(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。
ようやく少しずつ暑さが和らぎつつありますが、皆さん体調はいかがですか?9月も記録的な高温となりましたが、この暑さは人間だけでなく農作物にも大きく影響し、収穫まっただ中の水稲では高温障害が全国的に多発している状況です。
この暑さは続くのか、気になる農業のための、お天気情報「農てんき予報」を今月も詳しくお伝えしていきます。
今回キーワードとなるのはやはり「気温」、そして「台風」です。
さらに特別編として、早くも今冬の天気の傾向までも先取りしていきます。
記録的な暖冬に、東京で大雪かも?と盛り沢山の内容になってます。
ぜひ今回も最後までお付き合いください。では、農てんきスタートです。
暖かい秋か
1か月予報(平均気温)を見ていきます。すると今月も全国的に高い予想となっています。
もう少し詳しく見ると、暑さのピークは今月始め頃までで、中旬頃になると気温が一旦落ち着く見込みです。
ただ今月下旬になると、再びまた暖かい空気に覆われる可能性が出ています。
さすがに猛暑になるような事はなさそうですが、今月は季節の変わり目という事で、日ごとの気温のアップダウンが大きくなりそうです。
異常な暑さで野菜の生育に影響が出ている現状ですが、今月も涼しくなったり暖かくなったりする予想のため、こまやかな温度管理が必要となりそうです。
北日本、早くも冬のような嵐に
続いて1か月予報(降水量)を見ていきます。
すると、北日本の日本海側を中心に雨の量が多くなる予想となっています。これはどういう事でしょうか。
今月はじめ頃、上空にこの時期としては強い寒気が流れ込む見込みで日本海側を中心に冬のような嵐になる可能性が出ているのです。
今回は雨の所が多くなりそうですが、北海道などでは雪となって猛烈に吹雪くおそれがあります。
今月の北日本は、思いがけない大雨や強風に念のためお気をつけください。
台風や秋雨前線が活発に
また、今月も大雨へ油断できない状況が続きます。
先月には、台風13号から離れた茨城や福島で線状降水帯が発生し、河川の氾濫や土砂災害、また農作物の大きな被害をもたらしました。
スーパーコンピュータによる長期雨予想を見ると、台風や秋雨前線のような雨雲が日本列島にかかっています。
まだこのような計算結果のようになるかは分かりませんが、今月も台風や秋雨前線などによる大雨や暴風などに注意が必要となりそうです。
海面水温高く、スーパー台風発生も
また、海面水温の高さも重要なポイントです。
台風は海面水温が高ければ高い程発生しやすく、勢力も増すものだからです。
気象庁が発表している海面水温の予想を見ると、10月末にかけても日本の近海で25℃以上の暖かさが続く予想です。
元々、海は陸よりも冷めにくい性質がありますが、今年の異常な暑さが海にも影響を及ぼしています。
日本の南で台風が発生するような事になれば、日本の近海まで勢力を落とさず、もしくは発達し続けスーパー台風となって襲ってくるおそれも考えられます。
10月末まではいつ台風ができてもおかしくないと思っておきましょう。
ウェザーマップ独自の16日予報
さらに、ウェザーマップ独自の16日予報(東京)を見ていきます。
気温が2週目以降ガクッと下がり、暑さが少し落ち着きそうです。とは言えまだ平年より少し高いので、今月は暖かい秋と言えます。
また、天気が短い周期でコロコロ変わる所も注目です。
特に8、9、10日は先ほどの雨予想を考慮すると東京だけでなく、東・西日本の広い範囲で大雨となる可能性があります。
他の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をご確認ください。
今シーズンは暖冬か
気象庁は9月19日に、この冬の天候(12〜2月)の見通しを発表しました。
要するに冬はどうなりそうかという予想の事です。
するとこの期間の平均気温は東・西日本は高く、北日本も並みか高いとなっていて、全国的に「暖冬」になるのではないかと予想しています。
強い寒気が、今季は日本に流れ込みにくいのではないかと予想しているのです。
日本海側で雪不足か
そのため、降雪量を見てみると東・西日本は少ない予想になっています。
また北日本も並みか少ないと予想されています。雪が少ないのは一般的には好まれる傾向にあるかもしれませんが農業ではひとくくりにできないですよね。
北海道では土壌が凍結しない事で野良いもが大量に発生してしまうおそれがありますし、雪で甘みが増すといわれる雪下キャベツなどの生産地にとっても大打撃でしょう。
海が暖かすぎて、寒気をブロック
なぜ、このような暖冬が予想されているかと言うと、日本の南の海上が暖かすぎるからです。
今年は、エルニーニョ現象や正のインド洋ダイポールモード現象が発生しています。
日本の南の海上の西側と東側をそれぞれ暖かくさせる現象の事ですが、これらは数年周期で発生します。
発生すること自体は珍しい事ではありません。ただ、同時に発生するのはとても珍しい事です。
日本の南が全体的に暖かい空気に覆われる事で、冬の冷たい空気「寒気」が今年は日本に流れ込みにくい予想となっています。
暖かい空気が寒気をブロックするというイメージです。
太平洋側で大雪かも
一方で、降水量を見てみると東・西日本で並みか多い予想となっています。
注意して頂きたいのは、これは雨だけではなく雪も含まれている事です。
実は先ほどの降雪量の予想については日本海側しか予測しておらず、太平洋側はそもそも予想していないのです。
なので、太平洋側の雪の可能性はこちらの降水量で見ることになります。
東京で大雪の可能性
暖冬予想で、今冬は雪が降らないのかと思っていたらそれは大間違いです。
先ほどもお伝えした通り、日本海側で雪が降らない予想になっているだけで、太平洋側で普段雪が降らない地域で大雪になる可能性が高いと言えるのです。
寒気が流れ込みにくい事で、低気圧が日本に来やすくなります。
冬の時期にくる低気圧は「南岸低気圧」と呼ばれ、東京で大雪を降らせるのは100%この南岸低気圧です。
少し先の話ではありますが、この冬は暖冬で日本海側は小雪傾向ですが、東京など太平洋側の地域の方は、大雪への心構えをしておいた方がよさそうです。
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