前回では私が最初に手掛け、今も続いているコンテンツを一つ紹介させていただきましたが、これ以外にも観光農園を舞台にこれまでにない非日常体験ができる農園づくりをいろいろやらせていただきました。次にご紹介させていただくのが「脱・食べ放題」の観光方法です。
新しい果物狩りのスタイル
ぶどう狩りといえば食べ放題。9月の週末ともなれば数千人のお客様にお越しいただける農園です。業務終了後の片付けの際は食べ残しのブドウの山を当たり前のように目にしていました。食べきれんかったから持って帰っていいかと聞かれ、焼き肉の食べ放題で肉を持って帰らないと思うのですが、どこか農産物の扱いが雑だったように思います。
せっかく作ったぶどうがもったいないということで、一房で一人のお客様にお越しいただける方法はないかと考えました。そこで考えた方法がチケット制の果物狩りです。毎年、8月からスタートするチケット制果物狩りを「ちょうど狩り」と名付けました。ちょうどいい味が見つかる、ちょうどいい量を食べられるという意味が込められています。いまだに「ちょこっと狩り」と間違われるのですが、ちょこっとでもいいんだという時代の空気を感じます。
チケット制果物狩り
まず大人の方は16枚綴りのチケットを、お子様は11枚綴りのチケットを購入していただきます。農園の地図と「果物対応表」なるものをお渡ししてそれを見ながら自由に各畑を周っていただきます。その表には
リンゴ「ちなつ」2枚
梨「豊水」3枚
プルーン「プレジデント」1枚
ぶどう「デラウエア」3枚
もも「川中島」3枚
など必要チケット枚数と品種特徴を合わせて書いています。まずこの表とにらめっこすることから始まりいざ出発。各畑に到着して食べてもいいし持って帰ってもいいというのが1つ目のポイントです。収穫した果物の半分を園内で食べ、残りの半分は持ち帰りされている印象です。
2つ目のポイントは皆さんでチケットを出し合って採れる点です。家族とかカップル、お友達の中でコミュニケーションが生まれます。せっかくのお出かけで笑顔があふれる光景をたくさんお見掛けします。3つ目のポイントは1つの梨をみんなで分け合うことです。残りのチケット枚数を計算しながら「梨おいしかったから2個お土産を採ってプルーンに行こう、その後ブドウね」ということになっています。お腹いっぱい同じ果物を食べるよりもいろいろ食べられる、しかも他の食べ放題農園と同額ぐらいとなれば「ちょうど狩り」が選択されます。4つ目のポイントはもったいないが生まれにくい点です。食べ残しはなくなりました。
あと、くだもの観光農園あるあるだと思いますが、10,000房なっているブドウ畑もスタート時は圧巻ですが残り1,000房になるともう無いように感じてしまいます。ちょうど狩りですと目指すは1房のブドウということに目標が変わりますから、まだあったラッキーということになっています。チョキンとハサミで収穫する瞬間が、より特別な瞬間になりました。
2010年に始めたちょうど狩りですが、開始から3年間は意味が分からんと敬遠される方も多くいらっしゃいました。自園の食べ放題を否定しつつチケットをセールスするので無理もありません。今年12年目になりますが、完全に定着し多くのお客様に支持いただけるようになりました。作り手側のメリットもあります。シーズンに必要な品種と量が分かってきたこと、有名で人気のある品種以外のレア品種もアピールポイントになる、品種ごとにファンがつくなど無駄に作ることが無くなりました。何より限られた数量の果物でより多くのお客様にお越し頂けるようになりました。
非日常体験型レストラン
2010年に「ちょうど狩り」を始めた年に非日常体験型レストランと銘打って、「ダッチオーブンの森」を園内にオープンしました。薪割りから始めていただき火をつけるのに苦労しながらダッチオーブン料理を楽しんでいただく。機材・食材は全てお貸しし、片付けもしなくていい。昨今のアウトドアブームのない頃から人気のコンテンツです。
イチゴの新しい楽しみ方の提供
2011年には「イチゴディスカバリー」なる新しいイチゴ狩りを始めました。食べ放題ではなく1パック摘んでいただき、会場を移してイチゴピザやパフェ、缶詰など家庭では作りづらい、でも新しいイチゴの食べ方ができる体験をプラスした観光を始めました。少ないイチゴで多くのお客様に来園頂けるとともに、滞在時間の延長、満足度も上げることに成功しました。この観光も冬の名物になっています。
多様なサービスと多様な従業員
2012年には園内の和食料理店をカフェに、園内どこでもカフェになる「お出カフェ」を開始、翌2013年には2度目のホームページリニューアル、2014年にはバーベキューテラスオープンなど新しいことを1年に一つ生み出せるように動いてきました。この頃、反対を押し切ってデザイナーを採用しました。今も大活躍してくれています。
長野の直営店をオープンした翌年の2016年には園内に子会社の株式会社イチコトを設立。体験に特化した建屋とテイクアウト専用カフェを併設しました。、果物を学びつつ、液体窒素でアイスを作ったり缶詰を作ったりと、くだものを採るという非日常体験にもう一つの非日常をプラスしていただくべく始めたコンテンツです。こちらも1年を通してお子様連れから若い世代の方を中心に支持いただいております。
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