(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。
テレビユー福島の敷地内にある農てんきファームに春のお便りが届きました。昨年の春に植えたアスパラが、ひょろひょろと顔を出したのです。
あまり手入れしてなかったのがばれてしまう程の雑草の多さですね。それでも負けずに、アスパラは凄い生命力だなと驚きました。
アスパラは寒さに弱いので、春先の急な冷え込みには注意しないといけません。そうです、今年も霜に気をつけなければならない季節がやってきたのです。
そして、今年はいつも以上に遅霜に注意しなければいけません。
記録的な暖かさで、果樹の開花が早まりそうなんです。今月も長期予報をもとに、春に気をつけたい天気情報をたっぷりお届けします。
では、今月も農てんきスタートです。

観測史上最速の桜の開花
先月は、全国各地で桜の開花の発表がされました。
とても嬉しいニュースではありますが、あまり喜んでばかりはいられません。あまりにも早すぎる開花だったからです。
東京で過去最速タイ、富山、福島、仙台など全国各地で観測史上最速の桜の開花となった所が続出しました。
桜の開花が早まったのは、記録的な暖かさによります。
これだけ暖かいと、農作物においては果樹などの開花も早まるため、遅霜の被害にあうリスクが高くなります。

桜開花600℃の法則
桜の開花がなぜ早まっているのでしょうか。
以前、このコラムでも書いた事がありましたが、桜の開花600℃の法則を使い検証しようと思います。
これは、2月1日からの最高気温を足していき、600℃を超えるとおおむね桜が開花するというものです。
今年の福島市の桜の標本木は、600℃をちょうど超えた3月24日に開花となりました。
バッチリ当たっていました。福島の桜の平年の開花日は4月7日なので、今年はとんでもない速さの開花です。
今回は、過去30年間のデータを用いて、近年どれだけ温暖化が進んでいるのかを確かめてみようと思います。

異例の暖かさ
福島市における1994年〜2023年の過去30年間のデータを使用します。
2月1日〜3月31日までの積算600℃を超えた年がどれだけあったか10年単位ずつで検証していきます。
すると、1994〜2003年が1、2004〜2013年が2、2014〜2023年が6と、近年は3月中に600℃を超える年が明らかに多くなっているのが分かります。
各地で桜がとんでもなく早く咲く原因は、温暖化が進んでいる影響といえそうです。
もしかすると近い将来、2月中に桜が咲く時代が来てしまうかもしれませんね。

「遅霜注意」 地面は予想気温より低い
桜の開花が早ければ、同じくモモ、リンゴ、ナシ、さくらんぼなどの落葉果樹の開花も早まります。
開花が早いという事は、それだけ急激な冷え込みに遭遇する期間も長くなり「霜害」に遭う危険度が増すと言えるでしょう。
花を咲かせてしまうと、植物は寒さに耐える力は残っていません。
遅霜の予想がされるような時は、お天気キャスターが「放射冷却」、「強い冷え込み」、「霜注意報発表」、というような言葉を多く使い出します。
また実は予想気温は、地上から1.5メートルの高さの値という事をご存じでしょうか?地上はさらに冷えて氷点下になる事も十分あります。
予想気温2℃程度なら遅霜に注意です。

いつもよりかなり暖かい4月
気象庁発表の最新1カ月予報の平均気温を見ていきます。
すると、全国的に平年より高い所が多く、その他の地域も平年と同じか高い予想となっています。
今月はいつも以上に暖かい春となる所が多くなりそうです。

降水量は少ない
続いて1カ月予報の降水量を見ていきます。
高気圧に覆われる日が多く、東日本の日本海側や西日本は平年並みか少ない予想となっています。
一方で北海道は降水量が平年並みか多い予想です。

日差したっぷり
1カ月予報の日照時間を見ていきます。
やはり降水量の少ないと予想されていた西日本や東日本日本海側を中心に日照時間が多く、晴れる日が多くなりそうです。

雨が降らない訳ではない 単発の大雨注意
ここで、ウェザーマップ独自の16日予想(福島)を見ていきます。
(その他の地点は、こちらウェザーマップHPにて確認頂けます)
今の所、日中の気温はやはり平年より高いですが、最低気温に関しては、まだまだ一桁の寒さが予想されています。
3℃の予想気温は地上では氷点下の可能性もあるため、霜には注意が必要ですね。
天気はというと、晴れる日が多いですが、時折雨マークがあり、このあたりは低気圧の発達具合で大雨となる可能性があるため注意しておくとよさそうです。

大雨・強風でハウス倒壊のおそれも
晴れる日が多い予想の4月となっていますが、全く低気圧がやってこないという事は考えにくいです。
4月は元々、低気圧が日本に近づきやすい季節です。まだ冬の冷たい空気の名残があり、さらに暖かい空気がぶつかり合う事で低気圧が発達しやすいものです。
大雨や強風は急にやってくるため油断できません。
発達した低気圧による強風は農業用ハウスやガラス室の倒壊や破損を引き起こす他、農作物の倒伏、茎葉や枝の損傷、落葉、落下を招く事から、大きな減収や品質の低下をもたらすおそれがあります。

塩風害の可能性も?
また、降水量が少ないと逆に怖いのが海岸沿いの農作地です。
発達した低気圧本体の雨が全く降らなくても、海岸沿いで強風が吹きつける事がよくあります。
すると強風で農作物同士が接触して傷がつき、さらにそこに海面から巻き上げられた塩が農作物に付着します。
この際少雨だった場合は、農作物についた塩は洗い流されず、多数の傷から作物の体内に入り込み、細胞が脱水して植物が枯れてしまうのです。
これを「塩風害」と言います。海岸沿いの農家さんは、今月は念のため塩風害にも注意が必要となりそうです。

先月3月11日は、福島県相馬市松川浦へ足を運びました。
この日はとても穏やかに晴れて、整備された砂場ではビーチバレーをする若者、砂浜には散歩する人々が気持ちよさそうに過ごしていました。
あれから12年、まだまだ福島の農業を取り巻く問題は山積みな気がします。
世界で一番安全で美味しい福島の農産物を今年も沢山PRしていかなければですね。
新年度も引き続き農てんきをよろしくお願い致します。

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