(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。
先月私はテレビユー福島の敷地内「農てんきファーム」にて、さつまいもの収穫をしました。
今年は福島でも異例の暖かさが続き、さつまいもも良く育った訳ですが、月末にもなると一気に冷えて雪も降り出しました。
本当に今年は極端な天気だなという印象を受けています。
農家の皆さんにとっても農作物の管理が難しい一年だったのではないでしょうか。
さて、このまま今月は冬が本格化していくのでしょうか。いやいや、どうやらそうでもなさそうなんです。
この冬の農業に役立つ最新の「農てんきな情報」をたっぷり今月もお届けします。
それでは元気よくスタートです。
12月スタートは荒れる所も
まずは早速ですが、雨と雪の予想を見ていきます。
今月5日頃は低気圧が発達しながら太平洋側を進む見込みで、冷たい雨や山沿いでは雪となる所が多くなりそうです。
ピンク色の表示の所は大雪となるおそれのある所で、今後の情報に注意が必要です。
この後の章でお伝えしますが、今月はこの先も太平洋側での雨や雪が多くなりそうです。
暖冬傾向で冷え込み緩やか
先月30日気象庁発表の1カ月予報(平均気温)を見ていきます。
先月末は各地で厳しい冷え込みとなりましたが、12月スタートは暖かい空気が流れ込み再び全国的に気温が上昇する見込みです。
中旬頃になると北日本ではこの時期らしい寒さとなりますが、月末頃には再び高温傾向となっています。
例年12月は各地で日に日に冷え込みが強まる時期ですが、今年は急激に寒くなるのではなく、緩やかに気温が低くなっていきそうです。
いわゆる「暖冬」予想ですね。
雪下野菜ピンチ 日本海側で少雪傾向か
続いて降雪量をみていきます。
北・東日本の日本海側で降雪量が少ない予想です。
日本海側の地域では甘みを出すために雪の中にあえて野菜を貯蔵させる「雪下野菜」が有名ですが、この冬は少雪でピンチかもしれません。
ただ、全く雪が降らないかというと、そうではなく、局地的には一回で一気に大雪となるパターン、いわゆる「ドカ雪」になる可能性もあります。
念のため雪の降り方には注意が必要となりそうです。
さて皆さん、色が塗られてない東北の太平洋側から西日本にかけての降雪量はどうなるのか気になりませんか?
太平洋側で大雪の可能性も
実は気象庁は、東北太平洋側から西日本にかけては「降雪量予想」を発表していません。
雪の原因が地域で異なり予想が難しいためです。
その代わりに「降水量予想」があるのです。
詳しく降水量予想を見ると、広い範囲で今月は降水量が多くなりそうだとしています。
そして、この時季の降水は気温の下がり方によっては、雨ではなく雪として降る可能性があるのです。
普段雪の降らない東北太平洋側から西日本の広い範囲で、今月は雪が降るかもしれないと意識しておく必要がありそうです。
リアルタイムの雪の情報をキャッチ
近年、記録的な大雪により、車が立ち往生するなど、社会活動に深刻な影響が出ています。
そこで気象庁は昨年11月に「今後の雪(降雪短時間予報)」の提供を開始しました。
今までは、今どこで雪が降っているかを確認する「現在の雪」のみの提供でしたが、そこに今後6時間先の予報を盛り込んだ「今後の雪」という新たな情報に生まれ変わりました。
出かける前や、農作業の前に「今後の雪」を確認し、計画や日程の変更などの検討もできるでしょう。
ぜひ気象庁HPを確認し、ご活用して頂ければと思います。
福島の冬の風物詩、あんぽ柿作り始まる
先月8日に福島県伊達郡桑折町の農家、「感謝農園平井」さんを取材しました。
ここでは、今季のあんぽ柿作りが始まっていました。
あんぽ柿とは、まさにここ伊達郡が発症の地とされる伝統的な農産物で、いわゆる干し柿の一種です。
暖簾のように干されるその光景は「オレンジ色のカーテン」と呼ばれ、冬の風物詩として県民に愛されています。
あんぽ柿とは
あんぽ柿と干し柿の違いは、作り方にあります。
どちらも渋柿を原料としますが、干し柿はそのまま干すのに対して、あんぽ柿は、硫黄で燻してから干します。
この作業には、柿の表面を殺菌・漂白させる効果があります。
そしてゆっくり乾燥させる事で、柿本来の甘さを出していきます。
トロッとゼリーのような触感
出来上がりにも違いがあります。
硫黄の効果により、通常の干し柿と比べて綺麗なオレンジ色をしています。
また、完全に乾燥させない事で、トロッとした柔らかさが特徴的です。
それは、まさに柿のゼリーです。
豊作で最高に甘い
今年のあんぽ柿作りは、例年より10日以上早まりました。
猛暑の影響で、柿の生育が進んだからです。
雨が少なかった事で、小玉傾向にありますが、暑さの影響でいつもより糖度が2〜3度高くなる見込みです。
平井さんは、例年にない甘さとなりそうだと仰っていました。
暖かい秋でカビ発生
今年は柿が豊作で、甘いという嬉しいニュースばかりと思いきや、そう喜んでばかりはいられませんでした。
それは暖かすぎて、湿度が高く、「カビ」が発生しやすくなっているという事です。
秋に異例の「カビ」対策
秋が深まる11月の桑折町には乾燥した冷たい風「木枯らし」が吹きます。
本来ならばこの自然の「木枯らし」を利用し、美味しいあんぽ柿ができる訳ですが、今年は様子が違います。
大きな乾燥機や扇風機を使い「カビ」対策をしていました。
今年の猛暑や異常な暖かさは、冬の農産物にも悪い影響を与えているようです。
今年もありがとうございました
今年の農てんきファームではさつまいもの紅はるかを栽培しました。
中身はしっかり甘くとても美味しかったです。
暖かい地域で作られるイメージのあるさつまいもですが、福島県でも近年栽培する農家さんが増えてきています。
地球温暖化の影響で全国的に栽培ができる時代がすぐそこまで来ているようですね。
私も実際にさつまいもを収穫してみて、嬉しさの反面、地球温暖化についてしっかり向き合っていかなければという現実的な問題も強く感じる一年となりました。
来年も取材を通して皆さんに寄り添った農業に役立つ「農てんき」なコラムをお届けできたらと思います。
今年も一年ありがとうございました。来年も是非よろしくお願い致します。
それではよいお年を。
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