(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
あけましておめでとうございます。
農てんきな気象予報士の寺本です。新年はじめましてという方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介致します。
私は野菜の商社でサラリーマンとして働いたのち、現在は福島県でお天気キャスターをしています。
天気予報の技術は日々進歩していますが、なかなか農業に役立つ内容となると情報が少なく、また専門的なものがほとんどです。
これまで私が大学や仕事で培った知識や経験を活かした農業に役立つ天気予報ができないかと生まれたのが、この「農てんき」というコラムです。
このコラムでは、難しいお天気のことをわかりやすく楽しく読んでもらえるように心がけています。
毎年のように襲いかかる異常気象から、皆さんの野菜を守るヒントにして頂けたら嬉しく思います。
ではそんな今年一回目の「農てんき」スタートです。
1月は季節外れの暖かさか
気象庁が先月発表した、長期予報(平均気温)を見ていきます。真っ赤です。
これは日本に暖かい空気が流れ込みやすい状況が続くため、1月も全国的に気温が高い予想となっています。
本来一年の中で最も寒くなる季節ですが、この冬は「暖冬」と言えそうです。
雪国は深刻な雪不足か
続いて降雪量を見ると、日本海側の地域では雪が少ない予想です。
雪下キャベツや雪下人参など雪を使った特産品で影響が出たり、北海道では前年の収穫時にこぼれたジャガイモは雪が少ないために越冬し雑草化する野良イモが、今年は増えるかもしれません。
暖かすぎて、寒気をブロック
なぜ、このような暖冬が予想されているかと言うと、日本の南の海上が暖かすぎるからです。
今年は、「エルニーニョ現象」や「正のインド洋ダイポールモード現象」といったあまり聞いたことがないような現象が発生しています。
簡単に言うと、どちらも日本から離れた南の海をそれぞれ暖かくさせる現象のことなのですが、これらは数年周期で発生するためそれほど珍しい現象ではありません。
ただ同時期に発生するとなると話は別で、とっても珍しいことです。
そのため今年の冬は、冷たい空気が日本に流れ込みにくい状況となり暖かい冬と予想されているのです。
今冬は南岸低気圧に注意
さて暖冬で、降雪量も少ない予想だから大雪の心配はないなと言うとそうではありません。
むしろ今回は、普段雪の降らない太平洋側の地域は雪に注意が必要です。
それは、寒気が流れ込みにくい事で、低気圧も日本に来やすくなるからです。
冬の時期にくる低気圧は「南岸低気圧」と呼ばれ、東京など普段雪の降らない地域で積雪させるおそれがあります。
10年前の2014年2月8日、この南岸低気圧の影響で東京の最深積雪は27センチを記録し大雪となりました。
当時私は野菜の商社で働いていましたが、交通網が麻痺し、野菜の仕入れが出来ず納品が24時間以上遅れたりと大混乱した事を思い出します。
降水量は、雪も含まれる
ではここで1か月予報の降水量を見ると、例年より多くの太平洋側の地域で雨量が多い予想となっています。
注意しないといけないのは、気象庁が発表するこの降水量予想というのは、雨だけでなく「雪」の可能性も含んでいるのです。
そのため今冬は普段雪の降らない太平洋側の多くの地域で突然の雪が降るかもしれないのです。
ウェザーマップ独自16日予報
ウェザーマップHPでは、各地の独自の予報を確認することができます。
名古屋の予報を見てみると、やはり気温は平年より高めの日が多いですが、12日には雪マークがついています。
南岸低気圧の影響があるかもしれませんね。
他の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をぜひご確認ください。
また、「ヤフー天気・災害」というアプリでもお住まいの地域の16日間予報が随時見られます。ぜひご活用してみてください。
春先にかけても暖かいか
今回は、新年1発目ということで、さらに今年はどんな天気になりそうかもう少し突っ込んで見てみましょう。
実は気象庁の長期予報では、この暖かい傾向が少なくとも3月頃まで続くと見込んでいるのです。
春にかけて暖かい日が続くなんて、一般的には生活がしやすく嬉しいかもしれませんが農業においてはそんな事はありません。
なぜかというと、暖かな春は遅霜の危険が高くなるかもしれないからです。
春先は遅霜のリスク高まるか
今シーズンは暖冬になるのではとお伝えしてきました。
暖冬傾向が春まで続くとなると、様々な野菜の生育の前進が考えられます。
そうなると心配なのは「遅霜」です。春先はまだまだ急激に冷え込み、氷点下の朝となる日があります。
野菜や果実の開花が早まってしまうと、それだけ遅霜にあたってしまうリスクが高まります。
急激な冷え込みは、野菜の細胞を破壊し黒く変色したり、枯れさせます。
例えばアスパラなどは寒さで茎が曲がったりする「軟化現象」が発生したり、果実では着果不良など遅霜の影響はあなどれません。
春以降はどんな天気になるか
一方で、この冬の暖かさの原因とされるエルニーニョ現象の終わりも少しずつ見えてきました。
気象庁発表のエルニーニョ監視速報によると、春にはエルニーニョが終わる可能性が50%の予想となっているのです。
では、春にエルニーニョが終わった年というのは、その先の天気がどうだったのか過去の例を振り返ってみましょう。
夏は記録的な暑さで台風も
近年、エルニーニョが春頃に終わったのは2010年、2016年、2019年。
これらの年に共通して言えるのは、全国の年間平均気温がかなり高かった事です。
また、あわせて降水量も多かったと言えます。
特に注目したいのは、台風で2016年8月、北日本には立て続けに4個の台風が上陸しました。
特に北海道や岩手で大雨や暴風となり大きな被害を出しました。
当時、筆者は前職の青果の商社で働いており、ジャガイモの出荷停止が長期間続いた事を思い出します。
今年もよろしくお願いします
そして、2019年は台風第15号、台風第19号の接近・通過に伴い、千葉(千葉県)で57.5m/sの最大瞬間風速を観測したほか、箱根(神奈川県)で日降水量が歴代の全国1位となる922.5mmを観測するなど、北・東日本で記録的な暴風、大雨となりました。
この先も予想の難しい天気が続きます。
このコラムでは今後も皆さんのお役に立てられるように最新の農てんきな情報をお届けします。
ぜひ次回もよろしくお願い致します。
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