(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士寺本卓也です。
私は、最近ダイエットのため走っています。5月下旬頃の梅雨を「走り梅雨」なんて言いますが今年はどうやら様子が違います。
先月29日、気象庁は九州北部(山口県を含む)、四国、中国、近畿、東海で早くも梅雨入りの発表をしました。
平年に比べ1週間程早く、大雨に備えが必要な季節がもうやってきたのです。そしてまさに南の海上からは台風2号が本州に近づきつつある状況です。
今月はどうやら荒れた天気のスタートとなりそうで、大雨や暴風への備えを今からしておく必要がありそうです。
今回も農業に役立つ最新の天気が盛り沢山となっています。ぜひ最後までご覧ください。

農てんきファーム
先月、TUF玄関前の農てんきファームでは、さつまいもを植えました。
さつまいもは乾燥に強いですが、植え付け時は根を活着させるため水が必要です。
5月の前半はカラッと晴れて暑くなった日が多く、植え付け後は葉が枯れてしまう事態となりました。このまま全滅してしまうのでは、と思いましたが、月の後半は、雨の日が次第に増え、新しい葉っぱが生えてきました。
私も、一安心です。とは言えこれからは多雨で病気にならないように気をつけないといけない季節です。
では、その気になる今月の天気を深堀していきます。

今月は降水量多い
まずは、1か月予報(降水量)を見ていきましょう。すると、西日本から東北にかけて降水量が多い予想となっています。
今月は、梅雨前線や、今回迫ってきている台風2号の影響も重なり各地で平年より雨量が多くなる予想となっています。

6月スタートは荒天か
そして、週間予報をみてみると、今月前半は全国的に曇りや雨マークが多くなっています。
今年の梅雨入りは平年に比べ全国的に早まっています。気象庁が梅雨入りの発表をする目的は、大雨への防災意識を高める事や、農業用水の確保の目安などに役立てて欲しいなどの意図があります。
でも、実は梅雨入りの明確な基準は決まっていません。週間予報に曇りや雨マークが5日以上くらい並んでくると発表の可能性が高くなる傾向にあります。

台風+前線で災害級の大雨のおそれ
また今回の雨は通常の梅雨前線の雨と異なり、雨雲が活発化する可能性があります。
それは、南から近づく台風2号が、前線にむかって雨雲の素となるエネルギーをどんどん補給するおそれがあるからです。
以前のコラムでもお伝えした事がありますが、前線による雨と台風はとても危険な大雨のパターンです。急に雨雲が発達して、災害級の大雨となる可能性があります。
早めの畑の排水対策が必要となりそうです。

太平洋側を中心に大雨か
さらにスーパーコンピュータの計算による雨の予想で詳しくみていきましょう。
西・東日本の太平洋側を中心に大雨となる可能性が出てきています。まだ日本付近の海面水温は低いことから、台風2号が本州に近づく頃には、勢力は弱まりながらやってくると考えられますが、腐っても台風なので油断はできません。
また先ほどお伝えした通り、前線+台風で局地的に土砂災害や河川が氾濫するような大雨となる事は十分考えられます。台風に伴う大雨への備えを早めにしておきましょう。

台風が去った後も曇天多く
ウェザーマップ独自の16日予報で東京の天気を見ていきます。
台風がおそらく去ったであろう5日の予報以降も曇りや雨の日が多くなっています。
梅雨前線が本州付近に停滞する可能性があり、しつこく雨の降りやすい状況が続きそうな予想となっています。
その他の地点をご覧になる場合はウェザーマップHPを是非ご活用ください。

日差し少なめ、蒸し暑く
さらに、1か月予報で平均気温と日照時間を見ていきます。
すると日照時間が少ない予想となっているのに、気温は高めの傾向が出ています。
今月は日差しが少なく、ジメジメムシムシとした不快な暑さが待っていそうです。気温が高く曇りやすいとなれば、多湿な環境となるため、病気が多発する可能性も高いでしょう。
水はけをよくしたり、植物間の通気性をよくしたりするなど菌がまん延しない工夫が必要となりそうです。

台風が去っても大雨に警戒
そもそも梅雨時期は西日本を中心に大雨となりやすい季節です。
それはなぜかと言うと、梅雨前線が活発化されやすい状況にあるからです。太平洋高気圧の縁を回って、大雨の素となる熱帯由来の暖かく湿った空気が西日本にどんどん流れ込みます。
そのため梅雨時期は西日本を中心に災害級の大雨となりやすいのです。
この湿った空気の流れは気象学では、下層ジェットと言う他、人間の舌に似ている事から湿舌(しつぜつ)などと言います。

この夏はエルニーニョが発生
また少し話がそれますが、気象庁は先月12日に、この夏にエルニーニョが発生する可能性が高いと発表しました。
これが起きると日本にどんな影響があるかというと、一般的には冷夏になると言われています。ただ今年はダイポールモード現象も同時に発生しているため、結局夏は暑くなりそうです。
そのあたりについてはまた次号詳しくお伝えするとして、今回注目して頂きたいのは、夏の暖かい空気をもたらす太平洋高気圧が例年に比べて張り出しが弱まる可能性があるという事です。
するとどんな事が起きるのでしょうか?

下層ジェットには害虫も
太平洋高気圧の張り出しが弱まる事で、下層ジェットの流れるコースも微妙に変わってきそうです。
この下層ジェットですが、実は大雨をもたらすだけでなく、とんでもない物を持ってきます。それは稲などを食いつくすトビイロウンカやセジロウンカと言った害虫です。
これらの害虫は中国大陸からこの下層ジェットに乗って日本にやってきます。例年、西日本を中心に被害が多発しますが、下層ジェットが東に移動する事で、今後東日本まで被害が増えてもおかしくないでしょう。
今年の夏はエルニーニョ現象が発生する事が予想されているため、トビイロウンカなどが東日本に飛来して害虫被害が増加するかもしれません。
今年の梅雨は大雨・暴風だけでなく、虫の飛来にも念のため注意が必要となりそうです。

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