こんにちは。50代会社員向け「セカンドキャリア塾」を運営する大桃です。
なぜ会社員のセカンドキャリア支援を手掛ける弊社がアグリウェブに?と疑問を持たれる方も多いことでしょう。
当塾は、50代会社員がセカンドキャリアを「考える」だけでなく、地域の企業で「大人のインターンシップをする」実践型の教育プログラムになっています。この「大人のインターンシップ」受入先として、農家の皆さまとご一緒することで、新たなご縁が生まれています。
農家と50代会社員のどんな協働があるのか、その最初の接点づくりと可能性について、全3回に渡り、具体的な事例もご紹介しながら、お伝えしていきたいと思います。
大手企業社員の約3割が50代。「就社」世代で立ち往生。
私が新卒で入社したメーカーは、社員の約1/3が50代でした。驚かれることも多いのですが、都市部の大手企業は軒並み同じような状況です。無理もありません。日本で働く人の4割強が、既に50代以上なのです。(厚生労働省令和4年労働統計要覧)
この世代の特徴が「就社」意識。今のように転職は一般的ではなく、「裏切者」と後ろ指を指された時代。転職を言い出したら水をぶっかけられた、なんて話もリアルにあったようです。そんな時代ですから、新卒入社以来「会社にキャリアを預け」て30年、同じ組織で仕事をし、会社に言われるまま異動・転勤を繰り返してきました。
ところが、50代を迎え、定年というゴールが見えてきた矢先に、突如「人生100年時代」「キャリアは自分で考えるべし」と言われる時代に様変わりしてしまったのです。
自分が苦手なことは、得意な人がいる。大人のインターンシップとは。
いわば「キャリアの迷子」とも言える50代ですが、積み重ねられたスキルを持っています。日本経済が右肩上がりの時代だけでなく、失われた30年、ITの進化とグローバリゼーションを経験する中で、「いかに売るか」「どう分かりやすく人に伝えるか」「コストを下げるか」といった目の前の課題に粛々と向き合ってきたのです。
例えば、文章を分かりやすくまとめる、進捗管理をする、といった50代会社員にとって「毎日やっていて当たり前なこと」は、それが苦手な人の助けになり得ます。大人のインターンシップを受け入れいただいた農業経営者の皆さんに喜ばれたことは、実は参加者である50代会社員にとっては当たり前のことで、本人にとっては相手に喜ばれたことが大きな驚きでした。
(インターン前には研修で経験を振り返る)
経営をする上で、「まずは何でも自分でやってみる」姿勢は、創意工夫を生むために必要なことでもあります。しかし、人口減少となった今、やるべきことをやるためには、「苦手な一部分を誰かに任せる」選択肢も必要です。フルタイム・雇用だけ、という選択肢から、一部でも誰かの力を借りる・オンラインでもやる、と幅を広げることで、可能性を広げる農業経営者が出始めています。
例えば、富山県のハーブ農園は、IT企業の50代会社員と共に、事業計画の策定に取組みました(詳細はこちら)。兵庫県の有機栽培農家では、首都圏への販売を一緒に考えるパートナーとして活動を継続しています。また、農家におけるインターンシップの事例をセカンドキャリア塾のホームページに掲載しておりますので、ご参考ください。
(就農した卒業生を皆で手伝い)
「会社の経験が社会で役立つ」喜びが、関係を発展させる。
大人のインターンシップと言っても、まずはオンラインでスタートです。コロナ禍で創業した苦労もありましたが、コロナ禍で良かったことはオンラインが日本全国で一般化したこと。まずはコストのかからないリモートから始めて、いい関係が築けていくと、そこは人間同士、会いたくなります。
(オンラインのインターンシップだが、現地訪問多数)
これまで100件以上のインターンシップを手掛けていますが、ほぼコロナ禍の期間にも関わらず、3/4がリアルで現地を訪問しています。いわゆる「関係人口」になっているのです。
まずは週1回、オンラインで会議をしながら、文章作成や事業計画の策定を一緒に進めていく。住むところも、仕事も全く違う者同士の協働だからこそ、お互いに学ぶことがある。「学び」が入り口である点も、関係を作る上で好ましい作用を生んでいるかもしれません。
この事業をやっていて思うことは「50代だから成長しない、ということではない」ということ。50代会社員の皆さんが、大人のインターンシップをきっかけに、会社員を辞めて長野で就農する、東京と地方の二地域居住を始める、などセカンドキャリアにぐっと踏み出している姿を目にする度に、人の持つ可能性の大きさを感じさせられます。
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当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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