(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
そんな私ですが、先月、広島県の「みんなで減災」推進大使に任命されました。気を引き締めてがんばらねばです。そしていよいよ6月は本格的な雨の季節。減災防災を強く意識するシーズンです。そんななか今年は台風1号が先月末に発生しましたが、これは統計史上7番目に遅い記録となっています。
なぜ台風の発生が今年は少ないのか、大雨の心配はないのかな?と思いそうですが、やはりそんな事はなさそうです。梅雨時期の気になる天気と農業に役立つ情報を、今回もわかりやすく楽しくお伝えしていきます。では、今月も「農てんき」スタートです。
梅雨シーズン到来
早速ですが、1か月予報降水量を見ていきましょう。北海道では平年並みか少なく、東日本は平年並みの所が多くなっています。一方で西日本や沖縄・奄美などで平年並みか多い予想です。これは前線が西日本に停滞・活発化する事で大雨となる典型的な梅雨の豪雨となる可能性が高いと言えます。
6月後半から西日本で豪雨警戒か
あわせてこちらも見ておきましょう。気象庁が5月21日に発表した3か月予報です。6〜8月の降水量の合計を見ると、雨量が多くなる地域が広がっているのがわかります。ただ月別の予想だと8月は例年同様全国的に晴れ間が多くなる見込みではあります。そのため今年危険な大雨となるのは「6月の終わり頃から7月前半の梅雨末期」の可能性が高いと言えそうです。
大雨予想の理由
では、なぜそのような大雨予想となっているのでしょうか。色々要因はありますが、簡単に言うと、太平洋高気圧がいつもの年より南側で強く張り出す予想だからです。冒頭の台風が今年は少ない話に戻りますが、この高気圧が強い事で日本の南で雲が発達しにくく台風が例年より少ない状況となっています。
しかしながら、それは同時に大雨の原因となる「暖かく湿った空気」がいつも以上に、日本に流れ込みやすくなるともいえる訳です。気象庁は暖かく湿った空気がどんどん流れ込んで梅雨前線を刺激して、危険な大雨になるのではないかという予想をしています。そのため、西日本や奄美・沖縄は線状降水帯などの大雨に警戒が必要となりそうなのです。
6月前半は暑さ落ち着くも
さて気温はどうなるのでしょうか。1か月予報の平均気温を見ていきます。今月前半は冷たい空気が流れ込みやすく、平年に比べて全国的に暑さは比較的落ち着く見込みです。ただ、その後中旬から下旬にむかって暖かい空気が流れ込み一気に暑さが増す予想となっています。
6月後半から全国的に猛烈な蒸し暑さか
続いて3か月予報の平均気温をみていきます。すると、全国的に平年よりもかなり高い予想となっています。6月後半から急激に暑くなりそうです。大雨の予想と同じ理由で、暖かく湿った空気が日本に流れ込みやすいとなれば、晴れる所はぐんぐん気温が上昇。猛烈な蒸し暑さが待っていそうです。今年も災害級の危険な暑さとなる所が出てくるおそれがあります。農業用ハウス内などではさらに高温となるため、熱中症に厳重な警戒が必要となりそうです。
農てんき取材in広島
3年いた福島を離れ4月から広島に住みだした私ですが、こちらでも農てんきな情報を求め農園取材を続けています。先月11日には広島県三次市の平田観光農園を取材してきました。こちらの農園では、いちご、なし、もも、なし、ぶどう、りんごなど沢山の果樹を栽培しており、一年中フルーツ狩りが楽しめます。
農園テーマパーク
またそれだけではなく、農園にはおしゃれな古民家カフェが併設されており、収穫されたフルーツを使ったパフェやソフトクリームなどの絶品スイーツを販売しています。イチゴを使ったカレーまでありました。うすくスライスされたイチゴの酸味と甘みが、本格的なスパイスが効いたカレーの辛さに絶妙にマッチしてとても美味しかったです。今までに出会った事のない味にとても感動しました。また敷地内でバーベキューもできたりと、家族で一日楽しめる、まさに農園のテーマパークでした。
広島で珍しいサクランボ栽培
さて、取材に戻ると、私はその平田観光農園でサクランボ畑にお邪魔しました。というのも、サクランボは山形など寒い地域を好む果樹ですから、西日本の広島で作られている事がとても気になったためです。一体どんなところなのでしょうか?
広島の山の寒暖差を利用
サクランボは、年平均7〜14℃、4月〜10月の降水量が1300ミリ以下などの涼しく雨の少ない地域の栽培が好まれます。一方、平田観光農園のある三次は一年の平均気温が13.5℃、4〜10月の降水量は1070ミリと条件をクリアしています。また標高約500メートルあるため、朝晩と日中の寒暖差もあり、おいしいサクランボが育つそうです。
今月の雨や暑さが心配
さて、今年のサクランボの出来について担当されている八木原さんに話を聞いてみました。「遅霜の影響もなく順調に育っています。ただ気になるのは、この先の暑さと大雨ですね。暑すぎると高温障害で実が変色してしまいますし、雨が多いと実が割れてしまいますので。」と今後の天気を心配されていました。今月は広島など西日本で後半ほど高温、また雨量も並か多い予想となっているため、サクランボの管理に注意が必要となりそうです。
平田観光農園の新たな挑戦
さらに、別の畑には珍しい光景が広がっていました。支柱にくくりつけられた、ひょろひょろと伸びる木が無数に並んでいます。トマト畑かな、なんて思っていたらこちらはリンゴ畑でした。今年から新たに始めた栽培方法で、西日本ではかなり珍しいのではと自信をもって話してくださいました。
お子さんでもリンゴ狩りが簡単に
リンゴの高密植栽培と言われ、広島ではかなり珍しい最先端の農法です。特徴は①木が大きくならない、②剪定・収穫などの作業が楽、③沢山植えられる事から収穫量が増えるなどがあげられます。普通のリンゴの木だと大きくなりすぎて、育てるのも収穫するのも大変ですが、こちらの栽培方法なら作業の省力化が可能です。さらには小さいお子さんもリンゴ狩りを楽しむ事ができるため、観光農園としてさらなるセールスポイントになりそうです。
また、こちらのリンゴが育った頃に再び紹介できたらと思います。
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