(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
今年は暖冬で雪が少ないかと思いきや、2月の終わりになっても急に天気が荒れて大雪となったり、猛吹雪となったりと油断のできない状況が続いています。
3月に入り、いよいよポカポカで穏やかな日々がやってくると期待している方も多いかと思いますが、春はすぐにやってくるものではありません。
一体どういう事でしょうか。この「農てんき予報」コラムでは、農業に役立つお天気情報を分かりやすく楽しくお伝えしています。
今月は、この春の天気を詳しく、さらには早くも夏の天気についてもドーンとお伝えしていきます。
盛り沢山の内容となっていますので今月も最後までぜひお付き合い下さい。
3月のライオン
皆さんは3月のライオンという言葉をご存知でしょうか。
有名な将棋の漫画の事ではありません。
「3月はライオンのようにやってきて、子羊のように去っていく。」というイギリスの天気のことわざの事です。
ライオンを温帯低気圧の荒々しい天気に、子羊を移動性高気圧による晴れて穏やかな天気に例えているのですが、今年の春はどうやら日本もこのことわざが当てはまるかもしれません。
早速荒れた天気がやってきそうなんです。
春の嵐に注意
おさらいになりますが、実は、春は低気圧が発達しやすい季節です。
なぜなら低気圧の力の源は「異なる空気の気温差」だからです。
なんの事かと思いますが、春先のこの時季は「冬の冷たい空気」と、春先の「暖かい空気」が交互にやってくる事が多くなってきます。
またこの二つの空気は、ぶつかり合う性質があります。
そのため冷たい空気と暖かい空気がぶつかった所で、上昇気流がおきて低気圧が発達しやすくなるのです。
前半は荒れた天気に
先ほどお伝えした通り、3月前半はライオンのように荒々しい天気でスタートしそうです。
日本付近には、発達した低気圧が近づきやすい状況が続き、全国的にまとまった雨となる見込みです。
また風も強く吹いて沿岸部などでは横殴りの雨となり、波も高くなるおそれがあります。
強風・高波にも注意しましょう。
今月はゆっくり暖かくなる
先月29日気象庁発表の1カ月予報(平均気温)を見ていきましょう。
すると、やはり始めの週はこの時季らしい寒さが予想されます。
その後、中旬以降は全国的に暖かい空気に覆われやすく、気温が上がっていきそうです。
ただ、この時季というのは暖かい日がずっと続くという事ではなく、寒の戻りもありつつアップダウンを繰り返しながらじょじょに暖かくなっていくものです。
春先の一時的で急な冷え込みには念のため気をつけましょう。
大体晴れも、急な雨や雪に注意
また、1カ月予報の降水量と日照時間も見ていきます。
どちらも真っ白で平年並みの予想となっていますね。
これだけだと分かりづらいので、もう少し深く見ていきましょう。
先ほどもお伝えした通り、春というのは荒れやすい季節でもあります。
2日晴れた後、3日目は荒天という日を繰り返しながら、だんだん春らしい穏やかな天気になっていきます。
今の所、大雨・大雪となる事はなさそうですが、局地的には雨や雪、雷などがあるかもしれません。
桃はさくらの一週間後に開花
ウェザーマップが発表している、桜の開花予想を見ていきます。
農業と直接関係ないような気がしますが、そんな事はありません。
実は桜の開花予想から他の果樹もある程度予測する事ができます。
桜も桃も梨も同じバラ科の落葉樹で、春に花を咲かせます。
福島では、桃は桜の開花からおよそ1週間後、梨は2週間後に開花する事が多いです。
今年の桜の開花は暖冬の影響もあり全国的に平年より5〜10日程早い予想となっています。
そのため落葉果樹の開花も同じく早まってくる見込みです。
早く開花すると、それだけ遅霜の被害に遭うリスクが高くなってくるため、温度管理など注意が必要となりそうです
気象庁 早くも夏の予想発表
さて、皆さんは暖候期予報という物をご存知でしょうか。
一体なにそれ?という感じだと思いますが、簡単にいうと「夏の予想」の事です。
実は気象庁は冬の終わりの毎年2月25日頃に、夏の平均気温や梅雨時期の降水量など大まかな傾向を予報しています。
あまり存在が知られていませんが、おおざっぱな予報とは言え農業においては有用な情報であると思います。
今年の夏も猛暑か
早速、その暖候期予報(平均気温)を見ていきます。
すると6〜8月の期間は全国的に平年より気温が高い予想となっています。
もはや毎年恒例ではありますが、今年も猛烈に暑い夏がやってきそうです。
昨年も記録的な暑さが原因で、トマト、ナス、キュウリといった夏野菜などの形状が変化したり、実が焼けるなどの被害、稲においては高温障害が多発しました。
今年も農作物の温度管理に注意が必要となりそうです。
西日本は線状降水帯で大雨か
続いて、梅雨の時期の降水量を見ていきます。
近畿、中国、四国、九州、沖縄、奄美など西日本を中心に降水量が平年並みか多い予想となっています。
梅雨といえば一昔前はシトシト雨が降るイメージでしたが、近年は様子が違います。
地球温暖化により暖かく湿った空気が流れ込みやすい状況となり梅雨前線が活発化し、線状降水帯が多発する事態となっています。
今年も西日本を中心に線状降水帯などによる大雨が発生するおそれがありそうです。
大雨が予想されている理由は
これまでの記録的な暖かさの原因となっていた「エルニーニョ現象」がようやく終わる予想となっているものの、その名残がしつこそうです。
エルニーニョ現象が終わっても海や大気の温度は急には下がらないので、日本の南で積乱雲が発生しやすいのです。
すると積乱雲から下降してきた空気が太平洋高気圧の勢力をいつもの年より西側に強めていきます。
太平洋高気圧の縁を回るように、大雨の原料となる暖かく湿った空気が、「西日本太平洋側、沖縄・奄美」を中心に流れ込み梅雨前線を刺激して、大雨となるおそれがあるというシナリオです。
記録的な暖かさや雪不足を引き起こしたエルニーニョ現象が終わる事で、今年は一段と天気の予想が難しくなっています。
今後も最新の農てんき情報をわかりやすく楽しくお伝えしていきますので、来月もぜひお楽しみにしてください。
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