(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 永松統吾)
こんにちは。インテージの永松です。
みなさんは買い物の際、どんなことを考えながら野菜や果物を選んでいますか?私はスーパーで買い物をする際に地元で採れたものを見ると、地元に対する愛着でついつい買ってしまうことがあります。
季節感のある旬のものを取り入れたり、安心・安全のため生産者が分かるものを選んだりと、さまざまな理由で商品を選んでいるのではないでしょうか。
生活者が重視している価値観により、どういった商品を選ぶかが異なると言われています。
今回は、生鮮の野菜・果物の消費動向のトレンドを確認するとともに、生活者の価値観について考えていきたいと思います。
過去5年間でよく食べられるようになった野菜・果物は?
まずは、2017年から2021年の5年間で、どういった野菜・果物がよく食べられるようになったのかを見てみましょう。2人以上家族の主家事担当女性に聴取した、1,260世帯の食卓データである「インテージキッチンダイアリー」より、TI値(1,000食卓当たりの出現回数)の推移を確認します。ここでは、2021年のTI値が50以上のものを抜粋しました。
▼野菜・果物のTI値の推移(2017年〜2021年)

(出所:インテージキッチンダイアリー)
2021年対2017年比では、多くの野菜・果物が横ばいかやや減少して推移するなか、ミニトマトが1.29倍と突出して伸長していました。年別の推移をみると、2019年対2017年比が1.07倍と小幅な伸びに留まっているのに対し、2021対2019年比が1.21倍と、コロナ禍の2020年以降に大きく伸びていることが分かります。
ここで着目したいのは、トマトのTI値が緩やかな減少傾向にあることです。トマトもミニトマトもリコピンやビタミンなどの栄養素が豊富で健康によいとされています。
それでは、食べられ方に違いがあるのでしょうか。
2021年におけるトマト・ミニトマトが使われたメニュー上位5位を見てみましょう。出現率とは、トマト・ミニトマトを使用したメニューの総数を100した時の各メニューの割合です。
▼トマト・ミニトマトが使われたメニュー上位5位(2021年)

(出所:インテージキッチンダイアリー)
トマトもミニトマトも、「生野菜・野菜サラダ」が1位で8割程度を占め、温野菜サラダやツナサラダなども上位に入るなど、サラダで多く使用されていることが見て取れます。
ランキング1位の「生野菜・野菜サラダ」のTI値は、2017年に206回、2021年に204回とほぼ横ばいです。このことから、サラダを作る頻度に大きな変化はない中で、サラダの具材としては、トマトよりもミニトマトが選ばれやすくなっていることが分かります。
サラダに使う際に、トマトはカットにひと手間かかることに対し、ミニトマトはそのまま載せるだけでよいという簡便さが、ミニトマトの好調要因として挙げられるのではないでしょうか。
コロナ禍では、健康意識が高まっただけではなく、内食増に伴い家事負担が増えたことにより、簡便化志向も高まったと見られます。
ミニトマトは、健康にもよく、簡便であることから人気となったと言えるでしょう。
ミニトマトはいつ食べられるようになったのか?
次に、ミニトマトはいつ食べられるようになったのかを見てみましょう。朝食・昼食・夕食の食場面別のTI値を確認します。図表の矢印は、2017年から2021年までの伸びを見たものです。
▼ミニトマトの食場面別TI値の推移(2017年〜2021年)

(出所:インテージキッチンダイアリー)
朝食・昼食・夕食のすべてで伸長していますが、特に朝食の伸びが1.44倍と大きくなっています。
朝食は夕食と比べると準備にかける時間が限られ、簡易に済ますことも少なくないことから、TI値自体は夕食には及びません。ただし、前述の通り、ミニトマトは簡便に使用することができるため、朝食でも食べられる頻度が増加したと考えられます。
誰が朝食でミニトマトを食べるようになったのか?
最後に、どのような人が朝食でミニトマトを食べるようになったのかを確認します。ミニトマトの年代別のTI値の推移は、以下の通りです。
▼朝食におけるミニトマトの年代別TI値の推移(2017年〜2021年)
(出所:インテージキッチンダイアリー)
ミニトマトのTI値はどの年代でも1.4〜1.5倍伸長しており、幅広い世代に受け入れられているようです。野菜や果物の消費量は、年代が高くなるほど大きくなる傾向があります。ミニトマトは簡便であることから、手間を避けようとする傾向の強い若年層にも支持されたのではないでしょうか。
続いて、就業状況別のTI値の推移を見てみましょう。ここで有職女性とは、フルタイム、パート・アルバイトの両方を含みます
。
▼朝食におけるミニトマトの就業状況別TI値の推移(2017年〜2021年)

(出所:インテージキッチンダイアリー)
専業主婦のTI値も1.4倍に伸びていますが、有職女性では1.6倍といっそう大きく伸長しています。専業主婦と比べると食事の準備にかける時間が限られると推察される有職女性に、ミニトマトの簡便さが支持された結果だと言えるでしょう。
さいごに
今回は、生鮮野菜・果物の中で、好調が際立っているミニトマトの消費動向について見てきました。
夕食だけではなく朝食、中高年層だけではなく若年層、専業主婦だけではなく有職女性と幅広い場面や生活者に支持されたことが、ミニトマトの好調要因として挙げられます。
最近「タイムパフォーマンス(時間対効果)」という言葉をよく耳にするようになりました。食事における栄養と、調理にかかる時間を天秤にかけた結果、「食卓に野菜は取り入れたいけど、調理に時間はかけたくない」という意識の高まりがあったのではないでしょうか。
生鮮野菜・果物の持つ健康という価値に加えて、生活者の求める価値を提供できれば、需要を掘り起こしていくことができるのかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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