(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは、農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
今年は記録的暖冬かと思えば、3月は寒の戻りや、天気も荒れたりと落ち着きませんでした。
皆さんもお身体大丈夫でしょうか?私もこの激しい気温変化で3月は風邪をこじらせてしまいました。この影響は人間だけでなく、桜の開花が各地で少し遅れていたりと植物にとってもどうやらハードモードなようです。
今月はどんな天気になっていくのか、農業に役立つお天気情報を最新の予想をもとに今回も分かりやすく、楽しくお伝えしていきます。
ぜひ最後までお付き合い下さい。では、農てんき予報スタートです。
この先いよいよ春本番の暖かさ
今年の冬は「暖冬」と言われた通り2月の中旬頃までは各地でかなり気温が高かかったですが、その後しばらくは寒さが続きました。
そのため、桜や落葉果樹の開花が遅れています。
この先の気温が気になる所ですが、1カ月予報(平均気温)を見ると全国的に平年より高くなると予想されているため、いよいよ4月は春本来の暖かさか初夏のような陽気になってきそうです。
こうなると、桜や落葉果樹など一気に開花が進む見込みです。
遅霜にも注意を
日中は暖かくなる一方でこの時期は、朝の急な冷え込みに注意が必要です。
たびたび、このコラムでお伝えしてきましたが、一年で一番「霜」の被害に遭いやすいのが4月のこの時期です。
春先に植物が芽を出した状遅で急な冷え込みにあうと、寒さに耐えきれず枯れてしまったり変形してしまったりする被害の事です。
去年は3月に入り全国的に一気に高温となった事で果樹の開花や野菜などが芽を出すタイミングが早まった事で遅霜の被害が拡大しました。
今年は全国的に果樹などの開花が去年よりは遅くなってはいますが、遅霜のリスクは今年もまあまあ高いと思って意識しておくとよさそうです。
地面は予想気温よりさらに低い
では、どんな時に遅霜の被害が起きやすいかもおさらいしておきましょう。
霜の起きやすい気象条件は、移動性高気圧に覆われ、風が弱く良く晴れた夜です。
そういった時は、夜中に地面の熱がどんどん上空に逃げて冷えていく「放射冷却現象」が発生します。
おおむね最低気温が2〜3℃と予想される時は霜に注意が必要です。
と言うのも、気温の予想は地上から1.5メートル上の数字なのです。
そのため地面付近はさらに気温が低く0℃以下となる訳です。お天気キャスターが、「放射冷却」、「強い冷え込み」、「霜注意報発表」などと言っていたら、翌朝は遅霜が起きるかもしれません。
降水量は多め、春の嵐に注意
続いて気象庁の1か月予報(降水量)をみていきます。
すると、西日本で平年より多い、特に九州南部では多い予想となっています。
寒気の影響が次第に弱まる事で、今月は急速に発達する低気圧がどんどん日本付近を通過していき「春の嵐」が多発するかもしれません。
一日で100ミリを超すような大雨が降りやすいのも冬が終わり春本番となる今の時期くらいからです。土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水などに気を付けましょう。
「春に3日の晴れなし」ということわざがありますが、今月は天気が短い周期でコロコロ変わりそうです。
春雷も多くなりそう
「春雷」という言葉を皆さんはご存じでしょうか?米津玄師さんが歌っていた事で、言葉を聞いた事のある方も多いかもしれませんね。
この春雷と言うのは、文字通り春の雷で、夏の雷雨とはでき方が違います。
夏の雷雨は、日中地面が暖められる事でモクモクとした入道雲(積乱雲)ができて起きるものです。
一方、春雷は低気圧から伸びる寒冷前線が通過する際に発生します。
そのためゲリラ的に起きる夏の雷雨と違い、春雷は寒冷前線が通過する比較的広い範囲で発生しやすい特徴があります。
ひょう被害のおそれも
さらに夏の雷雨と違うのは、ひょうが発生しやすい事です。
雲の中には水と氷が存在しています。
夏は氷の粒が落下してくる最中に溶けてしまうため、全て雨になって降ります。
しかし、まだ肌寒さが残る4月のこの時期は、雲の中の氷が溶けずに地面まで落下するのです。
これが「ひょう」です。
ひょうが降ると、農作物に傷がついたり、枝が折れたりなど、重大な被害が発生します。
この春雷によるひょうは4月、5月が起きやすいとされているため、この時期の低気圧と寒冷前線の動きには注目してみてみましょう。
「春の嵐」は台風並みの大雨暴風に
季節の変わり目である4月は、冬の名残である北から流れてくる冷たい空気と春先の南から流れ込む暖かい空気がぶつかりあって上昇気流が発生し、急速に低気圧が発達しやすくなります。
これを「春の嵐」と言います。
今月は、いよいよこの春の嵐に注意が必要です。
発達具合によっては、台風並みの大雨や暴風となる事があります。
また台風の場合は、台風の中心が近づくと急激に風が強まりますが、「春の嵐」をもたらす発達した低気圧は中心から離れたところでも風が強く吹き、被害の範囲が広がりやすいという特徴があります。
アプリで雨雲レーダーを確認
春のこの時期は低気圧が日本列島に来やすくなるため、急な雨に遭遇する率が高くなります。
このコラムでも、何回かお伝えしたことがありますが、そんな時に私がおすすめしたいのは、民間の気象会社によるお天気アプリです。
弊社ウェザーマップでは、Yahoo!と連携した「Yahoo!天気」アプリを開発し、誰でも無料でお使い頂く事ができます。
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そして最後に私事ではありますが、この度3月末で福島のテレビ局を離れる事になりました。
福島においては、沢山の農家さんにお世話になり、その都度農業と天気の関係を深掘りしてきました。本当にありがとうございました。
ただ、このコラムが終わる訳ではありませんので心配なさらないでください。
今後は新天地で引き続き現地の農家さんをどんどん取材し、農てんき予報をさらにパワーアップさせていきたいと思っています。
今後の農てんき予報コラムも是非楽しみにしていてください。
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