(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
明けましておめでとうございます。「農天気(のうてんき)」な気象予報士の寺本です。
今年もよろしくお願いします。新年はじめましてという方に簡単に自己紹介しますね。私は青果の商社でサラリーマンをした後、現在は福島県のテレビ局でお天気キャスターとして働いています。でもただのお天気キャスターではありません。私は、福島の農家さんへ直接取材したり、局内で畑を耕したりなど天気と農業の関係を深掘りしていく「農てんきな予報士」なのです。
このコラムは、そんな「農てんき」な情報に加え、農業に役立つ最新の予報など盛り沢山の内容となっています。今年も全国の農業を盛り上げていくべく頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願い致します。では、今年も農てんきスタートです。
冬の味覚「イチゴ」の収穫開始
私が福島に住んで思ったのは、全国でも一番のフルーツ王国だなという事です。というのも、一年中様々なフルーツが楽しめるからです。
そして今まさに旬なのは、イチゴです。福島県伊達市の「松葉園」では、とちおとめの収穫が行われていました。天候に恵まれたため生育はおおむね順調で品質も良く甘さも十分との事です。
原油価格の高騰で影響も
しかしながら、最近は原油価格の高騰で暖房機の灯油代やガス代が著しく値上がりしています。
例年に比べ生産コストは、3〜4割程増しているという事です。
同じく苦しい思いをされている農家さんは全国に沢山いらっしゃるでしょう。
変わらぬ美味しさ
それでも、「丁寧に育てたイチゴは変わらぬ美味しさです。」と自信を持ってお答えしていました。
いつもの事ながら、私も県内産の物を食べて少しでも農家さんを応援しようと思いました。
今月もドカ雪ありそう
イチゴはいくら寒さに強いと言われていても、最低気温が氷点下になるような所では暖房がないと枯死します。
先月は強烈な寒波が立て続けに襲来し、日本海側を中心に大雪となりました。これは意外な事に地球温暖化も影響しており、ドカ雪は今後も増えていくおそれがあるとされています。そうなれば、農作物の生育不良や、雪の重みで枝が折れたりなどの被害は今後増えていくでしょう。
長期予報で先々の天気の傾向を知り、早めに対策をしていく事は、今後の農業経営にとってさらに重要になってくるのではないかと思います。
大雪のピークは今月
最新の1か月予報で1月の予想降雪量を見てみましょう。
東日本の降雪量は平年並みに落ち着き、西日本に関しては少ないとしています。先月大雪の被害のあった地域では朗報ですね。
しかしながら、北日本の日本海側では並みか多い予想となっています。今月は寒気が北日本に流れ込みやすい状況となりそうで、このあたりでは、今月も大雪に注意が必要です。
北日本は厳しい寒さ続く
そして、平均気温です。東・西日本は平年並みの寒さが続く一方で、北日本は平年より低い予想です。
これは、北日本は厳しい冷え込みが続き、寒さに弱い農作物は十分管理に注意が必要となりそうです。
2月になると「大雪」から「ふつうの雪」に?
続いて、3か月予報の降水量を見ていきます。すると1月から一転して、2月、3月は平年並みの所が多く、また西日本に関しては平年並みか少ないという予想も出ています。
1月に大雪のピークを迎えた後、2月に入ると「ふつうの雪」へとシフトしていく所が増えていきそうです。2月に入るとほっと一息つけそうですね。
寒さのピークも1月までか
平均気温も見ていきます。2月は平年並みの所が多く、3月は北日本で平年並みか高い予想となっています。
ここまで見ると、やはり厳しい寒さや大雪のピークは1月までと言えます。2月に入ると少しずつ寒さが和らいでいき、冬の終わりを感じられるかもしれません。
農作物の生育に必要な、暖房費などの節約も期待できそうです。
今年の天気はどうなる?
さて、ここからは新年一発目という事で、さらにその先の天気はどうなるか?農てんき予報士寺本が「今年の天気」を占ってみようと思います。
実は日本の天気に大きく影響を及ぼす、遠くの南米付近の海面水温に変化が見えてきたんです。今冬の大雪の原因の一つに「ラニーニャ現象」があります (詳しくお知りになりたい方は、先月のコラムをご参照下さい。)。先月9日気象庁の発表によると、長らく続いたその「ラニーニャ現象」がどうやら今年の冬の終わりには終息し、平常の状態になると予想しています。
ただ、一方で気になるのは今後エルニーニョ現象が発生する確率が20%と高くなってきている事です。もしエルニーニョ現象が発生すると一体日本はどうなるのでしょうか?① 「冬」…大雪・厳しい寒さが終わる② 「夏」…冷夏、曇天(梅雨時期は大雨の可能性も?)というような事が考えられます。
「エルニーニョ現象」で冷夏?
では、エルニーニョ現象とはどういうものか?イラストをご覧ください。
① エルニーニョの時は東風が平常時より弱く吹いています。② 東風が弱いため、暖かい水が平常時より西に行きません③ 積乱雲が発生する場所も平常時より東になります。④ 太平洋高気圧も平常時より張り出しがなく、勢力が弱くなります。⑤ 日本は曇天の日が多く、冷夏になりやすくなりますよって、このままエルニーニョが発生するとなると、今年の夏は日照不足や冷夏で、農作物の生育にも大きく影響が出るおそれがあります。
危険信号 今年も豪雨や台風に注意
近年、エルニーニョ現象が発生したのは2018年の秋です。この年に何が起きたかと言うと、7月上旬に梅雨前線が活発化した事により発生した「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」。9月上旬には、台風21号が非常に強い勢力で近畿地方を北上。大雨・暴風・高潮により関西国際空港の連絡橋にタンカーが衝突し、長時間人と物の流れが途絶えた事など大きな影響を残した事が思い出されます。エルニーニョ現象が全ての原因という訳ではありませんが、異常な天気の危険信号かもしれません。
とはいえ、現時点ではエルニーニョ現象は発生していませんし、発生確率も20%とそれほど高くありません。まだまだ今年の天気がどうなるかは分かりません。引き続き、詳しく天気をお伝えしていきますので、また来月もぜひ楽しみにしてください。
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