(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 松瀬智仁)
こんにちは。インテージの松瀬です。
あっという間に1年の半分以上が過ぎましたね。ちょうどこの文章を執筆している頃、田植えの光景を目にするなど初夏の様相を帯びてきております。
今植えられているお米が収穫されるのは秋ごろとなるわけですが、私は新米の美味しさの虜になってしまってから、秋になるとお米を食べるのがとても楽しみです。
そんな日本人の心とも言うべきお米ですが、近年は消費量が低下していると聞くこともあります。お米の消費動向は、どうなっているのでしょうか。
お米の売上は落ちているのか
まずは、全国の小売店約6000店より収集した「インテージSRI+」のデータで、米の販売金額の推移を確認します。
【米の販売金額の推移】
(出所:インテージSRI+)
コロナ禍の巣ごもり需要の拡大を受けて、米の販売金額は2020年に伸長していましたが、需要が急拡大した反動に加えて価格下落の影響もあり、2022年にかけて減少していることがうかがえます。
ただし、玄米の販売金額は、2022年対2017年比で205%と2倍を超えるまで増加しています。
白米に比べて玄米は食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富であることから、健康志向の高まりを背景として、人気となっているようです。
実は伸びている「お米の加工品」
米の需要が伸び悩んでいる要因としては、食の洋食化が進んでいることに加えて、簡便化志向の高まりによって、炊飯器で米を炊くのが手間だと感じる人が少なくないことが挙げられます。
単身世帯の増加や少子高齢化といった社会構造の変化も、家庭で一度に消費する米の量を減らしており、米の消費が伸び悩む要因となっているのではないでしょうか。
そうした中、販売金額を伸ばしている米の加工品が「パックご飯」です。
【パックご飯の販売金額の推移】
(出所:インテージSRI+)
パックご飯の販売金額は増加傾向にあり、2022年対2017年比で137%となっています。
玄米タイプが人気となっていることは米と同様で、玄米タイプの2022年対2017年比は274%と3倍近くにまで拡大が見られました。
パックご飯の好調は、電子レンジで温めるだけで自分が必要な量だけ食べることができることから、簡便性が高く、単身世帯の増加や少子高齢化といった社会構造にも合っているためと考えられます。
パックご飯を買っているのは誰か?
約5万人の購買行動を集めたインテージ消費者パネル「SCI」で、パックご飯を買っているのはどの年代かを見てみましょう。
【パックご飯の年代別の購入金額・購入率】
(出所:インテージSCI)
上図は、1人当たりどれぐらいの金額を購入しているか(購入金額)、どれぐらいの人数に買われているか(購入率)を年代別に表したものです。
購入金額・購入率ともに60代が最も大きく、50代が続いていることから、高齢者の消費が堅調であることが見て取れました。
食事の量が減る一方で、食事の準備を手間に感じることが増えてくる高齢者世帯で、簡便で量を調整しやすいパックご飯の支持が高まっていると推察されます。
一方、購入金額・購入率ともに著しく伸びているのが、10・20代の若年層です。2022年対2017年比で購入金額が1.4倍、購入率が1.2倍と伸長。
10・20代でとりわけ購入が伸びていたのが、単身世帯と小さい子供のいる世帯でした。
両者とも食事の量が限られる傾向にあることから、パックご飯で量を調整できるメリットは大きいと言えます。
加えて、小さい子供を育てる際の家事負担の重さから、少しでも家事の負担を抑えようとパックご飯を利用することもあるのではないでしょうか。
お米復活のカギは周辺市場、キーワードは「健康」「簡便」
ここまでの読み解きから、米だけではなく、米の加工品であるパックご飯でも、「健康によい」と注目されている玄米の人気が見て取れました。
玄米の持つ、食物繊維やビタミン・ミネラルが豊富であるという特徴が支持されています。
パックご飯市場の拡大については、高齢者のほか、単身や子供あり世帯の若年層の人気が高く、「簡便さ」が人気と理由であることが分かりました。
また、自然災害や体調不良の時などの備蓄需要も力強いことから、今後もいっそうの市場拡大が期待される分野です。
また、米の加工品として、料理や菓子作りなどで小麦粉の代替となる「米粉」があります。
米粉は、食後の血糖値が急激に上がりにくい低GI食品で、健康によいと注目を集めているようです。
加えて、小麦粉の価格が急上昇する中、価格が安定し、経済的であることも米粉の魅力となっています。
30万人分の買い物が分かる、リサーチ・アンド・イノベーションCODE「買いログ」データで聴取した米粉の購入金額は、2022年に前年比103%と緩やかに伸長していました。
値上げを背景として小麦粉の買い控えが見られる中で、米粉の人気が高まっていることが見て取れます。
こうした「経済性」も米の付加価値の1つとして支持され、米市場が活況となっていくことが期待されます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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