのか?
まずは、日本全国のスーパーマーケット約600店で農産物の販売動向を調査した「インテージSRI」より、農産物の市場規模の推移を確認してみましょう。
▼農産物の市場規模の推移
農産物の市場規模は、2019年にかけて減少傾向にありましたが、コロナ1年目の2020年に前年比109%と増加に転じました。
2021年には、前年の反動で前年比96%と減少したものの、2019年との比較では105%とコロナ前の水準を上回っています。コロナ禍での外出自粛に伴い、内食機会が増えたことが、農産物の需要を高めたようです。
分類別に見ると、最も伸長しているのは、カット野菜に代表される「野菜加工品」。
内食機会の増加により、家事負担が重くなったため、簡便に調理を済ませたいという需要も高まっていると考えられます。
コロナ禍ではどういった農産物が伸びているのか?
次に、コロナ禍ではどういった農産物が伸びているのか、品目別に見ていきます。
販売金額・2021年対2019年比を縦軸に、2021年の販売金額を横軸とする分布図は以下の通りです。ここでは、2021年の販売金額の構成比が、1%以上であった品目に絞っています。
▼品目別の販売金額(2021年)と2021年対2019年比
市場規模の大きいバナナ類やトマトをはじめとして、多くの野菜・果物の販売金額が2021年対2019年比で100%を上回っており、コロナ禍に市場が拡大していることが見て取れます。
2021年対2019年比で2桁増と大きく伸びたのが、じゃがいも、サラダ用カット野菜、ながいも、すいか類、人参、ピ-マン。中でも、じゃがいもは、131%と突出して伸びています。
販売金額が伸びた農産物の販売価格・販売個数の動きは?
最後に、販売金額が伸びた農産物について、1個当たり販売価格と販売個数の伸びに分けて見てみましょう。
「販売金額=1個当たり販売価格×販売個数」で計算できることから、販売金額の伸びについて、価格の上昇によるのか、販売個数の増加によるのかを確認します。ここで、個数とは、袋やばら売りなど販売単位ごとの値です。
▼販売金額・販売価格・販売個数の伸び
※110%以上を緑色、90%以下を赤色で示しています。
最も販売金額が伸びたのは「じゃがいも」
最も販売金額が伸びていた「じゃがいも」は、販売価格が2020年・2021年ともに20%超上昇したことで、2021年対2019年比では161%と大幅に高くなっています。
一方、「じゃがいも」の販売個数は、2020年には前年比99%とほぼ横ばいで推移していたものの、価格上昇が続いたことによって、2021年には前年比83%と大きく減少しました。
2021年対2019年比で販売価格が2桁増となった「人参」「ピーマン」も、販売個数が伸び悩んでいることが見て取れます。なお、農産物全体の販売価格の前年比では、2020年は105%、2021年は100%と価格上昇は限定的です。
消費者は、価格が上昇したものを控えながら、農産物を購入しているものと推察されます。
最も販売個数が伸びたのは、「サラダ用カット野菜」「ながいも」「すいか類」
一方、販売価格が安定的に推移した、「サラダ用カット野菜」「ながいも」「すいか類」は、販売個数の伸びが、販売金額の増加に寄与していることが分かります。
「サラダ用カット野菜」は、成長が続いている「野菜加工品」の1種です。健康によいものを簡便に1皿準備できることが人気の理由として挙げられます。
「ながいも」の販売個数は、2020年に前年比130%と急伸。コロナ1年目に感染不安が高まる中、免疫力向上の効果が注目されたことが、市場拡大の要因と考えられます。
「すいか類」は、コロナ禍で外食を控え、内食が増えている状況で、“ちょっとした気分転換になる”と人気となったようです。
消費者は農産物の価格も見ながら選んでいる
今回は、コロナ禍で伸びた農産物について着目してみました。コロナ禍の外出自粛といった生活様式の変化だけではなく、価格の動きによる影響も見て取れました。
最近では、連日のように食料品や電気・ガス料金など各種値上げが報道されており、農産物も例外ではありません。
今後の農産物の売れ行きには、新型コロナウイルスの感染状況に加えて、価格の動きも大きく関わっていきそうです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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