(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。
この夏はとてつもなく暑かったですね。みなさん体調は大丈夫ですか?先月のコラムで観測史上最高に暑い夏になるかもとお伝えしましたが、まさに各地でその通りになってしまいました。
異常な高温に加え、日照りが続き稲の生長にも影響が出ていると聞きます。そして、福島のフルーツにも少し変化が出ているようです。
一体この暑さはいつまで続くのでしょうか?また水不足は解消されるのでしょうか?今月も最新のデータをもとに、農業に役立つお天気情報を楽しくお届けします。
では、早速今月も農てんきスタートです。
雨が異常に少なかった夏
今年は、全国的に降水量の少ない夏となりました。7〜8月の降水量を今年と平年で比較してみます。
すると福島も東京も平年の半分ほども雨が降っていない事がわかります。これは全国的にも同じ傾向です。
今年は晴れをもたらす太平洋高気圧の勢力がとても強く、この夏は全国的に晴れる日が多くなりました。

観測史上最高に暑い夏
さらに、この夏は本当に暑かったと思った方が多いのではないでしょうか。それもそのはずです。
今年の猛暑日(35℃以上)の日数を見てみると、各地で観測史上最高を更新しています。福島に至っては約1か月間ずっと35℃以上の異常な暑さとなりました。
なぜ今年は、異常な暑さとなってしまったのでしょうか?それは、日本が太平洋高気圧に覆われる以外にも理由がありました。

この先、台風の危険度高まる
先月のコラムでもお伝えしましたが、今年は日本の南の広い範囲で海面水温が異常に高い状況が続いています。
ラニーニャ現象の余韻と、エルニーニョ現象が重なった事もあり海面水温が高くなったのです。
すると上空の空気も広い範囲で暖かくなりました。日本はいつも以上に暖かい空気に覆われるような夏となった訳です。
そして、太平洋高気圧の勢力も強まった事で晴れる日が多く、日本は観測史上最高に暑い夏となった訳です。
さて、9月に入り心配なのは「台風」の動きです。台風のエネルギーの源は水蒸気です。
水蒸気は海面水温が高ければ高い程、大量に発生します。
このように海面水温が高い状況が続けば、必然的に9月は台風の危険度も高まってくると言えます。

9月は強くてしぶとい台風に注意
気象庁は、今年の春からエルニーニョ現象が発生し、この後冬にかけて続く可能性が高いと発表しています。
これは日本の南で海面水温の高い状況がしばらく続く事を言っています。
そうなると、今年はいつも以上に、台風が発生しやすくなりそうです。
海面水温が高い事で、台風は発達しやすく、消滅するまでの期間が長くなるおそれもあります。
今年の9月は、強くてしぶとい台風に注意が必要となりそうです。

暑い秋で厳しい暑さ続く
続いて、8月31日気象庁発表の1カ月予報の平均気温を見ていきます。
この先も暖かい空気の流れ込みやすい状況が続き、全国的に気温が高い予想となっています。
この気温の高い傾向は今月末にかけて続く見込みです。
先月に続き、今月も記録的に暖かい9月となるかもしれません。

降水量は西で多く、北・東で少雨か
次に1カ月予報の降水量を見ていきます。
すると西日本では平年並みか多い予想となっている一方で、北・東日本は平年並みとなっています。
西日本は大雨に注意警戒が必要ですが、北・東日本では夏からの水不足が解消されず、農作物への生育に大きな影響が出るおそれがあります。

不気味な台風の動きにも注意
先ほどもお伝えした通り、今月もう一つ注意が必要なのが台風です。
なかなか先を読むのが難しい台風の動きですが、スーパーコンピュータでは、今月上旬に不気味な雨雲が日本列島にかかる計算をしています。

30℃前後の厳しい暑さと少雨か
ウェザーマップ独自の16日予報で、東京の予想を見ていきます。今月始めは、35℃前後の猛烈な暑さが続く見込みです。
曇りや雨の日が多いものの、まとまった雨とはなりにくい予想です。その後は中旬頃になると再び晴れ間が戻る見込みです。
少しずつ暑さはトーンダウンしていきますが、しばらく30℃前後の厳し暑さが続きそうです。
高温や少雨により農作物の生育にもまだまだ影響が残りそうです。
他の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をご確認ください。

ナシの出荷最盛期
私は、先月末にこのコラムで何度かご紹介している、福島市飯坂の曲屋果樹園に取材してきました。
去年は6月にひょう被害が発生しましたが、今年のナシは順調に育っていました。
連日の暑さが生育に悪い影響を及ぼしてないか心配でしたが、ナシに関しては高温で甘く美味しく育っているという事です。
一方で、雨量が極端に少なかった事から、平年より少しだけ実が小さく、また若干固めかもしれない。と、お話しを伺いました。
とは言え、私のような一般人では分からないレベルだと感じています。

秋の味覚シャインマスカット
近年、温暖化に適応した高温耐性品種のぶどうとして高い人気となっている、シャインマスカットが福島県でも盛んに栽培が行われています。
昼夜の温度差が大きい福島盆地で育てられたシャインマスカットは、より一層甘くなる事で有名で、連日テレビなどで紹介されています。

高温で着色薄め
シャインマスカットへの影響はどうでしょうか。パッと見はとてもきれいな色づきで宝石のようです。
ただ、プロから見ると猛暑が続いた影響で、平年より若干色づきが薄いようです。
またこちらも雨が少なかった事から、若干ですが、小ぶりとの事です。
とは言え私から見たら違いがほとんど分からず食べ応えがありそうです。暑さ続きで、とても甘く育っているとの事です。

早くも冬の便り
さらに、まだ残暑が残るこの時季に、早くも冬の便りが届きました。こちらのりんごは「さんさ」という早生種です。
小ぶりで可愛らしいフォルムに、鮮やかな色づき、酸味と甘みのバランスがとてもよくさっぱりとしていました。
驚いたのは、このリンゴを帝国ホテルさんにも出荷しているんだそうです。福島のフルーツが一流のホテルに認められるのは嬉しいですね。
私も少しでも皆さんにお役に立てるように、引き続き農業に役立つ最新のお天気情報をお届けしていきます。

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