(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
10月に入りようやく全国的に肌寒くなってきましたが、みなさん体調はいかがですか?昼はポカポカ、朝晩は寒く、身体に堪えるような寒暖差の大きい日が続いています。
ご無理なさらないでくださいね。
そしてそんな今年の異常気象は、人間だけでなく農作物にも異変をもたらしています。
野菜の生育不良による価格高騰が現在も続き、また秋の味覚である新米にも深刻な状況をもたらしています。
今月の農てんきは、そんなお米農家の直撃取材を通して、これからの季節に役立つ「農てんき」な情報を詳しく分かりやすくお伝えしていきます。
ぜひ最後までお付き合いください。

お米に異変? 早すぎる収穫終了宣言
秋と言えば「新米」の季節。
先月18日、私は以前もお世話になった大玉村「あだたらドリームアグリ」さんを取材しました。
もちろん今年も稲刈りに挑戦してきましたよ。
地元の小学生にも応援してもらい楽しく収穫してきました。
まさに稲の収穫シーズン真っただ中かと思いきや、なんと取材日翌日には全て刈り終えるとの事でした。
えっ早すぎやしないですか?まだ秋も始まったばかりの10月の半ばだというのに一体何が起こったのでしょう。

記録的猛暑で、稲刈りスタートも異例の早さ
早すぎる稲刈り終了の原因は、今年の夏の記録的猛暑です。
気象庁は8月の天候のまとめを発表し、「北日本と 東日本の各地では、1946 年の統計開始以降、8月の平均気温が1位を記録する観測史上最高に暑い夏だった。」としています。
この異常な暑さが、稲の生育も急激に進ませたのです。
あだたらドリームアグリさんに取材すると、今年の収穫は8月31日と通常よりも約1カ月早い作業開始だったそうです。
まだ夏だというのに、稲刈りを始めるというのは、農家さんも経験した事がないと話していました。
では気になる稲の状態はと言うと、ぱっと見は黄金色に輝きしっかり育った印象です。

高温多湿でカメムシ大量発生
しかしながら、稲穂をよーく見てみると所々黒くなっています。
これはカメムシによる被害です。
この暑さの影響で今年は、カメムシが大量発生しました。
なぜ大量に発生したのかというとカメムシは高温多湿を好みます。
さらにカメムシは稲が熟す前のお米の汁をエサにしています。
カメムシにお米の汁を沢山吸われ、お米の品質が低下する深刻な事態となっています。

「お米も熱中症」に 猛暑で収量半減か
さらに、よく米粒を見てみると色の違いも見られました。
通常のお米は、透明ですが、今年収穫された粒は白い物が目立ちます。これは、「白未熟粒」です。
日平均気温が27℃以上の暑い日が続くと発生しやすいとされています。
大玉村から近い二本松の観測所では8月の平年の平均気温は24.4℃。
それに対して今年8月の1カ月間の平均気温は27.9℃と、連日異常な暑さが続きました。
これにより白未熟粒が大量発生してしまったのです。
いわば「お米の熱中症」と言えます。
猛暑は人間だけでなくお米にとっても危険なのです。
昨今は高温耐性品種も沢山作られていますが、今年のような異常な高温ではひとたまりもありません。
今年は、猛暑の影響で全国的に一等米の量が減少する深刻な事態となっています。

今後心配なのは、雨と雪
収穫を早々に終え、この先の天気で気になるのは、「雨と雪」と農家さんは話してくれました。
収穫を終えた田んぼは放っておくのではなく、来年のために土をすぐに作り直す必要があります。
刈り株を土にすき込むなどの作業が必要なため、雨が続くと困ります。
さらに困るのは雪が降るかどうかです。大玉村の水田は、安達太良山からの山水を利用しています。
そのため雪が沢山降ってくれないととても困るのです。
果たして今後の天気はどうなるか見ていきましょう。
暖かい秋 季節の進みゆっくりペース
1カ月予報(平均気温)を見ていくと、全国的に高い予想となっています。
秋らしい乾燥した空気も流れ込んできているので、夏のような蒸し暑さという事はないですが、カラッとした汗ばむ陽気が各地で多くなりそうです。
11月に入っても25℃の夏日となる日もある見込みで、今年は秋の深まりが遅く、季節の進みはゆっくりとなるでしょう。

今月は晴れる日が多いが 北日本は大雨注意
続いて降水量を見ていきます。西・東日本で平年並みか少ない予想となっています。
言い換えると、高気圧に覆われやすく、晴れる日が多くなりそうです。
比較的天気は落ち着き西・東日本においては収穫後の土づくりに関して順調に進みそうです。
一方、北日本はというと平年並みの予想です。ドカッと一気に雨が降る日もあり大雨に念のため注意が必要です。

初雪の便りも 平年より遅いか
ウェザーマップ独自の16日予報でもう少し詳しく見ていきます。
すると、札幌では11月の11日に雪マークがついています。
札幌の初雪の平年は11月1日のため、冬の便りが届くのはいつもより1週間以上遅くなるかもしれません。
11月の中旬頃からだんだん冷たい空気が流れ込んで、この時期らしい気温になっていきそうな予想となっています。

季節外れの25℃予想も
また大阪の予想を見ていくと、今月の3、4、5の三連休は25℃と夏日予想となっています。
この傾向は西・東日本で顕著で11月に入っても季節外れの暖かさとなるため農作物の温度管理に注意が必要です。
他の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をご確認ください。

冬は雪不足か 最新3カ月予報
さらに先月24日に発表された最新の3カ月予報を見ていきます。
11月〜来年1月の降雪量は北日本日本海側で平年並みか少ない予想です。
やはり先月の予想と大きく変わらず日本海側では雪不足になるかもしれません。
大玉村は日本海側の天気に左右されるため、安達太良山に雪が降らず、来年のお米の生育に大きく影響が出るかもしれません。
この先もまだまだ気の抜けない日が続きそうです。
今年は猛暑で被害の多かったお米ですが、実際に新米を食べてみるとやはり味は抜群に美味しかったです。
新米を沢山食べて日本の農業を応援していく事が大切だと思いますし、今後も農家の皆さんに役立つお天気情報をお届けしていけたらと思います。
来月もぜひお楽しみにしてください。

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