アグリウェブの皆さん、こんにちは、共栄火災海上保険株式会社です。
私たち共栄火災は、自然災害へのリスクを始め、農業経営にかかわるリスク、またそれ以外の様々なリスクに対する補償を幅広く提供している損害保険会社です。
本コラムシリーズでは、農業経営をとりまく様々なリスクを取り上げ、損害保険が果たしている役割について解説していきます。
3回目のコラムでは、従業員を雇用する際の使用者リスクについて取り上げていきます。
足元の農業経営体の傾向
減少が続く農業経営体において、法人経営体の数は、令和2年の農林業センサスでは3万1千経営体と平成17年の1万9千経営体に比べ、60%増加しています。
増加している要因として、農業経営を法人化することで、経営管理の高度化、安定的な雇用の確保等の点でメリットがあるためと考えられています。
また、農業地域類型別の法人(団体)経営体における経営耕地面積は、いずれの地域においても増加しており、経営体数の増加程度と比較しても、より顕著に増えていることが確認されています。
資料:農林水産省「農林業センサス」を基に作成。各年2月1日時点の数値
資料:農林水産省2005年、2010年および2011年の「農林業センサス」を組替集計のうえ、2020年「農林業センサス」を基に作成。各年2月1日時点の数値
(補足)農業地域類型区分について、2005年は2008年6月改定のもの。同様に、2010年は2013年3月改定のもの、2015年および2020年は2017年12月改定のもの
雇用の増大と共に必要な安全の確保と配慮
法人経営体の増加は雇用を産むこととなりますが、従業員のケガ、増える脳・心疾患への補償等、使用者(事業者)の労働者に対する安全の確保と必要な配慮が必要となります。
実際に、令和3年の農作業事故死亡者数は242人であり、前年(令和2年)と比べて28人減少しているものの就業者10万人当たりの死亡事故者数は10.5人であり、他産業に比べ依然として高い状態となっています。
また、要因別にみると、「農業機械作業に係る事故」が約7割と高い状態が継続。
農業機械作業のうち「機械の転落・転倒」が約5割を占めており、乗用型トラクターをはじめとした農業機械の転落・転倒による重傷が危惧されます。
上述のように経営耕地の面積拡大により、スマート農業による効率的な農作業導入も想定されますが、トラクターで耕す機会等が増える等、リスクを伴う農作業機会が想定されます。
使用者リスクについて
今、経営者にとってもっとも危機意識の高いリスクは使用者リスクです。
使用者は労働者に対する安全の確保と必要な配慮が義務づけられており、近年の「労働者保護意識の拡大」「使用者責任の明確化」「労働者の権利意識高揚」により、使用人のケガ等に対して安全配慮義務に対する正当な損害賠償額を求められる可能性が高まっています。
また、労災環境の変化も相まって、長時間労働を原因とした脳・心疾患や精神障害といった「疾病型労災」による労災申請も増加して過重労働や精神障害を原因とする訴訟が増加し、賠償額も高額化しています。
農業分野においても、労働災害への備えとして、政府労災保険への加入が重要です。
ただし、政府労災保険は「被害者・遺族への最低限の生活保障」を主な目的としているため、高額な損害賠償が確定した場合には事業者に政府労災での保障を上回る部分の多大な負担が発生する可能性があります。
事業基盤維持に向けた備え
下の図のとおり、労働災害における損害賠償請求では、逸失利益、葬儀代金、慰謝料など全損害の賠償を求めることができるのに対して、政府労災保険からの給付でまかなえるものは、そのうちの一部に限られるため、損害賠償額と労災給付との差額は、経営者が負担しなければなりません。
このようなリスクに対応するために、民間の損害保険会社では、政府労災保険の上乗せ補償商品として、「労災保険」や「業務災害保険」等が用意されています。
類似する例としては、自動車保険についても、万が一の事故に備えて、自賠責保険に加えて任意保険に加入する事が通例となっています。
労災事故発生・高額の損害賠償となった場合には、財務基盤が悪化し、事業継続が困難となる可能性を踏まえ、「持続可能な農業経営」の観点からも高額な損害賠償請求に備えるために使用者リスクを賄うことが出来る政府労災プラス補償保険加入の検討をおすすめします。
◆基礎知識【労災保険】労働者災害補償保険の基本 もご参照ください。
<本コラムの執筆者>
共栄火災では、自然災害のリスクを始め上記のような農業経営にかかわらず、さまざまなリスクに対する補償を提供しています。
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