(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんき気象予報士の寺本です。だんだん秋が深まり朝晩だけでなく、日中もだいぶ肌寒くなってきましたね。
今回は秋が深まるこの時期に気をつけたい天気、また最新の1か月予報、さらには今シーズンの冬予想など、盛り沢山の内容となっています。楽しく読める内容となっていますので、ぜひ今回も最後までお付き合い下さい。それでは農てんきスタートです。
人生、でこぼこでいいんだよ
先月21日、私は福島県石川町の「笑平でこぼこ農園」を取材しました。今年の春、近隣の野木沢小学校のみんなと植えた、さつまいもの収穫時期がやってきたからです。笑平でこぼこ農園では、30種程度の野菜を極力農薬に頼らず自然なままで育てています。そのため実習用とは言え今回収穫するさつまいもの葉っぱもだいぶ虫に食われていました。
さつまいもは寒さに弱い
さつまいもは、苗を植えてから120〜150日間で実が育ちます。
また特徴として寒さに弱く、霜が降りると葉っぱが枯れて、地中の実に病気が発生しやすいという事があります。苗を植えたのが、5月26日。日照時間や温度などを考慮すると寒くなる東北で育てるには、少し植えるタイミングが遅い方です。
10月に入りだいぶ朝晩は寒くなってきましたが、ギリギリまで育つのを待ち、先月21日に収穫しました。
芋ほり開始
まずは芋ほりしやすいように葉や茎をどかす作業。
この時、子供たちは土を作るミミズや、葉っぱの虫食い犯人である芋虫達を発見し大興奮していました。その後、一生懸命手で土を掘っていきます。
前回紀陸さんから、苗は浅く植えるか深く植えるかで実のつき方が変わるよと言われていたのを思い出しました。
収穫できたさつまいもの実は大小様々。苗を深く植えると小さい実が沢山でき、浅く植えると実が大きく育つんだと、収穫体験を通して学ぶことができました。
実りある収穫体験に
「楽しかった。」という感想のほか、7月の長雨の影響で雑草がのびて草むしりが大変だったと言う子供もいました。
天気とつねに向き合う農業の大変さを、肌で感じていたんですね。今回のさつまいも実習は、子供達にとってみのりある体験となったようです。
女心と秋の空
11月は晴れる日が数日続いたかと思えば、急に大雨・暴風となったりします。
天気がコロコロ変わりやすい事を例えて、「女心と秋の空」なんて言う事もありますね。でも実は、秋の天気変化は結構単純な動きだったりします。これは高気圧と低気圧が交互にやってくるためです。
低気圧は温度差を解消する働き
秋から冬への季節の変わり目は、特に空気の温度差が南北で大きくなります。
この極端な温度差をどうにかしたい地球は、ある事で解消しようとします。それが低気圧です。低気圧は温度差を解消するために生み出された物だと思って下さい。寒気と暖気のぶつかり合いが大きくなると、そこに波ができ低気圧が発生するのです。低気圧は南の暖かい空気を北に、北の冷たい空気を南に運ぶ事で、地球全体の「温度差を解消」させる働きをします。
秋の天気変化のしくみ
そして二つの低気圧の間にできるのが移動性の高気圧です。
高気圧は晴れをもたらします。一方、低気圧は温度差を解消するだけでなく、雨も降らせます。この低気圧と高気圧が交互にやってくるため、11月の天気はコロコロ変わりやすいのです。そして日が経つにつれ、だんだん冷たい空気の勢力が強くなっていくと、南の暖かい空気を圧倒するようになり、冬となる訳です。
木枯らし一号は、冬の始まり
だんだん秋が深まり、日に日に寒さも増してくる頃、ある有名な強風が吹くのもこの時期です。
晩秋から初冬にかけて、木の葉を吹き散らす冷たい北よりの強風のことを「木枯らし」と言います。東京と近畿地方は、その年の最初の木枯らしを「木枯らし1号」として発表しています。冬の始まりを知らせるサインなんですね。
木枯らし一号の発表基準
東京と近畿地方で発表基準が異なる所がありますが、大体は同じです。最大風速が8メートルの北よりの強風です。
瞬間風速はこの1.5〜2倍の強さの風が吹くおそれがあります。瞬間的には約15メートル、時速にすると54キロメートル。車を走らせた時に窓全開で受ける風の強さをイメージすると、結構強い風ですね。そして、この後はいよいよ寒波がやってきて大雪・暴風雪となっていく訳です。
木枯らしが吹いたら冬支度を早めましょう。
最新1か月予報 今月の天気は?
それでは、ここからは最新の1カ月予報で今月の天気を見ていきます。まず降水量です。全国的に平年並みで、また東日本太平洋側は平年並みか少ない予想となっています。
今月の寒さも平年並み
続いて、気温をみていきます。気温も全国的に平年並みの予想です。一気に冷え込むというよりは、例年の11月通り、日に日に寒くなって冬に近づいていきそうです。
ウェザーマップ2週間予想
さらに詳しい独自の2週間予想でみていきます。
日本海側の地域で曇りや雨、雪の降る所がありそうです。太平洋側の地域は晴れる日が多い見込みです。また各地とも、気温はゆっくり下降していく傾向です。
今月は日本海側と太平洋側で天気の傾向は違いますが、寒さの進み具合はゆっくりとなりそうですね。その他の地点に関しては、ウェザーマップHPで確認する事ができます。ぜひご活用下さい。
今年の冬は、急にやってくる
ただ、その先の事が少し心配になってきました。さらに長期の予想で12月の平均気温を見てみると、東・西日本で平年並みか低くなりそうです。12月に入ると、一気に寒さが増してきそうなのです。
12月は、寒波襲来で大雪か
続けて、12月の降水量を見てみると、太平洋側の地域で並みか少ない予想の一方で、東・西日本の日本海側で平年並みか多い予想となっています。
これが意味するのは、12月に入ると急に冬型の気圧配置が強まって、雨ではなく雪が降り、今年は早くから大雪となる可能性があるかもという事です。
日本海側は早めの雪の備えを
来年1月も同じく日本海側で降水量が平年並みか多い予想が続く見込みです。昨シーズン(2021年12月〜2022年2月)は日本海側を中心に記録的な大雪となりました。今シーズンも同じく大雪となる可能性が出てきています。
11月の今月のうちに、早め早めの寒さや雪の対策が大切となってきそうです。
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