(気象予報士 寺本卓也)
こんにちは。農てんき予報士の寺本です。
私は正直驚きました。6月下旬、各地で続々と梅雨明けが発表されたからです。
6月30日現在、まだ梅雨が明けていないのは、梅雨のない北海道を除いて東北北部(青森、岩手、秋田)のみです。異例の早さとなった梅雨明け後は、全国的にこの時期とは思えないような猛烈な暑さに見舞われています。7月はこのまま晴れて暑い日が続くのでしょうか?
いえ、どうやらそうでもないみたいです。
そんな先の読めない異常事態に、今月も最新の長期予報で詳しく天気を深掘りしていきます。さらにこの夏に知っておきたい情報もたっぷりです。
今回も楽しい内容になっていますのでぜひ最後までお付き合いください。
■今月は雨量が少ない?
早速、最新の1か月予報の降水量を見てみましょう。
東・西日本を中心に平年並みか少ない予想となっています。
今年は梅雨明けが早かったことで、特に西日本の水不足が懸念されています。
■各地で晴れる日多い
では、今度は日照時間をみてみましょう。
すると東北、東・西日本を中心に日照時間が多い予想となっています。
どうやら晴れる日が多くなりそうです。夏の晴れをもたらす太平洋高気圧の勢力が今年は強く、先月の下旬からその傾向は顕著になっています。
■厳しい暑さ続く
1か月予報の最後は平均気温です。
全国的に平年より高い予想となっています。
やはり今月も季節外れの猛烈な暑さに普段以上の警戒が必要となりそうです。
■7月前半は戻り梅雨?
ただ、今回はもう少し詳しくウェザーマップ独自の16日予報で各地の傾向を見ていきます。
すると、先程とはどうやら様子が違います。
1カ月全体では晴れる日が多い予想でしたが、7月前半のみ見ると曇りや雨の日が各地で多くなっています。
日中の気温は30℃前後の蒸し暑さが続く見込みで、夜は西日本を中心に25℃以上の熱帯夜となるでしょう。
水不足を解消する恵みの雨となるかもしれませんが、雨の降り方には注意が必要です。
さらに農作物の高温障害や、作業する農家の方にとっては日々の熱中症対策も大切となりそうです。
■危険な暑さ 熱中症に厳重警戒
農林水産省によると、農作業中の熱中症により死亡した人は2020年で32人、18年は近年では最多の43人が亡くなっています。
またその約8割が7、8月のまさに今この時期に集中しているとの事です。特にハウス内や炎天下の中での作業が多い農家は熱中症のリスクが高くなります。
5月のコラムでも詳しく書いていますが、熱中症の危険性が極めて高い日に発表される「熱中症警戒アラート」を活用するなど対策を徹底していきましょう。
■基本的な熱中症対策
そして、熱中症警戒アラートが発表されたとしても基本的にやる対策は変わりません。
普段から基本的な熱中症対策を徹底していく必要があります。作業する際は万が一のために携帯電話も持っているといざというとき安心です。緊急連絡先も登録しておくとよいでしょう。
自分は大丈夫だと思わず、日々熱中症予防を心がける生活が大切なのだと思います。
■「晴れて暑い」は天気急変のサイン?
また晴れて暑ければ大雨の心配はないという事ではありません。
「夏の晴れて暑い」は実は天気急変のサインなのです。
先月は急激な気温の上昇により雷雲が発生し、突風、そしてひょうなど甚大な農作物被害を引き起こしました。
「ゴロゴロ空が鳴り出した」「黒い雲が見えた」、「急に冷たい風が吹いてきた」などは雷雨のサインです。
気象庁HP「雨雲の動き」では、現在から1時間先の雨雲の予想を見る事ができます。雨雲が目視で確認できた時など、雷雲が向かってくるかどうか確認する際にきっと役立つと思います。
■河川の氾濫危険情報は3時間前に発表
さらに近年は、急な大雨により河川が氾濫し堤防が決壊するような事も多くなっています。
河川についての防災知識をつける事も大切です。
実は、最近その河川の防災情報の内容が一部新しくなりました。河川の「氾濫危険情報の前倒し発表」です。
これまで…氾濫危険水位に達したら「氾濫危険情報を発表」
これから…3時間以内に氾濫する可能性があると予測した時点で「氾濫危険情報を発表」
要するに、これまでより早い段階で警戒を呼び掛ける事で、逃げ遅れをなくす狙いです。
■天気急変 フルーツ王国を襲ったひょう
先月2日、3日と関東地方から東北地方を中心に大気の状態が非常に不安定な状況となり、局地的に激しい雷雨が福島県を襲いました。
私のいるテレビユー福島上空も一気に黒い雲に覆われ、激しい雨が降り、ひょうが降ってきました。それはわずか15分程度の一瞬の出来事でした。
■もも、なし、りんごに甚大なひょう被害
福島市を襲ったこのひょうによる農業被害は約6億円。
私はその現状を知るべく、福島市飯坂町の果樹農家「曲屋果樹園」を取材しました。
曲屋果樹園さんでは、初夏の味覚のさくらんぼが最盛期を迎えていました。その、さくらんぼは、ビニルハウスに守られひょうの被害は最小限に抑えられたとの事です。
しかし、これからが旬のもも・なし・りんごの被害は深刻でした。
■廃棄するしかない「なし」
なし・りんごの表面はデコボコになっており、なしの傷口は黒くなっていました。
りんごは多少の傷ならば治癒能力で、なんとかB品くらいにはなるかもしれないとの事でしたが、なしに関しては皮が薄く治癒能力も低く、こう傷だらけになってしまっては廃棄するしかないとの事です。
モモはさらに厄介な事態に
モモは一見被害がないように見えますが、よく見ると傷口が透明色になっています。
これは、ヤニと言われる樹脂です。いわゆる人間で言う、かさぶたのような働きをします。
では完治するのかというとそうではなく、大きくなるとここから傷口が広がり裂果するおそれがあるというのです。
この先摘果作業を控える農家さんにとっては、無事だったモモと見分けるのに大変で、余計に作業に時間がかかると落胆していました。
形は悪くても、味は変わらない
昨年の遅霜の被害よりもひどい事になったと気を落とす曲屋果樹園の紺野さん。
ただ、形は悪くても味は変わらないので、ぜひ今年も美味しい福島のくだものを食べて下さいと強く仰っていました。
より一層手間暇かけて出来たくだものが美味しくない訳がないですよね。
私も、たくさん食べて応援しようと思います。
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